タケキャブ(成分名:ボノプラザン)は近年発売された(発売日:2015年2月26日)新しい作用をもつ胃潰瘍治療薬です。その効果は従来の薬よりも強力で、即効性や持続性、高い除菌力などの特徴を持った薬です。このタケキャブについてその効果や特徴、除菌での使い方、副作用、タケプロンとの違い、薬価、粉砕の可否、長期処方などについて添付文書やインタビューフォームなどから解説していきます。
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タケキャブの特徴は即効性と持続性、高い除菌率と誰にでも効きやすい
タケキャブは従来の胃潰瘍治療薬の主流であったタケプロンなどのプロトンポンプインヒビター(PPI)と呼ばれる系統の薬の改良版と言われています。
その特徴として①即効性、②持続性、③高い除菌率、④誰にでも効きやすいといった特徴を持ちます。
①タケキャブの即効性
タケキャブは従来のPPIよりも即効性があるとされています。
その理由はタケプロンなどのPPIは酸によってその効果を発揮できるようになるという過程を経る必要があったのに対し、タケキャブはそのような過程が必要なく、体の中に取り込まれればそのままの状態で効果を発揮できるという長所があります。
このような理由からタケキャブは効果が速く出る即効性を持った薬剤となります。
②タケキャブの持続性
タケキャブは即効性に加えて持続性もあるとされています。
その理由はタケプロンなどの従来のPPIは酸に対して不安定という性質も持っており、体の中に取り込まれても長くとどまりにくいという欠点がありましたが、タケキャブはこの点も改善されており、酸に強く従来のPPIよりも長くとどまれるようになっています。
この点からタケキャブは持続性という特徴も併せ持っています。
③タケキャブは高い除菌率を持つ
タケキャブはヘリコバクター・ピロリの除菌に対しても使用される薬剤です。そしてその効果はタケプロンなどの従来のPPIよりも高い除菌率を示しています。
通常の除菌療法で使用される抗生物質のアモキシシリンとクラリスロマイシンに加えてタケプロンの成分を使用した患者さんでは除菌率が75.9%であったのに対し、タケキャブを用いた場合は、除菌率が92.6%であったという結果が得られています。
さらにタケプロンの成分を用いて除菌に失敗した患者さんに対して、タケキャブを用いた除菌療法を行った場合にも98.0%の除菌率であったという結果も得られており、タケキャブはヘリコバクター・ピロリの除菌に対して非常に高い効果が期待出来ると考えられます。
④タケキャブはばらつきが少なく誰にでも効きやすい
タケキャブはCYPと言われる肝臓の代謝酵素のうち、主にCYP3A4という代謝酵素で代謝されるとされています。
この代謝の仕方により、タケキャブは人によって効果のばらつきが少なく、誰に対しても一定の効果が得られるとされています。
タケプロンなどの従来のPPIは、代謝酵素のうち主にCYP2C19で代謝されます。しかし、このCYP2C19は人によってその代謝能力に差があり、特に日本人はその差が大きいと言われています。そのため、従来のPPIは日本人においては特に人によって効果に差があるとされていました。
タケキャブはこの点が改良され誰でも一定の効果が期待出来るようになっています。
タケキャブの効果と使い方
タケキャブの効果と使い方(用法用量)を確認していきましょう。
タケキャブの効能効果
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
○下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎タケキャブ錠10mg/タケキャブ錠20mg 添付文書
タケキャブは主に胃潰瘍、十二指腸潰瘍に使用され、ヘリコバクター・ピロリの除菌療法にも効果があるとされている薬剤です。使用する目的によって用量が異なります。
タケキャブの用法用量
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍の場合
通常、成人にはボノプラザンとして1回20mgを1日1回経口投与する。なお、通常、胃潰瘍では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までの投与とする。
○逆流性食道炎の場合
通常、成人にはボノプラザンとして1回20mgを1日1回経口投与する。なお、通常4週間までの投与とし、効果不十分の場合は8週間まで投与することができる。
さらに、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日1回経口投与するが、効果不十分の場合は、1回20mgを1日1回経口投与することができる。
○低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制の場合
通常、成人にはボノプラザンとして1回10mgを1日1回経口投与する。
○非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制の場合
通常、成人にはボノプラザンとして1回10mgを1日1回経口投与する。
○ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助の場合
通常、成人にはボノプラザンとして1回20mg、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びクラリスロマイシンとして1回200mg(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とする。
プロトンポンプインヒビター、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤投与によるヘリコバクター・ピロリの除菌治療が不成功の場合は、これに代わる治療として、通常、成人にはボノプラザンとして1回20mg、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びメトロニダゾールとして1回250mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。タケキャブ錠10mg/タケキャブ錠20mg 添付文書
