ムコサールの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中・妊娠中の使用、薬価、市販での購入、ムコダインとの違いや併用などについて添付文書等から解説していきます。
Contents
ムコサールの特徴
ムコサールはアンブロキソールを成分とする去痰剤の一つであり、風邪が悪化した際の気管支炎や喘息の去痰に使われる他、カプセル剤と錠剤では気管支拡張症などにも使われ、さらに錠剤では副鼻腔炎の排膿においても効果が認められています1)。
ムコサールの特徴は肺表面活性物質 (サーファクタント) 及び気道液の分泌を促進による痰の喀出と線毛運動を亢進という作用による去痰作用です2)。このような作用は他の去痰薬とは異なる作用機序であり、ムコサールの成分であるアンブロキソール独特の作用機序となります。このため、ムコサールとL-カルボシステインの去痰成分を含むムコダインと併用しても単純な相加効果以上のものが期待できます。
ムコサールには通常の錠剤であるムコサール錠15mg、1日1回の使用で効果が持続するムコサール-Lカプセル45mg、主に小児が使用する粉薬のムコサールドライシロップ1.5%があります。
今回は主にムコサール錠15mgについて確認していきます。
1) ムコサール錠15mg 添付文書
2) ムコサール錠15mg インタビューフォーム
ムコサールはムコソルバンのジェネリック医薬品
ムコサール錠、ムコサールドライシロップはジェネリック医薬品に分類される薬であり、同じアンブロキソールの成分を含むムコソルバンが先発医薬品に該当します。
ムコサールはムコソルバンよりも薬価が低く設定されているため、ムコソルバンよりも経済的と言えます。
なお、ムコサールの中でもムコサール-Lカプセル45mgに関してはジェネリック医薬品には該当せず、先発医薬品の扱いとなります。
ムコサールの効果
ムコサール錠は風邪を悪化させた時の気管支炎や気管支喘息、気管支拡張症の去痰作用の他、副鼻腔炎の溜まった膿を出しやすくする効果も期待できます。
ムコサールの効能効果の詳細は以下の通りです。
下記疾患の去痰
急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、手術後の喀痰喀出困難
慢性副鼻腔炎の排膿ムコサール錠15mg 添付文書
ムコサールの作用機序
ムコサールの作用機序は肺表面活性物質(肺サーファクタント)の分泌促進や気道液の分泌促進、線毛運動亢進作用によるものであり1)、痰の気道の通りを良くすることで去痰作用を発揮します。
また、副鼻腔炎に対しては副鼻腔の粘液分泌正常化作用及び線毛運動亢進作用により症状を改善するとされています2)。副鼻腔炎に対しては排膿を促すため、一時的に鼻水が増えることがありますが、正常な反応であり、溜まった膿が出きればおさまることが期待できます。
1) ムコサール錠15mg 添付文書
2) ムコサール錠15mg インタビューフォーム
ムコサールの実際の患者さんに対する効果
ムコサール錠の実際の患者さんに対する効果は、同じアンブルキソールを成分とする薬のムコソルバンの臨床試験の結果が参考となります3)。
ムコソルバンの臨床試験では1000例近い患者さんに対して使用した結果が報告れており、主な疾患に対する有効率は急性気管支炎には75.3%、気管支喘息には51.5%というような結果でした。
3) ムコソルバン錠15mg 添付文書
ムコサールの使い方
ムコサール錠の使い方は1日3回、1回に1錠ずつ使用するのが一般的な使い方です。
ムコサール錠の用法用量の詳細は以下の通りです。
通常、成人には1回1錠(アンブロキソール塩酸塩として15mg)を1日3回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。ムコサール錠15mg 添付文書
ムコサールの副作用
ムコサールは副作用についてあまり心配する薬ではありません。
いずれも明確な頻度は確認されていないものの、報告されている副作用は腹痛や下痢、吐き気、発疹、蕁麻疹、めまいなどです1)。
0.1~5% 未満 |
0.1%未満 | 頻度不明 | |
消化器 | 胃不快感 | 胃痛、腹部膨満感、腹痛、下痢、嘔気、嘔吐、便秘、食思不振、消化不良(胃部膨満感、胸やけ等) | |
過敏症 | 発疹、蕁麻疹、蕁麻疹様紅斑、瘙痒 | 血管浮腫(顔面浮腫、眼瞼浮腫、口唇浮腫等) | |
肝 臓 | 肝機能障害(AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇等) | ||
その他 | 口内しびれ感、上肢のしびれ感 | めまい |
なお、ムコサールでは眠気の副作用は注意喚起されていません。ムコサールの成分であるアンブロキソールはその作用機序からも眠気の副作用が起こることは考えにくく、ムコサールを服用後に眠くなった場合は、他の原因が疑われます。
眠気がでる原因として他の併用薬による可能性があります。特に咳止めの薬であるアスベリン、メジコン、フスコデなどや、鼻水を止めるためやアレルギー症状に対して処方されるポララミン、アレジオン、アレロック、ジルテック、ザイザルなどは眠気を催す可能性があります。総合感冒薬のPL顆粒やピーエイ配合錠なども眠くなる成分が含まれているため、注意が必要です。
ムコサールの飲み合わせ
ムコサールは飲み合わせに注意が必要な薬として注意喚起されているものはなく、基本的にどの薬とも併用することが可能です。
抗生物質のフロモックス、メイアクト、ワイドシリン、クラリス、解熱鎮痛薬のカロナールやロキソニン、咳止めのアスベリン、メジコン、抗炎症薬のトランサミンなどよく出される組み合わせは問題ありません。同じ去痰薬のムコダイン(カルボシステイン)に関しても作用機序がやや異なるため、併用で相加以上の効果が期待でき、よく出される組み合わせの一つとなります。
