ナウゼリンの効果や副作用|使用や食後と食前の違い、小児や授乳中の使用も

ナウゼリンの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中の使用、妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。

ナウゼリンの特徴

ナウゼリンはドンペリドンの成分を含む消化器機能治療薬であり、悪心(吐き気)・嘔吐・食欲不振・腹部膨満感、腹痛、胸やけなどの消化器機能異常に効果がある薬です1)
ナウゼリンの特徴として、抗ドパミン作用を有しており、CTZ(chemoreceptor trigger zone)に作用し、強い制吐作用を示します2)。血液-脳関門を通過しにくい点からも安全性が比較的高いと考えられており、小児でもよく使われる薬の一つです。
ナウゼリンには通常の錠剤で成分を5mg含むナウゼリン錠5と10mg含むナウゼリン錠10、水なしでも飲める口腔内崩壊錠(OD錠)のナウゼリンOD錠5、ナウゼリンOD錠10、粉薬である ナウゼリン細粒1%、シロップにして使用する粉状のナウゼリンドライシロップ1%、座薬であるナウゼリン坐剤10、ナウゼリン坐剤30、ナウゼリン坐剤60の種類があります。
今回は主にナウゼリン錠5、ナウゼリン錠10について確認していきます。
1) ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書
2) ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 インタビューフォーム

ナウゼリンの効果|小児の消化器症状に対しても

ナウゼリン胃炎や胃下垂などに基づく悪心(吐き気)・嘔吐・食欲不振・腹部膨満感、腹痛、胸やけなどの消化器機能異常に対して効果がある薬です。胃痛などが伴う吐き気などで使用されるケースも多い薬です。
また、小児においては周期的な嘔吐や風邪などの上気道炎に伴う嘔吐などにも使われることがあります。
ナウゼリン錠の効能効果の詳細は以下の通りです。

下記疾患および薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、あい気)
成人:
○慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群
○抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時
小児:
○周期性嘔吐症、上気道感染症
○抗悪性腫瘍剤投与時

ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

ナウゼリンの作用機序

ナウゼリンの作用機序は、上部消化管とCTZ(chemoreceptor trigger zone)における抗ドパミン作用によるものです。
消化管はアセチルコリンという物質によって運動が活発になりますが、ドパミンによってアセチルコリンの放出が抑制されます。また、CTZのドパミン受容体が刺激されると嘔吐が引き起こされます。ナウゼリンはドパミンの受容体を阻害することによって消化管運動が抑制されることや嘔吐につながる刺激を防ぎます。

ナウゼリンの効果時間

ナウゼリンの効果時間の参考になるデータとして薬物動態の確認結果があります1)
ナウゼリン錠の最大血中濃度到達時間(Tmax)は0.5時間とされており、約30分で血中での薬の成分濃度が最大となるため、この時点では十分な効果が現れると考えられます。
1) ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

ナウゼリンの実際の患者への効果

ナウゼリンの実際の患者さんに対する効果は臨床試験によって確認されています1)
成人の消化器疾患に対する使用では慢性胃炎で67.4%、胃下垂症で74.2%、胃切除後症候群で85.7%の有効率が確認されています。
また、小児においては、周期性嘔吐症83.1%、上気道感染症89.7%、抗悪性腫瘍剤投与時61.5%の有効率が確認されており、実際の患者さんに対して効果が確認されています。
1) ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

ナウゼリン錠は下痢には使用しない

ナウゼリン錠は一般的には下痢には使用しません。
なお、ナウゼリン錠ではなく、ナウゼリンドライシロップ1%、坐剤10、30には「乳幼児下痢症」の効能効果が認められていますが、これらも直接下痢を抑えるものではなく、乳幼児下痢症に伴う悪心、嘔吐などの症状改善による脱水状態にならない目的のための使用となります。
ナウゼリンには下痢止めの効果は認めらていないので注意しましょう。

