シプロキサンの内服薬であるシプロキサン錠200・100について、略語や小児への使用に関する特徴、膀胱炎や風邪などに対する効果、用法用量などの使い方、副作用、飲み合わせ、薬価やジェネリックなどについて添付文書やインタビューフォーム等から解説していきます。
Contents
シプロキサンの特徴|内服と注射がある薬
シプロキサンはシプロフロキサシンを成分とし、ニューキノロン系に分類される抗菌薬の一つです。
その特徴として幅広い菌種に対して効果がある点が挙げられ、また、内服の薬であるシプロキサン錠200、シプロキサン錠100の他、注射剤もある抗菌剤です。
今回は主に内服薬であるシプロキサン錠200、シプロキサン錠100について確認していきます。
シプロキサンの略語はCPFX
抗生物質や抗菌剤は一般にその成分に基づいて略語で表示されることがあります。
シプロキサンの略語はシプロフロキサシン(ciprofloxacin)の成分名から取ってCPFXとされています。
シプロキサン錠は小児には使用できない
シプロキサンは原則として小児に対しては使用できません。
シプロキサンは禁忌(使用できない)の項目に「小児」が設定されており、基本的に子供には使用されない薬です。
シプロキサンに限らず、キノロン系の薬はあまり小児対して使用することはありません。その理由として、小児に対してはキノロン系の薬は関節毒性をもたらす可能性があることが知られているためです。
キノロン系でもバクシダールやオゼックス細粒に関しては小児に使用される薬となりますが、これらに関しても他の抗生剤や抗菌剤で効果がない場合のみという条件があります。
幼若ラット及び幼若イヌにシプロフロキサシンを反復経口投与した場合,関節への影響が認められていることより,幼児への投与により関節毒性を発現する可能性があるので,乳幼児,小児には投与しないこと.
シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg インタビューフォーム
ただし、シプロキサンの小児に対する使用の例外として、炭疽の感染した場合の治療では、治療上の有益性を考慮して投与が可能となっています。
また、シプロキサンの注射に関してはさらに例外があり、複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、のう胞性線維症の場合も禁忌から外れます。
シプロキサンの効果
シプロキサン錠は咽頭炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症の他、膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎などの泌尿器系、中耳炎、副鼻腔炎といった耳鼻科系など幅広い感染症に対して効果がある薬です。
シプロキサン錠の効能効果の詳細は以下のとおりです。
表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症,リンパ管・リンパ節炎,慢性膿皮症,外傷・熱傷及び手術創等の二次感染,乳腺炎,肛門周囲膿瘍,咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎,肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染,膀胱炎,腎盂腎炎,前立腺炎(急性症,慢性症),精巣上体炎(副睾丸炎),尿道炎,胆のう炎,胆管炎,感染性腸炎,バルトリン腺炎,子宮内感染,子宮付属器炎,涙のう炎,麦粒腫,瞼板腺炎,中耳炎,副鼻腔炎,炭疽
シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサンの作用機序は細菌のDNA合成阻害
シプロキサンを含めたキノロン系の抗菌剤が細菌に作用する機序は、細菌のDNA合成を阻害することによるものです。
シプロキサンは細菌のDAN複製に関与するDNAジャイレースを阻害し、細菌を死滅させる効果をもたらします1)。
DNAジャイレースは細菌には存在しますが、ヒトには存在しないため、ヒトへの毒性は少なく体の中の細菌に対して選択的に作用します。
1) シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサンの効果は63.6%〜100%の有効率
シプロキサンの効果は実際の患者さんに対する臨床試験において確認されています1)。
実際の疾患に対する有効率は領域によっても異なりますが、その結果は63.6%〜100%の有効率が確認されています。
最も使用される領域の一つである呼吸器感染症では、全体で77.1%の有効率であり、主な疾患別では咽頭・喉頭炎に対しては93.2%、急性気管支炎に対しては75.4%、肺炎に対しては81.6%という有効率でした。
尿路感染症の領域では全体では85.7%の有効率であり、臨床試験で最も多くの症例に使用された膀胱炎に対しては85.0%の有効率、腎盂腎炎に対しては80.5%の有効率となっています。
耳鼻科領域感染症においては全体では70.2%の有効率、他の抗菌剤と同様に中耳炎ではやや低いものの64.4%の有効率、副鼻腔炎に対しては83.3%の有効率となっています。
皮膚科領域では全体では88.2%の有効率であり、症例数は17例と少ないもののリンパ管・リンパ節炎に対しては100%の有効率が確認されています。
眼科領域でも使用されており全体では81.6%の有効率、涙のう炎では63.6%とやや低い有効率であるものの、いわゆるものもらいである麦粒腫に対しては85.7%の有効率が確認されています。
