マグミットの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中の使用、妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。
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マグミットの特徴|一般名は酸化マグネシウム
マグミットは酸化マグネシウムの成分を含み主に便秘症に対して使用される薬です1)。一般名は酸化マグネシウム製剤になります。
マグミットの特徴として、腸内で重炭酸塩となって緩下作用を発揮します2)。水分保持の作用機序からいわゆるくせになりにくい、慣れにくい種類の便秘薬であり、便秘症に対して最初に使われる薬の一つです。
マグミットには4種類の規格の錠剤(マグミット錠200mg、マグミット錠250mg、マグミット錠330mg、マグミット錠500mg)と粉薬であるマグミット細粒83%があります。
今回は主にマグミット錠に関して確認していきます。
1) マグミット錠 添付文書
2) マグミット錠 インタビューフォーム
マグミットの効果
マグミットは主に便秘症に対して使われますが、その他にも制酸剤として効果があり、さらに尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防としての効果もあります。
マグミット錠の効能効果の詳細は以下の通りです。
○下記疾患における制酸作用と症状の改善
胃・十二指腸潰瘍、胃炎(急・慢性胃炎、薬剤性胃炎を含む)、上部消化管機能異常(神経性食思不振、いわゆる胃下垂症、胃酸過多症を含む)
○便秘症
○尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防マグミット錠 添付文書
マグミットの作用機序
マグミットの緩下剤としての作用機序は、腸内での水分保持による排便の促進です。
マグミットは腸内で重炭酸塩となり腸内の浸透圧を高めて腸内腔へ水分を引き寄せ、腸内容を軟化させるとともに、腸管内容物が膨張し、腸管に拡張刺激を与え、排便を促す1)、とされています。
腸を刺激するタイプの下剤ではなく、いわゆるくせになりにくい、慣れにくいタイプの薬であるため、多くの便秘症に対して第一選択で使用される薬の一つです。
1) マグミット錠 添付文書
マグミットの効果時間
マグミットの効果時間の参考となるデータとして、マウスに対する緩下作用試験の結果などがあります。
マウスに対する緩下作用試験では10匹のマウスにマグミットの成分を投与し、投与後12時間までは1時間毎及び24時間後に排泄便を確認しており、その結果は投与後3~5時間後に排便のピークがあったとされています2)。
2) マグミット錠 インタビューフォーム
マグミットの使い方
マグミット錠は200〜500mgの規格があり、使い方も様々です。1日3回使用することもあれば1日1回だけの使用、さらには食前、食後、就寝前など使用するタイミングも患者さんごとによって違いがあり、また、患者さんによっては症状をみて調節するように指示されることもあります。
マグミットの用法用量の詳細は以下の通りです。
○制酸剤として使用する場合
酸化マグネシウムとして、通常成人1日0.5~1.0gを数回に分割経口投与する。
○緩下剤として使用する場合
酸化マグネシウムとして、通常成人1日2gを食前または食後の3回に分割経口投与するか、または就寝前に1回投与する。
○尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防に使用する場合
酸化マグネシウムとして、通常成人1日0.2~0.6gを多量の水とともに経口投与する。
なお、いずれの場合も年齢、症状により適宜増減する。マグミット錠 添付文書
マグミットの副作用|下痢についても
マグミットの代表的な副作用は下痢です。
マグミットは便秘症に対して使用される薬であり、量が多すぎると効果がありすぎて下痢気味になるケースもあります。結果としておならが増えたり、においがきつくなったりする可能性もあります。下痢になるような場合は用量を調節する必要があります。
その他の副作用として注意したいのが高マグネシウム血症です。非常に稀ですが、結果として死亡に至ったケースも中にはあるため、悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋
力低下、傾眠等の症状が現れた場合はすぐに医師の診察を受けましょう。また、長期で使用している場合は血清マグネシウム濃度の測定を行うなども推奨されます。
マグミットの飲み合わせ|牛乳も注意
マグミットには併用禁忌でないものの、飲み合わせに注意が必要なものがいくつかあります1)。
マグミットとの飲み合わせに注意が必要な薬(併用注意薬)は以下の通りです。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
テトラサイクリン系抗生物質 ニューキノロン系抗菌剤 ビスホスホン酸塩系骨代謝改善剤 |
ミノマイシン、クラビット、ボナロン、ボノテオ |
セフジニル セフポドキシム プロキセチル ミコフェノール酸モフェチル デラビルジン ザルシタビン ペニシラミン |
セフゾン、バナン、セルセプト |
アジスロマイシン セレコキシブ ロスバスタチン ラベプラゾール ガバペンチン |
