プロテカジンについて、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中・妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、ガスターとの違いなどについて添付文書等から解説していきます。
Contents
プロテカジンの特徴
プロテカジンはラフチジンを成分として含み、胃潰瘍、逆流性食道炎、胃炎などに対して効果がある薬です1)。胃酸を抑える薬の中でもH2ブロッカーに分類される薬であり、市販薬でも有名なガスターなどと同じグループに分類されます。
プロテカジンの特徴として、日中も酸分泌を抑制し、持続的な酸分泌抑制作用を示す点や、カプサイシン感受性知覚神経を介して胃粘液増加作用を示す特徴的な作用機序があります2)。また、主な代謝経路が肝臓であり、腎機能が低下している患者さんにも使いやすいという特徴もあります。
プロテカジンにはラフチジンの成分を5mg、10mg含んでいる通常の錠剤のプロテカジン錠5、プロテカジン錠10、口の中で溶け水なしでも服用できるプロテカジンOD錠5、プロテカジンOD錠10の種類があります。
1) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
2) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 インタビューフォーム
プロテカジンの効果
プロテカジンは胃潰瘍、逆流性食道炎、胃炎における胃粘膜病猿に対して効果がある薬です。
プロテカジンの効能効果の詳細は以下の通りです。
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎
○下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期
○麻酔前投薬プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
プロテカジンの作用機序
プロテカジンの主な作用機序はH2受容体と呼ばれる胃酸分泌を促進する受容体の阻害によるものです。
胃ではヒスタミンなどの物質により胃酸が分泌されます。プロテカジンはヒスタミンが結合するH2受容体を阻害することで胃酸が出ることを抑える作用があります。
また、プロテカジンはH2受容体阻害作用以外にもカプサイシン感受性知覚神経を介して胃粘液を増加させる作用があります。これは他のH2ブロッカーにはあまりない作用であり、プロテカジンの特徴的な作用のひとつです。胃粘液を増加させることは胃を保護することにつながるため、胃酸分泌抑制作用に加えて胃潰瘍や胃炎に対して効果的に作用することが期待できます。
プロテカジンの作用時間
プロテカジンの作用時間の参考になるデータとして、健康成人9例に対してプロテカジンを投与し、24時間胃内pHモニタリングをした結果が公表されています2)。
その結果では、就寝前 10mg 経口投与により胃内 pH は、投与2時間後にはpH5以上となり、10時間後までpH6~7の範囲で推移し、夜間の12時間においてpH3以上のホールディングタイムの割合が75.0%であった、という結果が得られています。pHは数値が高いほど胃酸が抑えられていると解釈できます。この結果からは使用後2時間後には一定の胃酸を抑える効果が得られ、さらにその作用は12時間程度は持続していることが想定されます。
2) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 インタビューフォーム
プロテカジンの実際の患者に対する効果
プロテカジンの効果は実際の人に対する臨床試験にて確認されています。
プロテカジンの臨床試験における効果は以下の通りであり、非常に高い治癒率、改善率が確認されています1)。
全般 改善度 |
自他覚症状 改善度 |
内視鏡判定 治癒率又は 改善率 |
|
胃潰瘍 | 93.0% (211/227) |
97.3% (213/219) |
76.2% (173/227) |
十二指腸潰瘍 | 96.8% (121/125) |
99.2% (130/131) |
88.8% (111/125) |
吻合部潰瘍 | 84.6% (11/13) |
100% (11/11) |
84.6% (11/13) |
急・慢性胃炎の胃粘膜病変 | 88.4% (152/172) |
89.5% (162/181) |
84.2% (144/171) |
麻酔前投薬 | 99.4% (178/179) |
また、逆流性食道炎に対しては、内視鏡治癒率として71.0%という効果が確認されています1)。
1) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
プロテカジンの使い方
プロテカジンは一般的に1回に10mgを1錠、1日に1〜2回使用するのが一般的な使い方となります。
プロテカジンの用法用量の詳細は以下の通りです。
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎
通常、成人にはラフチジンとして1回10mgを1日2回(朝食後、夕食後または就寝前)経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
○下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期
通常、成人にはラフチジンとして1回10mgを1日1回(夕食後または就寝前)経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
○麻酔前投薬
通常、成人にはラフチジンとして1回10mgを手術前日就寝前及び手術当日麻酔導入2時間前の2回経口投与する。プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
プロテカジンは腎機能障害者でも使いやすいH2ブロッカー
