オーグメンチンについて、特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中・妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での販売について添付文書等から解説していきます。
Contents
オーグメンチンの特徴
オーグメンチンは抗生物質であるアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤という抗生物質の効き目をよくするクラブラン酸カリウムという成分が配合された薬です。
咽頭炎や気管支炎、膀胱炎、中耳炎など幅広い感染症に使用されます1)。
クラブラン酸をアモキシシリンと配合することにより、広い抗菌スペクトル、強力な殺菌作用を示し、アモキシシリン耐性菌にも強い抗菌力を示す、とされています2)。
1) オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS 添付文書
2) オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS インタビューフォーム
オーグメンチンの略語はAMPC/CVA
抗生物質や抗菌剤は一般にその成分に基づいて略語で表示されることがあります。
オーグメンチンの略語はアモキシシリン/クラブラン酸カリウム(amoxicillin/clavulanic acid)の成分名から取ってAMPC/CVAとされています。
オーグメンチンの効果
オーグメンチンは咽頭炎や気管支炎、膀胱炎、中耳炎をはじめとした幅広い感染症に対して使用される薬です。
オーグメンチンの効能効果の詳細は以下の通りです。
〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、淋菌、大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属、インフルエンザ菌、バクテロイデス属、プレボテラ属(プレボテラ・ビビアを除く)
〈適応症〉
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、淋菌感染症、子宮内感染、子宮付属器炎、中耳炎オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS 添付文書
オーグメンチンの効果の作用機序
オーグメンチンの作用機序は、アモキシシリンによる細菌がもつ細胞壁という構造の合成阻害によるものと、クラブラン酸カリウムによる抗生物質を分解してしまうβ-ラクタマーゼという酵素の阻害です。
細胞壁は人にはない構造であり、細菌のみが持っている構造のため、アモキシシリンは人に対しては毒性が少なく、細菌に効果的に作用します。ただし、アモキシシリンなどのβ-ラクタム系に分類される抗生物質に対して、耐性をもつ細菌も確認されており、その耐性の機構のひとつとしてβ-タクタム系を分解してしまう酵素のβ-ラクタマーゼが知られています。クラブラン酸カリウムはこのβ-ラクマーゼを阻害することによって、アモキシシリンが効きにくい細菌に対しても、本来の抗生物質の作用を引き出す役割を担います。
オーグメンチンの臨床成績
オーグメンチンの効果は実際の患者さんに対する臨床試験において確認されています。
実際の疾患に対する有効率は領域によっても異なりますが、その結果は66.7%〜98.3%の有効率となっています1)。
主な疾患に対する効果として、咽頭炎に対しては87.0%の有効率、膀胱炎に対しては81.7%の有効率、中耳炎に対しては68.1%の有効率などが確認されています。
領域 | 疾患名 | 効果判定 有効率(%) |
浅在性化膿性疾患 | 毛のう炎・せつ・せつ腫症・よう | 82.5 |
蜂巣炎・リンパ管炎 化膿性爪囲炎 |
85.7 | |
皮下膿瘍 感染性粉瘤 |
87.0 | |
呼吸器感染症 | 慢性気管支炎 | 79.0 |
気管支拡張症(感染時) | 66.7 | |
慢性呼吸器疾患の二次感染 | 78.8 | |
咽喉頭炎 | 87.0 | |
扁桃炎 | 89.1 | |
急性気管支炎 | 81.6 | |
尿路感染症 | 腎盂腎炎 | 72.8 |
膀胱炎 | 81.7 | |
淋疾 | 98.3 | |
産婦人科領域感染症 | 子宮付属器炎 | 76.9 |
子宮内感染 | 79.2 | |
耳鼻科領域感染症:中耳炎 | 68.1 | |
合計 | 82.9 |
1) オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS 添付文書
オーグメンチンの使い方
オーグメンチンにはオーグメンチン配合錠125SSとオーグメンチン配合錠250RSの2種類の規格があり、オーグメンチン配合錠125SSの場合は1回2錠、オーグメンチン配合錠250RSの場合は1回1錠を、1日3〜4回使用するのが基本的な使い方となります。
なお、食後、食前のどの規定はありません。
オーグメンチンの用法用量の詳細は以下の通りです。
オーグメンチン配合錠125SS
通常成人は、1回2錠、1日3~4回を6~8時間毎に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