ナウゼリンの使い方

ナウゼリンは大人の場合は10mg錠を1回1錠、1日3回食前に使用するのが一般的です。その他、症状がある時に頓服として使用するケースもあります。小児の場合は体重によって使用量が異なります。
ナウゼリン錠の用法用量の詳細は以下の通りです。

成人:通常、ドンペリドンとして1回10mgを1日3回食前に経口投与する。ただし、レボドパ製剤投与時にはドンペリドンとして1回5~10mgを1日3回食前に経口投与する。
なお、年令、症状により適宜増減する。
小児:通常、ドンペリドンとして1日1.0~2.0mg/kgを1日3回食前に分けて経口投与する。
なお、年令、体重、症状により適宜増減する。
ただし、1日投与量はドンペリドンとして30mgを超えないこと。
また、6才以上の場合はドンペリドンとして1日最高用量は1.0mg/kgを限度とすること。

ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

ナウゼリンは小児でも使用

ナウゼリンは同じ吐き気止めの薬の中でも、中枢への移行が少ないと考えられており、小児に対しても使いやすい薬の一つです。
ナウゼリンの小児への使用量は年齢や体重などによって異なり、さらに錠剤以外にもドライシロップや坐剤が使われたりします。必ず医師の診察の上、適切な剤型、用法用量を設定してもらったら上で使用するようにしましょう。

ナウゼリンは食後より食前に

ナウゼリンは基本的に食前などの空腹時に使用するのが一般的です。ナウゼリンの消化管運動改善作用を十分に発揮するには食事を取る前に使用した方が望ましいと考えられており、臨床試験の有効性も食前での使用で確認されたものです。
ナウゼリンを食後に使用した場合は吸収が遅れることが確認されており3)、効果が得られにくくなる可能性があるため、医師から特別な指示が出ている場合を除き、食前空腹時の使用をするようにしましょう。
3) J.Heykants.et.al.:Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet 6(1), 61-70, 1981

ナウゼリンの副作用

ナウゼリンの主な副作用は成人においては下痢、便秘、胸やけ、嘔吐等の消化器症状(0.4%)、乳汁分泌、女性化乳房等の内分泌系症状(0.2%)などとされています。
小児での主な副作用は下痢(0.3%)、錐体外路障害、眠気、発疹(0.06%)などとされています。
特に下痢の副作用に関してはナウゼリンの副作用の中で唯一、0.1%以上の頻度となっており、注意が必要な副作用の一つと言えます。
その他に注意したい副作用として錐体外路障害もあります。錐体外路障害は脳のドパミン受容体が阻害されることなどによって引き起こされることがあり、症状としては手指振戦(ふるえ)、筋硬直、頸・顔部の攣縮、眼球回転発作、焦燥感などがあります。ナウゼリンはこの錐体外路障害が比較的起きにくい消化管運動改善剤とされていますが、低頻度ながらも報告があるため、注意が必要です。
また、薬の副作用の定番である眠気やめまいなどの報告もあり、自動車運転などの機械操作についても注意喚起されています。

重要な基本的注意
1.本剤の投与により、間脳の内分泌機能調節異常、錐体外路症状等の副作用があらわれることがあるので、本剤の投与に際しては、有効性と安全性を十分考慮のうえ使用すること。
2.眠気、めまい・ふらつきがあらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械操作に注意させること。

ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

ナウゼリンの飲み合わせ

ナウゼリンには併用禁忌でないものの、飲み合わせに注意が必要なものがいくつかあります1)
ナウゼリンとの飲み合わせに注意が必要な薬(併用注意薬)は以下の通りです。

成分名等 代表的な薬剤
フェノチアジン系薬剤
ブチロフェノン系薬剤
ラウオルフィアアルカロイド薬剤
コントミン、セレネース
ジギタリス剤 ラニラピッド
抗コリン剤 アキネトン
制酸剤
H2受容体拮抗剤
プロトンポンプ阻害剤
マグミット、ガスター、パリエット
CYP3A4阻害剤 クラリス

上記の併用注意の薬剤のうち、制酸剤にも該当するマグミット(酸化マグネシウム)、H2受容体拮抗剤のガスター(ファモチジン)、プロトンポンプ阻害剤のパリエット(ラベプラゾール)、タケプロン(ランソプラゾール)、ネキシウムなどは比較的使用している人も多い薬剤であり、CYP3A4阻害剤に関しても抗生剤のクラリス(クラリスロマイシン)などは風邪などでも使われるケースもある薬です。これらの薬は実際には併用されるケースもありますが、使用している場合は必ず医師や薬剤師に伝えておくようにしましょう。
1) ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

ナウゼリンの授乳中の使用

ナウゼリンは授乳中の使用に関して、薬剤の大量投与は避けるよう注意喚起されています。

授乳中の婦人には大量投与を避けること。[動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。]

ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

上記のような注意喚起がされている理由として、動物実験にてナウゼリンの成分が乳汁に移行することが確認されているためです2)
専門家による見解の例として、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、母乳中への移行は少なく 、使用可能と考えられるという内容です4)。大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでも、短期間で通常量以下であれば使用可能としており、「多くの授乳婦で研究した結果、安全性が示された薬剤 / 母乳への移行がないか少量と考えられ乳児に有害作用を及ぼさない」という見解です5)

母乳中への移行は少なく、使用可能と考えられる。乳汁分泌促進を期待して使用されることがある。

「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)

母乳産生量を増やす。30mg/日以下で短期処方であれば授乳との両立可能

母乳とくすりハンドブック

実際に授乳中にナウゼリンを使用するかは、処方医の先生の判断となります。ナウゼリンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 インタビューフォーム
4) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
5) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)

ナウゼリンの授乳の間隔、再開の目安

前述の通り、ナウゼリンは授乳中でも通常通り使用しても大きなリスクはないと考えられる薬剤ですが、何らかの理由もしくは大事をとってナウゼリン服用中は授乳を中止するケースも中にはあります。
その際の間隔、授乳再開の時期は基本的には医師の判断によりますが、製薬メーカーからはナウゼリンの投与中止後4日移行、万全を期するなら1週間後位から授乳再開が推奨されています6)。実際には上記の日数よりも早く再開されるケースも多いと考えられますが医師のまずは指示通りに使用するようにしましょう。
6) 協和発酵キリン よくある医薬品Q&A

ナウゼリンの妊娠中の使用

ナウゼリンは妊娠もしくは妊娠している可能性がある場合には禁忌とされており、使用することができません。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[動物実験(ラット)で骨格、内臓異常等の催奇形作用が報告されている。]

ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 添付文書

上記のような注意喚起がされている理由として、ナウゼリンは動物実験において胎盤を通過し、生殖発生毒性試験では骨格や内臓異常などのリスクが認められている点が挙げられます2)
妊娠しているもしくは妊娠している可能性ある場合には必ず処方医に伝え、自己判断でナウゼリンを使用するようなことは避けましょう。
2) ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10 インタビューフォーム

ナウゼリンの薬価、ジェネリック

ナウゼリン錠の2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価はナウゼリン錠5で1錠あたり9.8円、ナウゼリン錠10で15.1円となっています。
ナウゼリン錠にはジェネリック医薬品が販売されており、ペロリック、ナシロビン、ハドドリン、ドンペリドンなどの名称で販売されています。ジェネリック医薬品は5mg製剤及び10mg製剤で共にで1錠あたり5.6〜5.8円なっておりナウゼリンよりもやや経済的と言えます。

ナウゼリンの市販での購入

ナウゼリンの成分を含む薬は市販では購入することができません。また、ナウゼリンと比較的成分が近いものや、代替となるような薬も市販では買うことはできません。
市販薬の吐き気止めになるような薬としては胃の不調が原因であれば制酸剤のサクロンや健胃薬の太田胃散、車酔いなどが原因であれば鎮うん薬のトラベルミンなどがありますが、ドンペリドンの代替として使用するには向いておらず、ドンペリドンを使用する場合は必ず医師の診察の上、処方してもらう必要があります。
 
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。

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