ジスロマック、セレコックス、クレストール、パリエット |
ジギタリス製剤 鉄剤 フェキソフェナジン |
ジゴキシン、フェロ・グラデュメット、アレグラ |
ポリカルボフィルカルシウム | ポリフル、コロネル |
高カリウム血症改善イオン交換樹脂製剤 | カリメート |
活性型ビタミD3製剤 | アルファロール、エディロール |
大量の牛乳、カルシウム製剤 | |
ミソプロストール | サイトテック |
上記のうち、特に注意したいものの一つが牛乳です。牛乳との注意が必要な理由としてmilk-alkali syndrome(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス等)があらわれる恐れがあるためです。少量でありさらに時間間隔をあければ併用しても影響は少ないと考えられますが、極端な量を摂取するのは避けるようにしましょう。
また、抗生物質・抗菌剤に関しても比較的多くの薬でその効果を低下させる可能性があるため、併用に注意が必要となっています。風邪などの症状で医療機関を受診する場合にもマグミットを使用している場合はその旨を伝えるようにしましょう。
1) マグミット錠 添付文書
マグミットの授乳中の使用
マグミットは授乳中の使用に関しては特別な注意喚起はされていません1)。基本的には授乳中でも使用可能な薬の一つとなります。
専門家による見解の例として、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、授乳による乳児への影響の報告がなく 、使用可能と考えられるという内容です3)。大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでも、短期間で通常量以下であれば使用可能としており、「多くの授乳婦で研究した結果、安全性が示された薬剤 / 母乳への移行がないか少量と考えられ乳児に有害作用を及ぼさない」という見解です4)。
授乳による乳児への有害事象の報告が見あたらず、授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
経口でのMg吸収は非常に悪く、4%にすぎない。母親に投与しても1.5mg多く摂取するだけである。
母乳とくすりハンドブック
上記の通り、授乳中でも比較的安心して使用できると考えられますが、実際に授乳中にマグミットを使用するかは、処方医の先生の判断となります。マグミットに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
1) マグミット錠 添付文書
3) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
4) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
マグミットの妊娠中の使用
マグミットは妊娠中の使用に関しても特別な注意喚起はされていません1)。基本的には妊娠中でも使用可能な薬の一つとなります。
専門家による見解の例として、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、体内に吸収されないため 、使用可能と考えられるという内容です3)。
体内に吸収されない。
妊婦に使用可能と考えられる。「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
上記の通り、妊娠中でも比較的安心して使用できると考えられますが、実際に妊娠中にマグミットを使用するかは、処方医の先生の判断となります。マグミットに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
1) マグミット錠 添付文書
3) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
マグミットの薬価、ジェネリック
マグミット錠の薬価は、2016年4月の改定時点(2016年4月〜2018年3月まで)でマグミット錠200mg、250mg、330mg、500mgいずれも1錠あたり5.6円となっています。
マグミットの錠剤の成分量が上下しても薬価は変わらないため、薬剤費は変わらない点に注意しましょう。
なお、マグミットはジェネリック医薬品に分類される薬ですが、マグミットの先発医薬品に該当するような薬は現在は販売されていません。同じジェネリック医薬品として酸化マグネシウムという販売名で複数のメーカーから同一成分の薬剤が販売されていますが、薬価も同じ5.6円であるため、薬局でかかる費用はどの製剤を選択しても同じとなります。
マグミットの市販での購入
マグミットの成分である酸化マグネシウムは市販でも購入できる成分であり、市販薬で代用することも可能です。
マグミットと同じ成分を含む代表的な市販薬として「酸化マグネシウムE便秘薬」などがあります。
酸化マグネシウムE便秘薬は1錠あたり酸化マグネシウムの成分が333mg含まれるため、マグミット錠330mgとほぼ同じと言えます。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
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