クラリスの小児の使用|飲ませ方や投与量、副作用、眠気の有無、風邪や咳への効果も

 
クラリスの特徴、小児に対する効果、投与量、飲ませ方、眠気などの副作用などについて添付文書等から確認していきます。

クラリスの特徴と小児の使用

クラリスはクラリスロマイシンを成分に含み、主に細菌による感染症に対して効果を発揮する抗生物質の薬です((クラリス錠50小児用/ クラリスドライシロップ10%小児用 添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/400059_6149003F1031_1_30.pdf))。
様々な効能を持っている薬であり、風邪が悪化した時の咽頭炎気管支炎肺炎の他、中耳炎副鼻腔炎などをはじめとし、非常に多くの疾患に対して使用される抗生物質です。
クラリスには通常15歳以上の成人が使用するクラリス錠200の他、小児用の錠剤であるクラリス錠50小児用、粉薬であるクラリスドライシロップ10%小児用の種類があります。

クラリスの小児への効果

クラリスは抗生物質であり、細菌によってもたらされる疾患に対して効果があります。
風邪のような症状、咳なども伴う咽頭炎、肺炎、マイコプラズマ感染の他、耳鼻科領域の中耳炎や副鼻腔炎など様々な感染症に対して使用されます。また、まれにインフルエンザに感染したときにも使用されることがあります。
クラリスの効能効果の詳細は以下の通りです。

1.一般感染症
〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、百日咳菌、カンピロバクター属、クラミジア属、マイコプラズマ属
〈適応症〉
●表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
●外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
●咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
●感染性腸炎
●中耳炎、副鼻腔炎
●猩紅熱
●百日咳
2.後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症
〈適応菌種〉
本剤に感性のマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)
〈適応症〉
後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症

クラリス錠50小児用/ クラリスドライシロップ10%小児用 添付文書

クラリスの小児の咳や風邪への効果

クラリスが咳などの症状や風邪に対して処方される理由の例として、風邪が悪化した時の細菌感染を疑っている時や風邪による二次感染を防ぐ目的が挙げられます。
このような目的に対しては一定の効果が期待できます。一般的な風邪を引き起こすウイルスに対して、クラリスのような抗生物質は効果がありません。ウイルスと細菌は別であるため、細菌に対して効果があるクラリスもウイルスに対しては全く効果がありません。また、クラリスは咳止めの薬ではないため、直接咳を鎮める効果もありません。
しかし、風邪によって炎症を起こし、結果として細菌感染につながるケースや、ウイルス性の風邪以外に、細菌感染による咽頭炎や猩紅熱が疑われる場合には抗生物質が効果的であるため、医師が処方するケースがあります。また、咳に対しても原因が細菌によって引き起こされるものであれば使用されます。
一般的な咳や風邪には効果がないため、風邪を引いた時にクラリスが手元に残っていた、という場合でも自己判断で使用することはやめましょう。

