ユナシン錠の効果や副作用|略語や腎機能の影響、妊婦や授乳中の使用も

ユナシンの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。

ユナシンの特徴|内服薬と点滴も

ユナシンはスルタミシリントシル酸塩水和物を成分として含むペニシリン系に分類される抗生物質の一つです。幅広い効能を有しており、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎などの呼吸器系の他、泌尿器領域の膀胱炎や腎盂腎炎、眼科領域の涙嚢炎、角膜炎、耳鼻科領域の中耳炎、副鼻腔炎などに対しても効果がある抗生物質です((ユナシン錠375mg 添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/671450_6139504F1022_2_07.pdf))。
ユナシンの特徴は、抗生物質のアンピシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤のスルバクタムがエステル結合した成分であり、アンピシリンとスルバクタム両者の経口吸収性を改善すると同時に、生体内ではそれぞれの成分が遊離し相互に薬効上協力作用を発揮するという点が挙げられます((ユナシン錠375mg インタビューフォーム http://www.info.pmda.go.jp/go/interview/2/671450_6139504F1022_2_1F))。
ユナシンの名称がついている製品には内服薬としてユナシン錠の他に、同じ成分の粉薬であるユナシン細粒小児用10%、内服薬以外ではさらに点滴のユナシン-Sがあります。点滴のユナシン-Sは厳密にはユナシン錠と成分が異なり、アンピシリンナトリウム・スルバクタムの合剤となります。
今回は主に内服薬のユナシン錠について確認していきます。

ユナシン錠の略語はSBTPC

ユナシン錠をはじめとした抗生物質には略語が決められており、ユナシンの略語は「SBTPC」となっています((日本化学療法学会 オンライン用語集http://www.chemotherapy.or.jp/publications/glossary_online.html))。

ユナシンの効果

ユナシン錠は様々な領域の感染症に効果がある薬です。代表的な効能は咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎などの呼吸器系、泌尿器領域の膀胱炎や腎盂腎炎、眼科領域の涙嚢炎、角膜炎、耳鼻科領域の中耳炎、副鼻腔炎などです。
ユナシン錠の効能効果の詳細は以下の通りです。


表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、淋菌感染症、子宮内感染、涙嚢炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、中耳炎、副鼻腔炎

ユナシン錠375mg 添付文書


ユナシンの作用機序

ユナシンの作用機序は、スルタミシリンから遊離したアンピシリンによる細菌がもつ細胞壁構造の合成阻害によるものと、もう一方の遊離したスルバクタムによる抗生物質を分解してしまうβ-ラクタマーゼ酵素の阻害です。
細胞壁は人にはない構造であり、細菌のみが持っている構造のため、アンピシリンは人に対しては毒性が少なく、細菌に効果的に作用します。ただし、アンピシリンなどのβ-ラクタム系に分類される抗生物質に対して、耐性をもつ細菌も確認されており、その耐性の機構のひとつとしてβ-タクタム系を分解してしまう酵素のβ-ラクタマーゼが知られています。スルバクタムはこのβ-ラクマーゼを阻害することによって、アンピシリンが効きにくい細菌に対しても、本来の抗生物質の作用を引き出す役割を担います。ユナシンはこれらのアンピシリン、スルバクタム成分がエステル結合したスルタミシリンを成分として含んでおり、細菌に対してより高い効果が期待される薬です。

ユナシンの効果は57.5〜96.9%の有効率

ユナシン錠の実際の患者さんに対する効果は臨床試験によって確認されています。
代表的な結果として、呼吸器感染症では78.6%、尿路感染症では80.8%、耳鼻科領域では57.5%の有効率が確認されています((ユナシン錠375mg 添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/671450_6139504F1022_2_07.pdf))

疾患群 有効例/症例 有効率
浅在性化膿性疾患注)(毛嚢炎、せつなど) 284/339 83.8%
呼吸器感染症注)(上気道炎、肺炎など) 536/682 78.6%
尿路感染症注)(腎盂腎炎、膀胱炎、淋疾など) 994/1230 80.8%
産婦人科感染症(子宮内感染など) 62/64 96.9%
眼科感染症(涙嚢炎など) 45/56 80.4%
耳鼻科感染症注)(慢性中耳炎など) 130/226 57.5%

注:比較試験成績を含む

ユナシンの使い方

ユナシン錠は1回1錠を1日に2〜3回使用するのが一般的な使い方です。
ユナシン錠の用法用量の詳細は以下の通りです。


スルタミシリンとして、通常成人1回375mg(力価)を1日2~3回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