領域 | 有効率 |
呼吸器感染症 | 77.1% |
尿路感染症 | 85.7% |
胆道感染症 | 77.8% |
腸管感染症 | 97.8% |
耳鼻科領域感染症 | 70.2% |
皮膚科領域感染症 | 88.2% |
外科領域感染症 | 78.4% |
眼科領域感染症 | 81.6% |
産婦人科領域感染症 | 84.6% |
1) シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサンが風邪に使用される理由は
シプロキサン錠が風邪に処方される理由は①細菌による疾患を疑う場合、②ウイルス感染の悪化による細菌の二次感染の対処、の2点が主に考えられます。
そもそも風邪はほとんどのケースでウイルスが原因であり、シプロキサンが効果をもつのは細菌であるため、ウイルスには効果がありません。あくまでシプロキサンは細菌に対して処方されるものです。
①は風邪のような症状がでる疾患でも細菌が原因となるケースがあり、レンサ球菌属の細菌は溶連菌とも呼ばれしばしば咽頭炎などを起こし風邪のような症状がでます。肺炎球菌やインフルエンザ菌も完全初期では風邪のような症状を引き起こします。このような細菌の感染が疑われる場合には抗菌剤、抗生物質が効果的と考えられます。
②はウイルス感染の風邪と判断しても悪化により細菌の二次感染が懸念される場合です。風邪による炎症などが原因で二次的に細菌にも感染してしまうケースがあり、これらの可能性が高い場合に予め抗菌剤、抗生剤が投与されることがあります。ただし、こちらは現在は医師が処方を控えるケースも多くなっているようです。
現在は単なる風邪でシプロキサンのような抗菌剤が処方されるケースは少なくなっていますが、処方された場合には、医師が細菌感染や風邪の悪化を懸念して処方されたと考えられるため、指示された日数を飲みきるようにしましょう。
シプロキサンの用法用量と使い方
シプロキサン錠の使い方として、シプロキサン200の場合は1回1錠、シプロキサン100の場合は1回に1〜2錠を、1日2〜3回使用します。
シプロキサン錠の用法用量の詳細は以下のとおりです。
シプロフロキサシンとして,通常成人1回100~200mgを1日2~3回経口投与する.
なお,感染症の種類及び症状に応じ適宜増減する.
炭疽に対しては,シプロフロキサシンとして,成人1回400mgを1日2回経口投与する.シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサン錠を腎機能が低下している患者に使用する場合は
シプロキサン錠は「高度の腎障害がある患者」に関しては、「慎重投与」として注意喚起されています1)。
投与の有無や投与量に関しては、処方医の判断になりますが、腎機能障害の程度に応じて量を調節したり、投与間隔を通常よりも長くとるケースがあります。
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
2. 高度の腎障害のある患者[高い血中濃度が持続するので,投与量を減量するか,あるいは投与間隔をあけて使用すること.(「薬物動態」の項参照)]シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
キノロン系の薬は一般的に薬が腎臓から排泄されることが多く、腎機能が低下していると薬が思うように排泄されずに高い濃度のまま薬の中に残り、効果が通常より強くなったり、副作用が出やすくなる可能性があります。
シプロキサン錠の場合は腎機能の指標のひとつであるクレアチニンクリアランス(Ccr)に応じた薬の血中濃度半減期のデータが示されています。
シプロキサン錠200mgを通常の患者さんに使用した場合、血中での薬の濃度が半分になる時間(半減期)は3.68時間とされています。これが軽度腎機能障害(Ccr : 64.2 mL/min)では4.26時間、中等度〜高度腎機能障害(Ccr : 25.0 mL/min)では5.22時間、高度腎機能障害(Ccr : 9.56 mL/min)では9.56時間という結果1)であり、このことから腎機能障害の程度に応じて半減期が長くなり、薬がより長く体の中に残ることが想定されます。
このように腎機能は薬の効果や副作用の出やすさに大きな影響を与える可能性があるため、シプロキサンに限らず、腎機能障害を持っている場合は必ず医師や薬剤師等に伝えておく必要があります。
1) シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサンの副作用
シプロキサン錠は承認時の臨床試験および市販後の使用成績調査にて、副作用の発現率が2.87%という結果が得られています1)。
主な副作用は発疹(0.20%)、胃不快感(0.21%)、下痢(0.16%)、嘔気(吐き気;0.16%)、食欲不振(0.14%)等とされています。
これらの副作用のうち、発疹などの過敏症に分類される副作用や、肝機能の検査値、血液の検査値の異常が起きた場合は、基本的に使用の中止が一般的な対処法となるため、過敏症が疑われる副作用が出た場合は速やかに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。また、検査値の異常を感知するために指示された検査や予め予定していた血液検査などは必ず受けるようにしましょう。