クラリスはマイコプラズマに対しては優先的に使用される

クラリスはマイコプラズマ肺炎にかかった時には優先的に使用される薬のひとつです。
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011ではマイコプラズマ肺炎に対する治療ではクラリスなどのマクロライド系の抗生物質を第一選択として推奨しています((小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2011))。その理由として、マクロライド感性の肺炎マイコプラズマに対するマクロライド系薬の最小発育阻止濃度(MIC)は極めて低値であり、治療終了時には気道から除菌されるという点が挙げられています。最小発育阻止濃度(MIC)が極めて低値ということは、抗生物質が少ない量でも非常に高い効果を得られるということを意味し、クラリスなどのマクロライド系が、マイコプラズマに対して非常に効果的ということになります。
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は細菌のひとつであり、特徴として、他の細菌が通常持っている細胞壁という組織を持ちません。そのため、細菌の細胞壁をターゲットとするペニシリン系(サワシリン、ワイドシリン、パセトシンなど)、セフェム系(フロモックス、メイアクトなど)などの抗生物質では効果がないという特徴があります。
感染は飛沫感染と接触感染により、濃厚接触が必要とされているため、感染拡大の速度は遅いとされています。マイコプラズマの潜伏期は2〜3週間では感染後は発熱、頭痛、咳などの風邪のような症状を特徴とします。特に咳に関しては3〜4週間と長く続くことが知られており、最初は乾いた咳で徐々に痰が絡むような湿性の咳になります((国立感染症研究所 http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html))。
クラリスをマイコプラズマに対して使用する場合は、服薬期間は10日間ととされており、効果がある場合は2〜3日で解熱すること多いとされています。
なお、クラリスは従来はマイコプラズマに対して非常に効果的と考えられていましたが、近年はマイコプラズマのクラリスドライシロップを含めたマクロライド系抗生物質に対する耐性が問題となっています。
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011ではマクロライド耐性マイコプラズであることも考慮し、マクロライド治療で48時間以上の発熱が持続した場合はトスフロキサシン(オゼックス)もしくはミノサイクリン(ミノマイシン)を使用することが推奨されています((小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2011))。
ただし、肺炎マイコプラズマ感染症は自然治癒傾向があるため、マクロライド耐性株による肺炎マイコプラズマ肺炎の一部の症例は、効果が期待できないマクロライド系薬を投与して
も投与後 2〜3 日以内に解熱することや、マクロライド系薬の前投薬与がないときのマイコプラスマの耐性率は 50%以下(実際にはマクロライド耐性でない場合が50%以上)であるということも確認されているため、第一選択はあくまでマクロライド系となります。
上記のようにマクロライド耐性マイコプラズマに対してもマクロライドで最終的に治癒するようなことが起きる理由の一つとして、マイコプラズマによる炎症は、細菌による直接障害よりも、人に免疫を司っているタンパク質のインターロイキン(IL)のうちIL-8、IL-18などによる免疫反応が主要因と考えられるためです。近年の研究では、マクロライド系の抗生物質には抗菌作用の他に、免疫系に影響を与えることがわかっており、抗菌作用はあまり効果がなくても、免疫作用によりマイコプラズマに対して作用することが示唆されています((門田淳一 ほか; マクロライド系薬の新しい使い方; 南江堂, 2015))。
このように、クラリスはマイコプラズマに対して耐性の問題があるものの、現段階では最も使用される薬の一つとされ、非常に頼りにされています。
なお、マイコプラズマ感染後の登園・登校の基準は、熱や咳などの主要な症状が改善すれば可とされていますが((American Academy of Pediatrics. 2012 Report of the committee on infectious
diseases. 29th eds, p520,801, 2012.))、可能であれば医師と相談しながら決めるのが望ましいでしょう。
 

インフルエンザに使用されるケースもある

クラリスなどのマクロライド系抗生物質は、インフルエンザに対しても使用されるケースがあります。
インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスに対して、クラリスは直接の作用はありません。クラリスドライシロップをインフルエンザに使用する理由の一つが、インフルエンザに続発する細菌の二次感染を防ぐ目的が挙げられます。
そして、別の理由として近年注目されているのが、クラリスの免疫賦活化作用です。
インフルエンザの治療では一般的にタミフルやイナビルなどの抗インフルエンザ薬を使用しますが、この抗インフルエンザ薬を使用すると、感染時の獲得免疫が不十分となるなど、翌年以降の再感染率が高くなります。この抗インフルエンザ薬にクラリスを併用すると、その免疫賦活化作用により抗インフルエンザ薬の使用によって免疫が不十分になる欠点をカバーすることが確認されました((門田淳一 ほか; マクロライド系薬の新しい使い方; 南江堂, 2015))。
このようにクラリスはインフルエンザウイルスに対する直接の効果はなくても、その免疫作用によってインフルエンザに対して使用されることがあります。