このようにムコサールは飲み合わせに関してもあまり心配する点がなく、安心して服用できる薬です。
ムコサールの授乳中の使用
ムコサール錠は基本的に授乳中の使用は避けるよう注意喚起されています。
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。
[動物実験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。]ムコサール錠15mg 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、授乳中の母ラットにムコサールの成分を投与した場合には、少量ながら、乳汁を介して乳仔への移行が認められているためです2)。
ただし、乳汁中に移行する量は少量とされており、また、ムコサールの成分は小児でもよく使用される薬であり、仮に母乳経由で乳児が成分を摂取しても影響は限定的と想定されます。
専門家による見解のひとつとして、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、小児にも適応があり、授乳婦にも使用可能という内容です4)。また、大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでも、同様の内容であり、「限られた授乳婦で研究した結果、乳児へのリスクは最小限と考えられる / 授乳婦で研究されていないが、リスクを証明する根拠が見当たらない」という見解です5)。
ヒト母乳への移行データがないので、授乳婦に使用可能と考えられる。小児に使用する製剤である。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
授乳婦服用による有害事象の報告が見当たらない。小児に適応を持ち、移行したとしても問題にならないと思われる。
母乳とくすりハンドブック
実際に授乳中にムコサールを使用するかは、処方医の先生の判断となります。ムコサールに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) ムコサール錠15mg インタビューフォーム
4) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
5) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
ムコサールの妊娠中の使用
ムコサールは妊娠中の使用に関しては、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起されており、実際に使用するかは医師の判断となります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与すること。
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]ムコサール錠15mg 添付文書
ただし、上記のような注意喚起はされているものの、動物実験においては明確な危険性は確認されていません。胎児への移行性を確認した実験では胎仔への分布はわずかであり、胎盤を通過し難いと考えられており、生殖発生毒性試験ではラット、ウサギの実験いずれにおいても異常は認められていないとされています2)。
専門家の意見と一つとして、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)では妊娠中の使用に関して問題ないという見解です4)。
妊婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
実際に妊娠中にムコサールを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。ムコサールに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) ムコサール錠15mg インタビューフォーム
4) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
ムコサールの薬価
ムコサール錠15mgの薬価は、2016年4月の改定時点(2016年4月〜2018年3月まで)で1錠あたり11.6円となっています。
ムコサール錠15mgのみを7日分もらう際に薬局でかかる費用は、調剤技術料が調剤基本料41点(薬局によって異なる)と調剤料5点×7日とで76点程度(760円程度)、薬学管理料が50点(500円)と仮定すると
((11.6(円)× 3(回)) × 7(日))(薬剤料)+ 1260円(調剤技術料+薬学管理料)= 1470(円)
1470(円)× 0.3(3割負担) ≒ 440(円)
となります。
ムコサール錠15mgの先発医薬品であるムコソルバン錠15mgは17.8円であり、ムコサール錠の方が経済的と言えます。同じ条件でムコソルバン錠を使用したとすると
((17.8(円)× 3(回)) × 7(日))(薬剤料)+ 1260円(調剤技術料+薬学管理料)= 1610(円)
1610(円)× 0.3(3割負担) ≒ 480(円)
となり、ムコサールの方が費用が安くなります。
ムコサールの市販での購入
ムコサールの成分であるアンブロキソールは市販薬としても販売されている成分であり、市販でも購入することができます。ただし、アンブロキソール単一成分で販売されている市販薬はなく、基本的には風邪薬(総合感冒薬)の中の一つの成分として含まれています。
ムコサールの成分であるアンブロキソールを含む主な市販薬は以下の通りです。
販売名 | 含まれる成分 |
