ジプレキサの効果と眠気の副作用や体重への影響|薬価やジェネリックについても

ジプレキサの効果、眠気・糖尿病・太るなどの副作用、薬価やジェネリックの有無、後発品の薬価などを添付文書等から解説していきます。

ジプレキサの特徴と効果

ジプレキサの薬としての特徴と効果を確認していきましょう。

ジプレキサは統合失調症に効果がある

ジプレキサは主に統合失調症や双極性障害(躁鬱病)に効果がある薬です。ジプレキサの効能効果は以下の通りです。

統合失調症
双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善
ジプレキサ錠2.5mg/ ジプレキサ錠5mg/ ジプレキサ錠10mg

ジプレキサはMARTAに分類される薬

ジプレキサはMARTAと言われる統合失調症薬の一つであり、他の統合失調薬と比較してもかなり強い効果が期待出来る特徴があります。
MARTAとはmulti-acting receptor targeted antipsychotics(多元受容体抗精神病薬)の略であり、統合失調薬に対しては近年最も使用されるグループの一つです。
ジプレキサを含めたMARTAは、ドパミン受容体(D2受容体)、セロトニン受容体(5-HT2受容体)、ヒスタミン受容体(H1受容体)、アドレナリン受容体(α1受容体)、アセチルコリン受容体(M3受容体)などの多くの受容体を阻害することで、統合失調症や双極性障害に効果を示します。
統合失調症の原因はドパミンやその状態の異常と考えられており、ドパミンD2受容体を阻害することが治療につながりますが、D2受容体のみをターゲットとした場合、副作用のリスクが高く、近年はMARTAの他、SDA(セロトニン・ドパミン遮断薬)やDPA(ドパミン部分作動薬)が多く使用されています。

ジプレキサの実際の患者さんに対する効果は4〜6割程度

ジプレキサを実際の患者さんに使用した臨床試験の結果では、6割程度の効果が確認されています。
ジプレキサを統合失調症の患者さんに対していくつかの臨床試験を実施しており、その代表的なものの結果は、81例における改善率が59.3%、156例における改善率が58.3%、90例におおける改善率が44.4%といったものであり1)、統合失調症に対しては4割〜6割程度の改善率が期待出来る結果となっています。
1) ジプレキサ錠2.5mg/ ジプレキサ錠5mg/ ジプレキサ錠10mg 添付文書

ジプレキサは吐き気止めとしても効果がある?

適応外使用としてジプレキサを吐き気止めとして使用するケースもあります。
セロトニン受容体、ドパミン受容体、ヒスタミン受容体の阻害作用などによるものとされており、さらに本来副作用である食欲亢進の作用から食欲も回復されることが期待されて使用することがあるようです。
本来の使用法と異なり、自己判断で使用するのは避けるようにする必要がありますが、もし吐き気の症状でジプレキサが処方された場合は、医師が上記の理由から処方した可能性も考えられます。

ジプレキサの副作用|眠気、体重増加、糖尿病、吐き気などは?

ジプレキサには注意するべき副作用がいくつかあります。

頻度が高い副作用は体重増加、眠気など

ジプレキサを統合失調症に対して使用した臨床試験と製造販売後の調査結果を合わせた副作用の頻度は全体で34.51%であり、3人に1人程度の割合で副作用がみられた結果となっています1)
比較的頻度が高い副作用は体重増加(7.71%)、傾眠眠気;4.01%)、不眠(3.47%)、便秘(3.21%)、アカシジア(3.13%)、食欲亢進(2.63%)、トリグリセリド上昇(2.19%)などとされています。
1) ジプレキサ錠2.5mg/ ジプレキサ錠5mg/ ジプレキサ錠10mg 添付文書

ジプレキサの眠気の主な原因は抗ヒスタミン作用

ジプレキサで眠気が出る頻度は前述の通り4.01%と報告されています。
ジプレキサで眠気が出る主な理由は抗ヒスタミン作用(H1受容体の阻害)と考えられています。この抗ヒスタミン作用は花粉症などのアレルギーに使用する薬と同じ原理であり、花粉症の薬で眠気が出ることと同じ理由と言えます。
使い続けることで慣れることも多いとされていますが、耐えられないような眠気が継続する場合には医師に相談して他の薬に変えてもらうなどの対処も検討するようにしましょう。

ジプレキサは体重増加や食欲亢進で太る可能性

ジプレキサの副作用には比較的高い頻度で体重増加(7.71%)や食欲亢進(2.63%)があり、これらの結果からジプレキサを使用して太るというケースも有り得ます。
ジプレキサによる体重増加や食欲亢進の原因は明確にされていないものの、セロトニンやヒスタミン受容体の拮抗作用による食欲増進や食欲と代謝の調節を行う血清レプチン分泌量の変化などが可能性として考えられています。
食事療法や運動療法なども対策の一つと言えますが、これらの副作用がひどい場合はにはジプレキから別の薬(エビリファイやリスパダールなど)に変更したりすることで体重増加が抑えられるという報告や、本来適応外であるものの糖尿病薬のメトホルミン製剤(メトグルコなど)を使用することでも体重増加を抑えられるという報告もあります2)。しかしこれらの処方を決定するのは最終的には医師であるため、医師に副作用の内容を相談しながら指示を仰ぐようにしましょう。
なお、体重増加と食欲亢進は必ずしも相関せず、食欲が変化していなくても体重が増加するケースも認められているようです3)
2) 日本神経精神薬理学会 統合失調症薬物治療ガイドライン
3) Smith Robert C. Psychiatry Res. 199(3): 159-163, 2012