上記の通り、タケキャブは通常は10mgか20mgを1日1〜2回使用することになります。使用する目的によって用量が変わってきますので、必ず指示された使用方法を確認して飲むようにしましょう。
タケキャブを除菌で使う場合は1回20mgを1日2回
タケキャブは前述の通りヘリコバクター・ピロリの除菌にも使用される薬です。
除菌の目的で使用する場合は、タケキャブを1回20mgを1日2回、その他にアモキシシリンとクラリスロマイシンを1日2回、7日間使用することになります。
除菌率も前述してます通り、92.6%と非常に高い成功率が報告されています。ただし、これは正しい使用方法で服用した結果であり、除菌療法では飲み方を誤ると除菌に失敗する可能が高くなります。
除菌目的で使用する場合は特に用法用量に気をつけ、確実な除菌につなげましょう。
なお、タケキャブの成分であるボノプラザンとアモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌で使用する薬が全て含まれているパックとして、ボノサップパックという薬もあります。このボノサップパックを使用しても基本的には同じ成分が同じ量含まれますので、効果は同じと考えてもらって大丈夫です。
タケキャブの副作用
タケキャブは副作用が多い薬ではありません。比較的よく見られる副作用は便秘や下痢、吐き気などの消化器症状とされていますが、それらの頻度も5%未満であり、経験することはほとんどないと考えられます。
また、重大な副作用もほとんど報告されてなく、偽膜性大腸炎等の重篤な大腸炎のみが注意喚起されています。血便や腹痛、頻回の下痢があらわれた場合にはすぐに医師に知らせる必要がありますが、こちらも頻度としてはかなり低いと考えられるため、まずは正しい用法用量で使用すれば副作用の心配はほとんどいらないでしょう。
ただし、タケキャブは成分が全く新しい分類となるため、未知の副作用がある可能性があるため、薬を使用して違和感を覚えた場合はなるべく早めに医師に相談するようにしましょう。
タケキャブとタケプロンの違い
タケキャブはタケプロンの後継品とも言われていますが、具体的な違いは前述の通り、その作用機序や代謝が異なるための即効性、持続性、効果の強さです。
即効性はタケプロンが酸によってその効果を発揮できるようになるのに対し、タケキャブその過程が必要ありません。
持続性はタケプロンは酸に対して不安定という性質も併せ持っているのに対し、タケキャブは酸に強く長く留まり持続性があると考えられています。
効果の強さは、タケプロンに関しては日本人で代謝能力の差が大きいとされているCYP2C19という代謝酵素によって主に代謝されるため、効果のばらつきが指摘されているのに対し、タケキャブは主にCYP3A4という代謝酵素で代謝されるため、ばらつきが少なく一定の強い効果がえられると考えられています。また、ヘリコバクターピロリの除菌に関してもタケプロンよりもタケキャブの方が高い除菌率が得られています。
上記の通り、タケキャブとタケプロンの違いとして、タケキャブの方が優れている面が多いと言えます。
タケキャブの薬価
タケキャブは新薬ということもあり、かなり高価な薬と言えます。
タケキャブと従来のPPIに関して、薬の価格である薬価を比較してみましょう。
薬剤名(成分名) | 薬価 |
タケキャブ20mg(ボノプラザン) | 240.20円 |
オメプラール20mg(オメプラゾール) | 128.90円 |
タケプロン30mg(ランソプラゾール) | 140.30円 |
パリエット10mg(ラベプラソール) | 115.70円※ |
ネキシウム20mg(エソメプラゾール) | 145.10円 |
※パリエットは20mgで使われるケースも多く20mgの薬価は218.90円
上記の通り、タケキャブの薬価はかなり高いですね。初期のPPIであるオメプラゾールと比較すると約2倍の高さになります。1日あたり100円以上違うので、1ヶ月分だと3000円以上の差となります。おそらく人によってはこの価格の差ほど効果の違いを感じない可能性も十分あります。従来のPPIでも十分な効果がある人は、無理に薬価の高いタケキャブを使用する必要はなく、あくまで、今までの薬で効果があまり見られない人が使用するべき薬といえるでしょう。
タケキャブの粉砕の可否
タケキャブは製薬会社の添付文書やインタビューフォームの範囲では粉砕ができない旨の記載はなく、粉砕は可能と考えられます。ただし、タケキャブを粉砕した後は、光の影響を受ける可能性が確認されています。
光安定性試験において、フィルムコーティングされた錠剤では光源のもとでも変化がなしという結果が得られたのに対し、有効成分の安定性に関しては、光源のもとでは類縁物質の増加という結果が得られており、粉砕後は成分が不安定になる可能性があります1)。
したがって、タケキャブを粉砕した場合は遮光して保存し、数日以内に早めに使用するのが良いと考えられます。
1) タケキャブ錠10mg/タケキャブ錠20mg インタビューフォーム
タケキャブは2016年3月から長期処方が可能に
タケキャブは新しい薬であったため、最近までは投薬日数制限がありましたが、2016年3月より長期処方が可能となりました。
投薬日数制限はタケキャブのような新しい作用をもつ薬が薬価収載(薬の値段が決まること)から1年間は最大でも1回で14日分しか処方できないという制限です。タケキャブは2015年2月に薬価収載され、2016年3月で1年を迎えたため、投薬日数制限から外れ、長期処方が可能となりました。
これにより1回の処方でも比較的長期間の処方ができるようになったため、クリニックに頻繁に通う手間がなくなったと言えるでしょう。
ただし、タケキャブに限らず薬を長期に使用していると現れる副作用なども稀にあります。長期処方の解禁によりクリニックに通う頻度が少なくなるかもしれませんが、薬を長期間使用していて少し違和感を感じるようなことがあれば定期の診察の際に必ず伝えるようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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