エスタックイブファイン | イブプロフェン アンブロキソール塩酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 ヨウ化イソプロパミド クロルフェニラミンマレイン酸塩 無水カフェイン アスコルビン酸(ビタミンC) チアミン硝化物(ビタミンB1硝酸塩) |
エスタックイブファイン顆粒 | イブプロフェン アンブロキソール塩酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 ヨウ化イソプロパミド クロルフェニラミンマレイン酸塩 無水カフェイン アスコルビン酸(ビタミンC) チアミン硝化物(ビタミンB1硝酸塩) |
エスタックイブファインEX | イブプロフェン ヨウ化イソプロパミド クロルフェニラミンマレイン酸塩 アンブロキソール塩酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 無水カフェイン 酸化マグネシウム |
コルゲンコーワIB透明カプセルα | イブプロフェン アンブロキソール塩酸塩 d-クロルフェニラミンマレイン酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 無水カフェイン |
パブロンエースAX錠 | イブプロフェン アンブロキソール塩酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 クロルフェニラミンマレイン酸塩 無水カフェイン チアミン硝化物 リボフラビン アスコルビン酸 |
パブロンエースAX微粒 | イブプロフェン アンブロキソール塩酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 クロルフェニラミンマレイン酸塩 無水カフェイン チアミン硝化物 リボフラビン アスコルビン酸 |
パブロンクオリティ錠 | イブプロフェン アンブロキソール塩酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 クロルフェニラミンマレイン酸塩 無水カフェイン チアミン硝化物 リボフラビン アスコルビン酸 |
パブロンクオリティ微粒 | イブプロフェン アンブロキソール塩酸塩 ジヒドロコデインリン酸塩 dl-メチルエフェドリン塩酸塩 クロルフェニラミンマレイン酸塩 無水カフェイン チアミン硝化物 リボフラビン アスコルビン酸 |
パブロンSゴールドW錠 | アンブロキソール塩酸塩 L-カルボシステイン ジヒドロコデインリン酸塩 アセトアミノフェン クロルフェニラミンマレイン酸塩 リボフラビン |
パブロンSゴールドW微粒 | アンブロキソール塩酸塩 L-カルボシステイン ジヒドロコデインリン酸塩 アセトアミノフェン クロルフェニラミンマレイン酸塩 リボフラビン |
アンブロキソールを含む市販薬は含まれる解熱鎮痛薬の成分(イブプロフェンかアセトアミノフェン)で分類できます。
比較的効果が強い解熱鎮痛成分がイブプロフェンであり、エスタックイブファイン系、コルゲンコーワIB、パブロンエースAX系、パブロンクオリティがイブプロフェンを含みます。これらは風邪を引いた時、高温の発熱も伴うような場合に向いていると言えるでしょう。
一方、パブロンSゴールドW系はアセトアミノフェンという比較的効果がマイルドで安全性も高い解熱鎮痛成分が含まれます。熱の症状がそれほど気にならない場合はこれらのパブロンSゴールドW系を選択するようにしましょう。また、パブロンSゴールドW系にはアンブロキソールと異なる去痰成分であるL-カルボシステインも含まれています。L-カルボシステインは処方薬のムコダインに該当する薬であり、ムコソルバンとムコダインは処方薬でも併用される組み合わせです。それぞれ別の作用を持っているため、相乗効果が期待でき、痰の症状がより気になる場合にもパブロンSゴールドW系が向いていると言えるでしょう。
なお、痰切りだけの目的として市販薬を使いたい場合は、ムコサールの成分とは異なるものの、処方薬で言うムコダインの成分であるカルボシステインを含んだストナ去たんカプセルなどが適していると言えます。ストナ去たんカプセルはL-カルボシステインとブロムヘキシン塩酸塩の成分のみであり、去痰成分だけを含む市販薬です。解熱鎮痛成分や抗ヒスタミン成分などを含まないため、眠気をはじめとした副作用の心配が少なくなり、痰切りのみの目的に適しています。
ムコサールとムコダイン(カルボシステイン)の違い
ムコサールとムコダイン(カルボシステイン)の違いはその作用機序にあります。
ムコダインはムコサールと同じ去痰薬に分類される薬です。カルボシステインはムコダインの成分であるため、カルボシステインはムコダインと同じもの(もしくはムコダインのジェネリック医薬品がカルボシステイン)を指します。
それぞれの薬の作用機序の違いとして、ムコサールの作用機序が肺表面活性物質(肺サーファクタント)の分泌促進や気道液の分泌促進、線毛運動亢進作用によって、痰の気道の通りを良くするのに対し、ムコダイン(カルボシステイン)は気道の粘膜を修復したり、粘液の構成成分のバランスや粘液を輸送する機能を正常にすることによって、去痰作用を発揮します。
したがって、これらの2つの薬を併用することにより、単なる相加効果以上の効果が期待でき、併用されるケースもしばしばあります。
なお、用法に関しては違いはなく、ムコサール錠とムコダイン(カルボシステイン)ともに1日3回使用するのが一般的です。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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