重大な副作用として糖尿病の症状が報告されている

ジプレキサの重大な副作用の一つに「高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡」が挙げられており、これらの糖尿病の症状も注意が必要な副作用です。
ジプレキサによって高血糖の症状がでる理由は明確にされていないものの、ジプレキサにより本来血糖値を下げるインスリンに抵抗を示すようになったり、セロトニン受容体の拮抗作用により膵臓からのインスリン分泌が減少する可能性などが考えられています。
高血糖は初期症状が自覚しにくい面もあるため、血糖値を定期的に測定するのが望ましい他、糖尿病性の症状の初期症状としては以下のようなものがあり、これらが同時に複数自覚するときはすぐに医師の処置を受けるようしましょう。
<初期症状>
意識の低下、考えがまとまらない、深く大きい呼吸、手足のふるえ、判断力の低下、激しいのどの渇き、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、意識がなくなる、からだがだるい、脱力感

脂質代謝異常も代表的な副作用の一つ

ジプレキサなどのMARTAの特徴的な副作用の一つに脂質代謝異常もあります。検査値ではトリグリセリドなどに影響し、ジプレキサのトリグリセリド上昇の頻度は2.19%とされています。
脂質代謝異常はその名称のとおり脂質が代謝できないことがある状態であり、こちらの副作用も太るということにつながる可能性があります。
ジプレキサを使用した場合には脂質に関わる検査値にも注意が必要となります。

錐体外路障害は従来の薬よりは少ない

ジプレキサが分類されるMARTA(多元受容体抗精神病薬)やSDA(セロトニン・ドパミン遮断薬)やDPA(ドパミン部分作動薬)は非定型抗精神病薬という分類をされ、従来より使用されてきたクロルプロマジン(コントミン等)やスルピリド(ドグマチール等)などの定型抗精神病薬よりも錐体外路障害は少ないと言われているものの、アカシジアなどは3.13%の頻度があり、比較的多く見られる副作用と言えます。
錐体外路障害は手足のふるえ、体のこわばり・つっぱり、よだれが出る、体が勝手に動くなどのパーキンソン症状や、ジスキネジア(筋肉が固まる、痙攣する)、ジストニア(手足や口、舌などが勝手に動く)、アカシジア(ソワソワ落ち着かない、動き回りたくなる)などの症状が発現するものです。ドパミンの作用抑制が原因の一つとされており、ドパミン受容体の遮断を作用とする抗精神病薬にはよくみられる副作用の一つと言えます。
基本的には薬の減量や変更で様子を見たりしますが、場合によってはパーキンソン病の治療薬である抗コリン薬(アキネトンなど)を使用するケースも有ります。

ジプレキサの薬価とジェネリック|後発品の薬価も確認

ジプレキサの薬価とジプレキサのジェネリック後発品)について確認していきましょう。

ジプレキサの薬価は138.1〜489.8円

ジプレキサの薬価は、ジプレキサ錠2.5mgで1錠あたり138.1円、ジプレキサ錠5mgで258.3円、ジプレキサ錠10mgで489.8円となっています。また、水なしで服用できるジプレキサザイディス錠もそれぞれの規格で全く同じ薬価となります。ジプレキサ細粒は1gあたり472.2円となります。
ジプレキサは維持量として通常は10mgを使用しますが、ジプレキサ錠10mgを1ヶ月使用すると仮定した場合の薬価を簡易的に計算すると、
489.8円 × 30日 = 14694円
となり、健康保険が適用となる場合はここから3割などの自己負担額がかかることになります。

ジプレキサにはジェネリック(後発品)がある

ジプレキサにはジェネリック医薬品(後発品)が販売されています。
ジプレキサのジェネリックはオランザピンという成分の販売名で販売されており、ジプレキサ錠はオランザピン錠、ジプレキサザイディス錠はオランザピンOD錠、ジプレキサ細粒はオランザピン細粒という名称になります。それぞれジェネリックに変更することでより安い薬価で入手することができます。

ジプレキサの後発品の薬価は44.1〜158.4円

ジプレキサのジェネリック医薬品(後発品)の薬価は、オランザピン錠2.5mgが1錠あたり44.1円、オランザピン錠5mgが83.5円、オランザピン錠10mgが158.4円とされています。オランザピンOD錠も同様の薬価となります。オランザピン細粒の薬価は1gあたり193.3円となります。
ジプレキサ錠10mgをジェネリックのオランザピン10mg錠に変更し30日使用した場合の薬価は、
158.4円 × 30日 = 4752円
となります。仮に3割負担とすると、ジプレキサの4408円に対し、ジェネリックのオランザピンは1426円となり、2982円の差額が発生します。厳密には薬価の計算方法は端数の扱いなどが異なり、ここにさらに診察料、処方料、調剤料などが入ってきますが、簡易的な計算でもジェネリックを使用することが経済的であることが窺えます。
ジプレキサとジェネリック(後発品)の薬価比較

成分・規格 ジプレキサ
(先発品)
オランザピン
(後発品)
2.5mg錠 138.1円 44.1円
5mg錠 258.3円 83.5円
10mg錠 489.8円 158.4円
口腔内崩壊錠2.5mg 138.1円 44.1円
口腔内崩壊錠5mg 258.3円 83.5円
口腔内崩壊錠10mg 489.8円 158.4円
細粒1% 472.2円 193.3円

 
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました