クラリス錠(クラリス200)の薬の効能や風邪や膀胱炎、クラミジア、マイコプラズマなどに対する効果、インフルエンザへの使用、発疹や下痢などの副作用、妊娠中や授乳中の使用、薬価やジェネリック、市販での販売状況について添付文書などから解説していきます。
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クラリス錠200の薬の効能と効果|風邪や膀胱炎、クラミジアへの使用は?慢性副鼻腔炎も
クラリス錠200はクラリスロマイシンを成分に含み、主に細菌による感染症に対して効果を発揮する抗生物質の薬です。
様々な効能を持っている薬であり、風邪が悪化した時の咽頭炎や気管支炎、肺炎の他、中耳炎や副鼻腔炎などをはじめとし、非常に多くの疾患に対して使用される抗生物質です。クラリス錠200の効能効果の詳細は以下の通りです。
1.一般感染症
〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属
〈適応症〉
●表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
●外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
●肛門周囲膿瘍
●咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
●尿道炎
●子宮頸管炎
●感染性腸炎
●中耳炎、副鼻腔炎
●歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
2.非結核性抗酸菌症
〈適応菌種〉
本剤に感性のマイコバクテリウム属
〈適応症〉
マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症
3.ヘリコバクター・ピロリ感染症
〈適応菌種〉
本剤に感性のヘリコバクター・ピロリ
〈適応症〉
胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎クラリス錠200 添付文書
クラリス錠200の薬の効果、効き目の強さは66%〜87%
クラリス錠200を実際の疾患に対して使用した時の有効率は添付文書に記載されており、よく使われる疾患に対しては66%〜87%の有効率となっています1)。
主な疾患に対するクラリス錠200の有効率は以下の通りです。
疾患名 | 有効率(%) |
皮膚科領域感染症 | 76.7 |
呼吸器感染症 (咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染) |
81.9 |
尿道炎 | 87.0 |
子宮頸管炎 | 84.6 |
耳鼻科領域感染症 (中耳炎、副鼻腔炎) |
66.8 |
歯科口腔外科領域感染症 (歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎) |
83.0 |
1) クラリス錠200 添付文書
ピロリ除菌はおよそ80%以上の効果
併用する薬剤によって若干異なるものの、クラリス錠200のヘリコバクターピロリの除菌の有効率はおよそ80%以上のケースがほとんどです1)。
1) クラリス錠200 添付文書
クラリス錠200は風邪、膀胱炎、クラミジアなどにも効果があるか
クラリス錠200は前述した疾患以外にも風邪、膀胱炎、クラミジア感染などにも使用されるケースがあります。
クラリス錠が風邪に対して処方される理由の例として、風邪が悪化した時の細菌感染を疑っている時や風邪による二次感染を防ぐ目的が挙げられます。このような目的に対しては一定の効果が期待できます。ご存知の方も多いかもしれませんが、一般的な風邪を引き起こすウイルスに対して、クラリス200のような抗生物質は効果がありません。ウイルスと細菌は別であるため、細菌に対して効果があるクラリスもウイルスに対しては全く効果がありません。しかし、風邪によって炎症を起こし、結果として細菌感染につながるケースや、ウイルス性の風邪以外にも細菌感染の疾患が疑われる場合には抗生物質が効果的であるため、医師が処方するケースがあります。一般的な風邪には効果がないため、風邪を引いた時にクラリスが手元に残っていた、という場合でも自己判断でクラリスを使用するようなことはやめましょう。
クラリス錠を膀胱炎の時に処方された経験がある方も中にはいるかと思いますが、こちらも場合によっては効果が期待できます。前述の通り、クラリスは尿道炎には適応があるものの、厳密に言うと膀胱炎には適応がありません。また、膀胱炎で最も原因菌として挙げられる大腸菌に対しては、あまり効果が期待できません。従って、膀胱炎で最初に使われる薬としては適していません。しかし、大腸菌を疑って使用した薬で効果が見られなかった場合などは、他の菌が原因の可能性があり、クラリスで効果がある細菌が原因と疑う場合に、医師によってはクラリスを処方するケースがあるようです。
クラリス錠をクラミジア感染に使うのは比較的よく見られるケースと言えます。クラリスの適応疾患にもクラミジア属が明記されており、適応疾患でも子宮頸管炎の記載があります(子宮頸管炎の原因菌の一つがクラミジアです)。クラミジア感染に限らない話ですが、クラリス錠などの抗生物質が処方された場合は、症状が治った場合でも必ず処方された分だけ飲みきるのが完治につながる治療法です。症状が治ったからといって薬を中止すると、体内に残っていた細菌が再度増殖するリスクがあるためです。必ず処方された日数を飲みきり、完治を目指しましょう。
クラリス錠200のマイコプラズマへの使用
クラリスはマイコプラズマ肺炎に対して優先的に使用される第一選択の薬の一つです。
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011ではマイコプラズマ肺炎に対する治療ではクラリスなどのマクロライド系の抗生物質を第一選択として推奨しています2)。その理由として、マクロライド感性の肺炎マイコプラズマに対するマクロライド系薬の最小発育阻止濃度(MIC)は極めて低値であり、治療終了時には気道から除菌されるという点が挙げられています。最小発育阻止濃度(MIC)が極めて低値ということは、抗生物質が少ない量でも非常に高い効果を得られるということを意味し、クラリスなどのマクロライド系が、マイコプラズマに対して非常に効果的ということになります。
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は細菌のひとつであり、特徴として、他の細菌が通常持っている細胞壁という組織を持ちません。そのため、細菌の細胞壁をターゲットとするペニシリン系(サワシリン、ワイドシリン、パセトシンなど)、セフェム系(フロモックス、メイアクトなど)などの抗生物質では効果がない細菌です。
感染は飛沫感染と接触感染により、濃厚接触が必要とされているため、感染拡大の速度は遅いとされています。マイコプラズマの潜伏期は2〜3週間では感染後は発熱、頭痛、咳などの風邪のような症状を特徴とします。特に咳に関しては3〜4週間と長く続くことが知られており、最初は乾いた咳で徐々に痰が絡むような湿性の咳になります3)。
クラリスをマイコプラズマに対して使用する場合は、服薬期間は10日間ととされており、効果がある場合は2〜3日で解熱すること多いとされています。
このようにクラリスは従来はマイコプラズマに対して非常に効果的と考えられていましたが、近年はマイコプラズマのクラリスを含めたマクロライド系抗生物質に対する耐性が問題となっています。
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011ではマクロライド耐性マイコプラズであることも考慮し、マクロライド治療で48時間以上の発熱が持続した場合はトスフロキサシン(オゼックス)もしくはミノサイクリン(ミノマイシン)を使用することが推奨されています2)。
ただし、肺炎マイコプラズマ感染症は自然治癒傾向があるため、マクロライド耐性株による肺炎マイコプラズマ肺炎の一部の症例は、効果が期待できないマクロライド系薬を投与して
も投与後 2〜3 日以内に解熱することや、マクロライド系薬の前投薬与がないときのマイコプラスマの耐性率は 50%以下(実際にはマクロライド耐性でない場合が50%以上)であるということも確認されているため、第一選択はあくまでマクロライド系となります。
上記のようにマクロライド耐性マイコプラズマに対してもマクロライドで最終的に治癒するようなことが起きる理由の一つとして、マイコプラズマによる炎症は、細菌による直接障害よりも、人に免疫を司っているタンパク質のインターロイキン(IL)のうちIL-8、IL-18などによる免疫反応が主要因と考えられるためです。近年の研究では、マクロライド系の抗生物質には抗菌作用の他に、免疫系に影響を与えることがわかっており、抗菌作用はあまり効果がなくても、免疫作用によりマイコプラズマに対して作用することが示唆されています4)。
このように、クラリスはマイコプラズマに対して耐性の問題があるものの、現段階では最も使用される薬の一つとされ、非常に頼りにされています。
なお、マイコプラズマ感染後の登園・登校の基準は、熱や咳などの主要な症状が改善すれば可とされていますが5)、可能であれば医師と相談しながら決めるのが望ましいでしょう。
2) 小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2011
3) 国立感染症研究所 http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html
4) 門田淳一 ほか; マクロライド系薬の新しい使い方; 南江堂, 2015
5) American Academy of Pediatrics. 2012 Report of the committee on infectious
diseases. 29th eds, p520,801, 2012.
クラリス錠200のインフルエンザの使用
クラリスなどのマクロライド系抗生物質は、インフルエンザに対しても使用されるケースがあります。
インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスに対して、クラリスは直接の作用はありません。クラリスをインフルエンザに使用する理由の一つが、インフルエンザに続発する細菌の二次感染を防ぐ目的が挙げられます。
そして、別の理由として近年注目されているのが、クラリスの免疫賦活化作用です。
インフルエンザの治療では一般的にタミフルやイナビルなどの抗インフルエンザ薬を使用しますが、この抗インフルエンザ薬を使用すると、感染時の獲得免疫が不十分となるなど、翌年以降の再感染率が高くなります。この抗インフルエンザ薬にクラリスを併用すると、その免疫賦活化作用により抗インフルエンザ薬の使用によって免疫が不十分になる欠点をカバーすることが確認されました4)。
このようにクラリスはインフルエンザウイルスに対する直接の効果はなくても、その免疫作用によってインフルエンザに対して使用されることがあります。
4) 門田淳一 ほか; マクロライド系薬の新しい使い方; 南江堂, 2015
クラリス錠200の慢性的な副鼻腔炎に対する使用
クラリス錠200は慢性的な副鼻腔炎に対しても近年効果があると考えられています。
クラリスには抗生物質として細菌の増殖を防ぐ作用の他に、人の免疫にも影響があることがいくつかの研究でわかってきました。
実際に慢性副鼻腔炎で使用する場合は、クラリスを少量で長期で使用し、効果を見ることが一般的です。
慢性副鼻腔炎で処方された場合は、上記のような使用法もあることを理解の上、使用してみましょう。
クラリス錠200の薬の副作用|発疹、下痢、しびれ、胃痛、頭痛、吐き気、眠気など
クラリス錠は副作用の頻度もあまり高くない安全な薬の一つです。
添付文書によると副作用の頻度は、2万人程度を調査した結果で、0.8%程度、その中でも頻度の高いものは発疹の0.18%、下痢の0.14%という結果でした。
このようにクラリスは頻度が高い副作用でも1%未満のものがほとんどであり、副作用自体が非常に少ないことが伺えます。
そのほかにも吐き気や頭痛、しびれ、胃痛(胃部不快感)なども報告されていますが、いずれも頻度は高くないと言えます。
眠気についても報告されているものの、こちらも0.1%未満とされており、あまり心配はいらないと言えるでしょう。
クラリス錠200の妊婦(妊娠中)と授乳中における薬の影響
クラリス錠の妊娠中の使用、授乳中の使用と薬の影響についても確認していきたいと思います。
クラリス錠200は妊娠中の使用は推奨はされてないが・・・
クラリス錠200の妊娠中の使用は推奨されてないものの、状況に応じて使用することは可能と考えられます。
添付文書では妊娠中の使用は禁止されておらず、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」という注意喚起があり、使用は医師の判断に委ねられています。
動物実験では非常に高い用量で胎児動物への影響が確認されているようですが、人においては重大な胎児への影響は報告されておらず、ほとんどのケースで問題なかったことが確認されています。
医師に妊娠中であることを告げた上で処方された場合は、服用しても問題ないと言えるでしょう。
クラリス錠200は授乳中でも使用は可能と考えらえる
クラリス錠200は授乳中に関しても比較的安全に使用出来る薬と考えられます。
添付文書では「ヒト母乳中へ移行することが報告されているので、授乳中の婦人には、本剤
投与中は授乳を避けさせること。」と注意喚起されているものの、国立成育医療研究センターの見解では「安全に使用できると思われる薬」に分類されている薬の一つです5)。
クラリスは小児用の錠剤や粉薬も使われている薬であり、乳幼児でも使用することがあるため、母乳経由で乳児が摂取しても、大きな影響はあまりないと考えられます。
授乳中に関しても医師に伝えた上で処方された場合には安心して使用出来る薬と言えるでしょう。
5) 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
(https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist.html)
クラリス錠200の薬価とジェネリック医薬品
クラリス錠200の薬価は1錠あたり75.1円とされています。
一般的には1日2錠使用するケースが多いので、その場合の1日薬価は150.2円という計算になります。
クラリス錠には数多くのジェネリック医薬品が販売されており、クラリスロマイシン錠やマインベース錠といった名称で販売されています。安いものでは33.5円という薬価のものがあり、クラリス錠200の半額以下であるため、ジェネリック医薬品変更することは経済的と言えるでしょう。
クラリス錠200の市販の販売有無
クラリス錠200の成分を含む薬は市販で買うことはできません。必ず処方箋が必要となる薬であるため、医師の適切な診断を受けて処方してもらうようにしましょう。
また、手元にクラリスが残っているケースや知人や家族からクラリスをもらって自己判断で使用するのはリスクが高い種類の薬です。自己判断で使用するのはやめましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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