クラリスの小児への使い方|飲ませ方や投与量は

クラリスの小児の一般的な投与量は体重1kgあたり、10〜15mgの成分量を1日に使用します。
例として30kgの子供の場合、錠剤では1日にクラリス錠50小児用を6錠前後、1日2回〜3回に分けるので1回2〜3錠となります。
20kgの場合、錠剤では1日にクラリス錠50小児用を4錠前後、1日2回〜3回に分けるので1回1〜2錠となります。
10kgの場合、ドライシロップが一般的であり、クラリスドライシロップ10%小児用を1〜1.5gを1日2〜3回に分けて使用します。
クラリスドライシロップの体重ごとの用量は以下の通りとなります((クラリス投与量早見表 一部改変))。

体重(kg) 1日投与量の目安:製剤量(g)
(2〜3回に分ける)
5〜10 0.5〜1.5
11〜15 1.1〜2.2
16〜20 1.6〜3.0
20〜25 2.0〜3.7
26〜30 2.6〜4.0

 
クラリスの一般感染症の用法用量は以下の通りです。

:通常、小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり10~15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。
レジオネラ肺炎に対しては、1日体重1kgあたり15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ドライシロップ:用時懸濁し、通常、小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり10~15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。
レジオネラ肺炎に対しては、1日体重1kgあたり15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

クラリス錠50小児用/ クラリスドライシロップ10%小児用 添付文書

クラリスの小児への飲ませ方

クラリスを小児に飲ませる場合、錠剤であるクラリス錠50小児は通常は水で飲ませるようにしましょう。
クラリスドライシロップの場合、通常の飲み方は少量の水(小さじ1〜2杯)に混ぜて飲ませます。作り置きはせず、飲ませる直前に混ぜましょう。
また、薬を飲ませた後は、すぐにお水を飲ませてあげましょう。口の中に残った薬で苦く感じることがあります。水だけでは不十分と感じる場合は、薬を飲んだ後にチョコレートやアイスクリームを食べされるのも苦味を防ぐ方法とされています((クラリスドライシロップの飲ませ方))。
小児がクラリスドライシロップを飲まない場合の対処法として、他の食べ物や飲み物に混ぜて飲ませる方法があります。
クラリスドライシロップを混ぜることが可能なものとして、アイスクリーム、プリン、お砂糖、コンデンスミルク、ココアパウダー、クリームパウダー・ミルク(コーヒー用)、ピーナッツクリームなどがあります((クラリスドライシロップを服用されている方へ))。メーカーからの資料には記載がありませんが、牛乳でも問題ないと考えられています。
また、ヨーグルト、フルーツジュース、スポーツドリンク、フルーツ味の服用補助ゼリーは混ぜると苦味が出るため、避けるようにしましょう。
また、他の薬とのまぜ合わせによってクラリスドライシロップの苦味が出る可能性もあります。ムコダインドライシロップやそのジェネリック医薬品であるカルボシステインドライシロップと一緒に混ぜて飲むのは避けるようにしましょう。

クラリスの小児の副作用

クラリスは多くの小児患者で使用されている薬であり、副作用に関しても大きな心配が必要ない薬の一つです。
添付文書によると副作用の頻度は、2万人以上を調査した製造販売後の使用成績調査の結果、小児の副作用発現率は0.89%、主なもは発疹の0.18%、下痢の0.14%というものでした((クラリス錠50小児用/ クラリスドライシロップ10%小児用 添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/400059_6149003F1031_1_30.pdf))。
このようにクラリスは頻度が高い副作用でも1%未満のものがほとんどであり、副作用自体が非常に少ないことが窺えます。
そのほかにも吐き気や頭痛、しびれ、胃痛(胃部不快感)なども報告されていますが、いずれも頻度が特に高いものはありません。

クラリスの小児における眠気の副作用

クラリスの小児における眠気の副作用はあまりないと考えられます。
クラリスの副作用頻度を調査した結果では、小児においては承認時までの臨床試験、製造販売後の使用成績調査の結果、いずれも眠気の副作用は認められておらず、成人において0.01%という頻度で認められているという内容ですクラリス インタビューフォーム http://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/400059_6149003F1031_1_030_1F。
クラリスはその作用機序からも眠気が現れることは考えにくく、眠気が現れた場合は、他に併用している薬が原因の可能性や、疾患そのものによる消耗によって眠気がもたらされている可能性も考えられます。
 
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。

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