ユナシン錠375mg 添付文書


ユナシンの腎機能の影響と投与量は

ユナシンは腎排泄型の抗生物質の一つであり、血中濃度が腎機能の影響を受けやすい薬です。
高度の腎障害のある患者は慎重投与とされており、「血中濃度半減期が延長するので、投与量・投与間隔に注意すること」と注意喚起されています。
腎機能障害患者の血中濃度半減期(T1/2)は腎機能低下の程度に比例することが確認されています。具体的な投与量の調節は添付文書には明記されていませんが、処方医の判断により調節されるケースがあります。ただし、血液透析中の患者においては、アンピシリン、スルバクタム共に透析膜透過性を有するので、体内での蓄積は少なく、特に投与量の変更は必要ないと考えられる、とされています((ユナシン錠375mg 添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/671450_6139504F1022_2_07.pdf))。

Ccr(mL/min) T1/2(hr)注1) 尿中回収率(%)
24時間まで注1)
80-144 1.3/0.9 66/55
25-69 2.6/2.3 40/30
6-12 8.5/8.1 25/19
<5 3.3/2.4注2) 未検討

注1:ABPC/SBT
注2:血液透析中

ユナシンの副作用

ユナシンの主な副作用は下痢・軟便(2.38%)、発疹(0.33%)、AST(GOT)上昇(0.43%)、ALT(GPT)上昇(0.46%)などとされています((ユナシン錠375mg 添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/671450_6139504F1022_2_07.pdf))。
下痢などの消化器系の副作用に関しては、ユナシンは体内の細菌に対して殺菌的な効果を発揮しますが、腸内の環境を整えている細菌に対しても影響を及ぼすことがあり、下痢が起こることはやむを得ない面もあります。ユナシンの使用を止めればほとんどのケースで回復するため、大きな心配は要りません。
ただし、あまりに症状がひどい下痢が続く場合は医師に相談しましょう。また、日常的に胃腸が虚弱な体質の方などでは医師に相談すると整腸剤を処方してもらえるケースもあります。必要に応じて医師に相談しましょう。

ユナシンの飲み合わせ

ユナシンは他の薬との飲み合わせに関して、併用に注意が必要な薬がいくつかあります((ユナシン錠375mg 添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/671450_6139504F1022_2_07.pdf))。
併用注意が必要なものは以下の通りです。

成分名等 代表的な薬剤
アロプリノール ザイロリック
抗凝血剤 ワーファリン、プラビックス、バイアスピリン
経口避妊薬 トリキュラー、マーベロン
メトトレキサート リウマトレックス、メトレート
プロベネシド ベネシット

上記以外では、風邪などの上気道炎で使用するロキソニンやカロナールなどの解熱鎮痛薬、炎症を抑えるトランサミン(トラネキサム酸)、咳を抑えるメジコン、フスコデ、アストミン、たんの切れをよくするムコダイン、ムコソルバン、鼻水を抑えるアレロック、アレグラ、ザイザルなどはいずれも飲み合わせは問題がなく、併用可能な薬剤となります。

ユナシンの授乳中の使用

ユナシン錠は授乳中の場合は使用しない、もしくは授乳を避けることが推奨されています。


母乳中へ移行することが報告されているので、授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。

ユナシン錠375mg 添付文書


上記の注意喚起がされている理由として、ユナシンの成分は母乳中に移行することが確認されている点が挙げられます。
ただし、専門家による見解の中には問題なく使用出来るというものもあり、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、小児にも適応があり、授乳婦にも使用可能という内容です((愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)http://www.achmc.pref.aichi.jp/sector/hoken/information/pdf/drugtaioutebikikaitei%20.pdf))。


小児に適応があり、母乳中への移行は少なく、授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)


 
実際に授乳中にユナシン錠を使用するかは、処方医の先生の判断となります。ユナシン錠に限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。

ユナシンの妊婦・妊娠中の使用

ユナシン錠の妊娠中の使用に関しては、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、実際に使用するかは医師の判断になります。


アンピシリンの大量(3,000mg/kg/日)投与でラットに催奇形性が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。

ユナシン錠375mg 添付文書


実際に妊娠中にユナシン錠を使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。ユナシン錠に限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。

ユナシンの薬価、ジェネリック

ユナシン錠の2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価は1錠あたり56.1円となっています。
なお、ユナシン錠にはジェネリック医薬品がありません。ユナシンの成分を錠剤で使用したい場合はユナシン錠を使用する必要があります。

ユナシンの市販での購入

ユナシン錠の成分を含む薬は市販で買うことはできません。必ず処方箋が必要となる薬であるため、医師の適切な診断を受けて処方してもらうようにしましょう。
また、手元にユナシン錠が残っているケースや知人や家族からユナシン錠をもらって自己判断で使用するのはリスクが高い種類の薬です。自己判断で使用するのはやめましょう。
 
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
 

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