ムコソルバンの授乳の影響と妊娠中の使用|授乳中と妊娠中の注意点

ムコソルバンについて授乳への影響と妊娠中、妊娠後期の使用について解説します。

ムコソルバンの授乳中の使用|授乳への影響は

ムコソルバンは授乳中の使用は推奨されていません
ムコソルバンにはムコソルバン錠15mgの他、1日1回の使用で効果があるムコソルバンL錠45mgとムコソルバンLカプセル45mg、液剤であるムコソルバン内用液0.75%、粉薬のムコソルバンDS3%、小児用の粉薬である小児用ムコソルバンDS1.5%、小児用の液剤である小児用ムコソルバンシロップ0.3%がありますが、いずれも授乳中の使用に関しては以下のような注意喚起がされています。

授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。]

ムコソルバン 添付文書

動物実験で、ムコソルバンの成分が母乳中に移行することがわかっており、そのまま乳児に母乳を飲ませると薬の成分も乳児が摂取してしまう可能性が指摘されています。このため、製薬会社では授乳中に使用することは推奨していません。

ただし、母乳に移行する量は少量

製薬会社は推奨していないものの、ムコソルバンの成分が実際に母乳に移行する量は少量であることが確認されています。
母乳中への移行はラットの動物実験で確認されており、この結果は確かに母乳に移行するものの、非常に少量であることが確認されています1)
1) 久保順嗣ほか:医薬品研究 1981; 12(1): 237-245.

仮に授乳を経由して摂取しても影響は少ない?

ムコソルバンは小児でも使われる薬であり、授乳をもって乳児が摂取しても大きな影響はないとも考えられます。
ムコソルバンは去痰薬として、0歳の乳児にも非常によく使われる薬です。また、その効果は穏やかであり、副作用も少ないことで知られている薬です。
したがって、仮に授乳を経由して少量を摂取しても、乳児への影響は限定的(あまり大きくない)と考えられます。

公的機関の見解も授乳中の使用は大きな問題なし

ムコソルバンの授乳中の使用は、いくつかの公的機関の見解も問題ないという判断です。
大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブック(2010)では授乳婦が使用した場合でも有害事象が起きた報告がなく、授乳中の使用は「○(限られた授乳婦で研究した結果、乳児へのリスクは最小限と考えられる薬剤 授乳婦で研究されていないが、リスクを証明する根拠が見当たらない)」という評価です。

授乳婦服用による有害事象の報告が見当たらない。小児に適応を持ち、移行したとしても問題にならないと思われる。

母乳とくすりハンドブック

また、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)でも人における母乳の移行データがないため、使用可能という判断をしています。

ヒト母乳への移行データがないので、授乳婦に使用可能と考えられる。小児に使用する製剤である。

「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)

このように専門家による公的機関でも、ムコソルバンの授乳中の使用はあまり問題がない、影響が少ないという判断が一般的です。

 

授乳中の使用に関して最後は医師の判断で

ムコソルバンの授乳中の使用は前述の通り、製薬会社は推奨していないものの、実際には乳児への影響は大きくないと考えられます。
ただし、最終的に授乳中にムコソルバンを使用するかを決めるのは処方医の先生となります。お母さんや子供の体調や体質、その時の症状や併用している薬など、様々な状況から総合的に判断し、医師が処方するか決めることになります。
したがって、処方医の先生には授乳中であることはもちろん、その他にお母さんと子供の体調や体質、他に使用している薬、生活環境などすべて伝えた上で先生に判断してもらうようにしましょう。
先生とよく相談した上でムコソルバンを処方された場合は、授乳中でも安全に使用できるという判断をされたと考えられますので、その際は安心して使用するようにしましょう。
 

ムコソルバンの妊娠中の使用|妊娠初期や妊娠後期の影響は

ムコソルバンは妊娠中の使用も推奨されていません
いずれの剤型においても、ベネフィットが妊娠中に使用するリスクを上回る場合のみ使用してくださいといった意味合いの注意喚起がされています。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]

ムコソルバン 添付文書

ただし、上記のような注意喚起はほとんどの薬剤で書かれている内容であり、実際にはほとんどリスクがないような薬でも記載されている場合がほとんどです。

妊娠中に注意喚起されているのはデータがないから

前述のようなムコソルバンの妊娠中の使用に関する注意喚起がされている理由は、妊婦に使用したデータがない、もしくは少ないからです。

妊婦に対する臨床試験を実施しておらず、妊娠中の投与に関する安全性が確立していないため設定した。

ムコソルバン インタビューフォーム

したがって、実際に妊婦に使用して危険な影響が現れることが確認されているわけではありません。危険とも安全とも確認できるほどデータがないというのが実際のところと考えられます。

妊娠中の使用は動物実験ではほとんど影響なし|妊娠初期、妊娠末期においても

妊娠中のムコソルバンの使用に関して動物実験のデータがいくつか公開されていますが、それらの結果は基本的に大きな問題はないというものでした。
 

胎児への移行性
妊娠末期の雌ラットに14C-アンブロキソール塩酸塩を5mg/kg経口投与し、全身オートラジオグラフィーにより胎盤通過性を検討したところ、胎仔への分布はわずかであり、その放射能レベルは母ラットの骨格筋のレベルよりも低く、極めて低レベルであった。また、胎盤への分布は母ラットの血中放射能レベルと同程度であった。母ラットの血中放射能レベルが上昇しているときでも胎仔への分布が極めて少ないことから胎盤を通過し難いと考えられた1)

 

生殖発生毒性試験
ラットの妊娠前・妊娠初期、胎仔器官形成期に経口投与した試験では、500mg/kg以下の投与量で特に異常は認められなかった。周産期及び授乳期に経口投与した試験では、50mg/kg以下の投与量で特に異常は認められなかった。またウサギを用いた胎仔器官形成期に経口投与した試験では、40mg/kg以下の投与量で特に異常は認められず、催奇形性も認められなかった2)〜4)

1) 久保順嗣ほか:医薬品研究 1981; 12(1): 237-245.
2) 松沢景子ほか:医薬品研究 1981; 12(1): 358-370.
3) Iida Hほか:応用薬理 1981; 21(2): 271-279.
4) 松沢景子ほか:医薬品研究 1981; 12(1): 371-387.

公的機関の見解も妊娠中の使用は大きな問題なし

愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)では妊娠中の使用に関して問題ないという見解です。

妊婦に使用可能と考えられる。

「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)

妊娠中の使用に関しても最後は医師の判断で

授乳中の使用と同様、妊娠中の使用に関しても最後は処方医の先生の判断となります。
前述の通り、妊娠中にムコソルバンを使用してもさほど大きな危険性、胎児への影響は少ないと考えられますが、自己判断でムコソルバンを使用するのは避け、必ず処方医の先生に相談の上、判断を仰ぐようにしましょう。
先生が妊娠中であることを知った上で処方された場合は、安全と判断しての処方と考えられますので、安心して使用するようにしましょう。
 
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
 

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