プロテカジンは尿中排泄率が投与量の約20%とされており1)、唯一の肝代謝型のH2ブロッカーとなります。腎機能障害者でも影響を受けにくいメリットがありますが、それでも腎障害のある患者さんは慎重投与に設定されており、特に透析患者に関しては血中濃度の上昇が報告されているため、腎機能の低下が指摘されている場合は必ず医師に伝えるようにしましょう。
1) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
プロテカジンの副作用
プロテカジンの市販後の調査に結果による主な副作用は、便秘(0.1%)、下痢(0.1%)であり、いずれの副作用も頻度は高くないと言えます。その他、頻度が比較的高いものでは臨床検査血の異常があり、ALT(GPT)上昇(0.3%)、AST(GOT)上昇(0.3%)、γ-GTP上昇(0.2%)であり1)、肝機能の検査値に注意が必要です。
全体的にあまり頻度が高い副作用は少なく、使いやすい薬の一つと言えます。
1) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
プロテカジンの飲み合わせ
プロテカジンには飲み合わせが悪い薬は基本的にありません。
製薬会社からも併用禁忌や併用注意に該当する薬剤は注意喚起されておらず1)、基本的にはどの薬とも併用することが可能と言えます。
ロキソニンなどの痛み止めなどと併用されることもよくあるケースと言えます。
1) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
プロテカジンの授乳中・妊娠中の使用
プロテカジンの授乳中・妊娠中の使用について確認していきます。
プロテカジンの授乳中の使用
プロテカジンを使用中は授乳はしないように注意喚起されています。
投薬中は授乳させないよう注意すること。[動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。]
プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
注意喚起されている理由は、授乳中のラットにて、乳汁中にプロテカジンの成分が移行することが確認されているためです2)。このデータではプロテカジンの成分を使用後、1時間後に乳汁中で最も高い濃度が確認されており、投与4時間後で検出限界以下の濃度になることが確認されていますが、特別な危険性が確認されているわけではありません。
愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、コメントとして使用可能とも不可とも言及していない内容です3)。
ヒト母乳への移行データがない。
授乳による乳児への有害事象の報告が見当たらない。「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
実際に授乳中にプロテカジンを使用するかは、処方医の先生の判断となります。プロテカジンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 インタビューフォーム
3) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
プロテカジンの妊娠中の使用
プロテカジンは妊娠中の使用に関しては、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、使用するかは医師の判断になります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 添付文書
プロテカジンの成分は動物実験にて、胎盤を通過することが確認されているものの、生殖発生毒性試験では催奇形性などは認められていません2)。
実際に妊娠中にプロテカジンを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。プロテカジンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) プロテカジン錠5/プロテカジン錠10 インタビューフォーム
プロテカジンの薬価、ジェネリック
プロテカジンの2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価は10mg錠で1錠あたり35.1円、5mg錠で20.8円となっています。通常の錠剤とOD錠とでは薬価に差はありません。
プロテカジンにはジェネリック医薬品が販売されており、ラフチジン錠の製品名で販売されています。薬価は10mg錠が1錠あたり20.3円、5mg錠が10.4〜12.3円とされており、プロテカジンよりも安価で手に入ります。
プロテカジンの市販での購入
プロテカジンの成分であるラフチジンは市販では販売されいません。ただし、同じH2ブロッカーの成分であるファモチジン、ロキサチジン、ニザチジンなどは市販でも販売されており、これらの市販薬を使えば比較的プロテカジンと近い効果が予想されます。
なお、市販薬のH2ブロッカーは処方薬の効能効果とやや異なります。
市販のガスター、イノセアワンブロック、アシノンの効能効果は「胸やけ、むかつき、胃痛、もたれ」となります。
プロテカジンとガスターの比較
プロテカジンと同じH2ブロッカーの薬の代表的なものにガスターがあります。
ガスターとプロテカジンの違いは、代謝排泄経路の違い、胃粘液増加作用の有無、市販薬の有無などがあります。
ガスターは主な排泄経路が腎臓であり、腎障害の人は向いていません。一方、プロテカジンは主な代謝経路が肝臓であるため、肝障害の人は不向きと言えます。また、ガスターは胃酸抑制作用の他に、胃粘膜血流の増加による粘膜防御因子増加作用が認められています。一方、プロテカジンには胃粘液を増加させることで防御因子を増加させる作用があります。また、ガスターは同じ販売名で市販薬が販売されているという点もプロテカジンと異なる点です。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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