なお、シプロキサンで下痢や軟便の副作用が出る理由は、腸内細菌の常在菌に対しても抗菌剤が効果を発揮し、腸内の細菌のバランスが崩れてしまうことにあります。抗菌剤の使用をやめれば速やかに回復するのが一般的です。したがって下痢や軟便の副作用がでても基本的には大きな心配はいりませんが、あまりに症状がひどい場合は医師に相談しましょう。
1) シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサンの飲み合わせ
シプロキサン錠には絶対に一緒に使用できない併用禁忌の薬剤や飲み合わせに少し注意が必要な併用注意の薬があります。痛み止めのロキソニンや牛乳といった身近な薬や食品も併用注意に該当するため注意が必要です。
シプロキサン錠の併用禁忌
シプロキサンはケトプロフェンの成分(皮膚外用剤を除く)、チザニジンの成分とは一緒に使用することはできません1)。
ケトプロフェンとは痛み止めの一種であり、カピステン筋注などが該当します。禁忌である理由は併用することで痙攣が起きることがあるとされています。なお、ケトプロフェンは痛み止めの湿布であるモーラステープの成分でもありますが、皮膚外用剤については例外で併用禁忌ではありません。
もう一つの禁忌成分であるチザニジンは筋緊張緩和剤であり、テルネリンの製品名で肩こりや腰痛に使われたりします。禁忌の理由は併用することでチザニジンの濃度が高くなり、血
圧低下、傾眠、めまい等が現れるた報告があるためです。
1) シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサン錠の併用注意
併用注意とは併用することが禁止されていないものの、併用する場合には注意が必要とされている薬剤や食品で、シプロキサン錠の併用注意には数種類のものが該当します1)。
シプロキサンの併用注意一覧
成分名等 | 代表的な薬剤等 |
テオフィリン、アミノフィリン水和物 | テオドール、テオロング |
カフェイン | |
フェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤 | ロキソニン、ボルタレン |
シクロスポリン | ネオーラル |
ワルファリン | ワーファリン |
スルホニル尿素系血糖降下剤 | アマリール、オイグルコン |
ロピニロール塩酸塩 | レキップ |
メトトレキサート | リウマトレックス |
Al又はMg含有の制酸剤等、鉄剤、Ca含有製剤、Mg含有製剤 | |
カルシウムを多量に含有する飲料 | 牛乳 |
クラスIA抗不整脈薬、クラスⅢ抗不整脈薬 | アンカロン、シベノール |
セベラマー塩酸塩、炭酸ランタン水和物 | |
クロザピン、オランザピン | クロザリル、ジプレキサ |
シルデナフィルクエン酸塩 | バイアグラ |
フェニトイン | アレビアチン、ヒダントール |
これらの中でも特に身近なものとして、痛み止めや解熱剤として使用されるロキソニンやカルシウムを多量に含有する飲料である牛乳が挙げられます。
ロキソニンは処方薬の他、近年は市販薬としても販売されており、使用経験のある方を多くいるかと思います。また、ロキソニン以外の痛み止めでもイブプロフェンなどは同様に注意が必要であり、イブプロフェンも市販薬の痛み止めによくふくまれている成分の一つです。一般の人では併用注意に該当する成分であるかどうかを調べるのは難しい面もあるため、シプロキサンを使用している期間は市販の痛み止めは基本的に使用せず、痛み止めや解熱剤が必要な場合は飲み合わせを確認してもらった上で処方薬の痛み止めをもらうのが安全と言えます。これらの解熱鎮痛剤が併用注意の理由は、痙攣が起きることがあるとされています。
牛乳などのカルシウムを多量に含有する飲料で注意が必要な理由は、同時に接種することでシプロキサンの吸収が悪くなり、効果が弱くなる可能性があるためとされています。シプロキサンを使用する場合は牛乳を飲まない、もしくは飲む時間をずらすようにしましょう。
自分が複数の薬を使用している場合に、薬の飲み合わせについて気をつけるには、クリニックや薬局においてお薬手帳を提示するのが最も有効な手段の一つです。必ず持ち歩くようにし、持っていない場合は薬局にて発行してもらうようにしましょう。
1) シプロキサン錠100mg/ シプロキサン錠200mg 添付文書
シプロキサンの薬価とジェネリック
シプロキサン錠の2016年4月改定(2018円3月まで)の薬価はシプロキサン錠200mgが1錠あたり85.2円、シプロキサン錠100mgが1錠あたり48.6円となっています。
仮にシプロキサン錠200を1回1錠、1日2回、1週間使用する場合の価格は、
85.2円 × 2回 × 7日間 = 1192.8円
となり、ここから一定の割合の負担(3割負担等)になります。上記は簡易的な計算であり、実際には薬価は1日ごとの計算になる点や、クリニックの診察料、処方料、薬局の調剤料など他の料金がかかる点にご注意ください。
なお、シプロキサン錠にはジェネリック医薬品が販売されています。
シプロキサン錠200mgのジェネリック医薬品はシバスタン錠200mgやシプロフロキサシン錠200mgといった名称で販売されており、薬価はシプロキサン錠の半額以下の14.6〜31.8円となっています。シプロキサン錠100mgのジェネリック医薬品もシバスタン錠100mgやシプロフロキサシン錠100mgの名称で販売されており、11.4〜31.6円の薬価でこちらもシプロキサン錠より安価な薬価で販売されています。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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