オーグメンチン配合錠250RS
通常成人は、1回1錠、1日3~4回を6~8時間毎に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS 添付文書
腎機能障害がある場合には慎重に使用
オーグメンチンの成分は共に腎臓から排泄される性質がある成分のため、腎機能が低下している場合には薬の効果が長く続くようなケースもあります。
したがって、腎機能障害がある場合には医師の判断により、投与間隔の調節がされる場合があります。
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
3.高度の腎障害のある患者[血中濃度が持続するので、投与間隔をあけて使用すること。]オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS 添付文書
オーグメンチンを小児に使用する場合はクラバモックスも
オーグメンチンは錠剤のみが販売されており、基本的には15歳以上の患者さんで使用することが想定されている薬です。
15歳未満の小児に対してはあまり使用経験がなく、小児用量も設定されていません。
小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS 添付文書
オーグメンチンの成分を低年齢の小児に使用したい場合には、オーグメンチンと同じ成分を含む粉薬として、クラバモックス小児用配合ドライシロップが販売されています。
クラバモックスとオーグメンチンの違いは、小児に使用するか大人にしようするかの違いのほか、アモキシシリンとクラブラン酸カリウムの配合割合の違いがあります。
オーグメンチンはアモキシシリンとクラブラン酸カリウムが2:1の割合で配合されているのに対し、クラバモックスは14:1の割合となっています。
オーグメンチンとサワシリンを併用する理由は
オーグメンチンとサワシリンの2種類の抗生剤が併用されるケースがありますが、これは2剤を併用することにより、抗菌作用を高める働きを期待するものです。
サワシリンの成分はアモキシシリンであるため、オーグメンチンに含まれる抗生物質の成分と同じものとなります。オーグメンチンとサワシリンを併用するメリットは、アモキシシリンの成分を高用量で使用し、かつオーグメンチンに含まれるクラブラン酸カリウムによって、単純にサワシリンのみを高用量で使うよりも効果的に細菌に作用することが期待できます。
オーグメンチンの副作用
オーグメンチンの主な副作用は消化器症状(悪心、嘔吐、下痢、軟便、腹痛等)が2.12%、皮膚症状(発疹、蕁麻疹等が0.32%、肝機能検査値異常(AST(GOT)、ALT(GPT)上昇等が0.38%、血液検査異常(好酸球増多等が0.11%とされています1)。
オーグメンチンは体内の細菌に対して殺菌的な効果を発揮しますが、腸内の環境を整えている細菌に対しても影響を及ぼすことがあり、下痢が起こることはやむを得ない面もあります。オーグメンチンの使用を止めればほとんどのケースで回復するため、大きな心配は要りません。
ただし、あまりに症状がひどい下痢が続く場合は医師に相談しましょう。また、日常的に胃腸が虚弱な体質の方などでは医師に相談すると整腸剤を処方してもらえるケースもあります。必要に応じて医師に相談しましょう。
1) オーグメンチン配合錠125SS/ オーグメンチン配合錠250RS 添付文書
オーグメンチンの飲み合わせ
オーグメンチンは他の薬との飲み合わせに関して、併用に注意が必要な薬がいくつかあります1)。
併用注意が必要なものは以下の通りです。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
プロベネシド | ベネシッド |
ワルファリン | ワーファリン |
経口避妊薬 | トリキュラー、マーベロン |
ミコフェノール酸モフェチル | セルセプト |
上記以外では、例えば風邪で使うときにロキソニンやカロナールなどの解熱鎮痛薬、炎症を抑えるトランサミン(トラネキサム酸)、咳を抑えるメジコン、フスコデ、アストミン、たんの切れをよくするムコダイン、ムコソルバン、鼻水を抑えるアレロック、アレグラ、ザイザルなどはいずれも飲み合わせは問題がなく、併用可能な薬剤となります。
オーグメンチンの薬価、ジェネリック
オーグメンチンの2018年4月改定時点の薬価はオーグメンチン配合錠125SSで1錠あたり25.5円、オーグメンチン配合錠250RSで1錠あたり36.1円となっています。
また、オーグメンチンにはジェネリック医薬品は販売されていません。
オーグメンチンの市販での使用
オーグメンチンの成分を含む薬は市販で買うことはできません。必ず処方箋が必要となる薬であるため、医師の適切な診断を受けて処方してもらうようにしましょう。
また、手元にオーグメンチンが残っているケースや知人や家族からオーグメンチンをもらって自己判断で使用するのはリスクが高い種類の薬です。自己判断で使用するのはやめましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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