トランサミンの風邪などへの効果、シミや美白などの美容目的の使用、副作用、眠気などの有無、授乳への影響、妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。
Contents
トランサミンの効果と特徴
トランサミンはトラネキサム酸を成分とし、風邪などでの抗炎症作用や出血傾向に対する止血作用の効果がある薬です。
トランサミンには錠剤であるトランサミン錠250mgとトランサミン錠500mg、カプセル剤であるトランサミンカプセル250mg、粉薬の散剤であるトランサミン散50%、液体のシロップ剤であるトランサミンシロップ5%、注射剤のトランサミン注5%、トランサミン注10%の種類があります。
今回は主にトランサミン錠やトランサミンカプセルについて確認していきます。
トランサミンは風邪や出血に対して効果
トランサミンにはいくつかの効果があり、代表的なものは扁桃炎、咽喉頭炎(いわゆる風邪など)における喉の痛み、赤み、腫れなどに対する抗炎症作用と、鼻出血などの出血や再生不良貧血などにおける出血傾向に対する止血作用、さらに蕁麻疹などに対する抗アレルギー作用です。その他口内炎などに対しても使用されます。
トランサミンの効能効果の詳細は以下の通りです。
○全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
(白血病、再生不良性貧血、紫斑病等、及び手術中・術後の異常出血)
○局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
(肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血)
○下記疾患における紅斑・腫脹・そう痒等の症状
湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹
○下記疾患における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状
扁桃炎、咽喉頭炎
○口内炎における口内痛及び口内粘膜アフタートランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/
トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
美白やシミなど美容目的での使用も
近年、トランサミンは肝斑などのシミに対してなど、美白・美容目的で使用されるケースがあります。
ただし、これらの使用はトランサミンの正式な適応ではなく1)、保険適応外の使用となります。クリニックなどで依頼すれば実際にトランサミンをこれらの目的で処方してもらえるケースもありますが、美白・美容目的で使用する場合は基本的にすべて自己負担となることを理解しておきましょう。
なお、トランサミンの成分であるトラネキサム酸の肝斑に対する効果は多くの報告があり、実際に市販薬ではトランシーノなどで正式な効能効果として認められています2)。また、肝斑に対する効果の発現は4週程度で見られるのが一般的なようです3)。
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
2) トランシーノII 添付文書
3) 東 禹彦; 皮膚, 30(5); 676-680, 1988
トランサミンの作用機序
トランサミンの作用機序は幾つかあり、風邪などに対する抗炎症作用や蕁麻疹などに対する抗アレルギー作用は、血管透過性の亢進、アレルギーや炎症性病変の原因になっているキニンやその他の活性ペプタイド等のプラスミンによる産生を抑制することでもたらされるとされています1)。プラスミンとは通常は血栓を溶かす役割を果たす血中のタンパク分解酵素であり、トランサミンはこの酵素に作用します。
また、鼻出血などに対する止血作用はプラスミンによるフィブリン分解を阻害し止血作用を示すとされています1)。フィブリンは血液の凝固に関わるタンパク質です。
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
トランサミンの効果は52.4%〜73.6%の有効率
トランサミンの実際の患者さんに対する効果はそれぞれの疾患に対する臨床試験にて確認されています。
いわゆる風邪などが含まれる咽喉頭炎、扁桃炎、口内炎等の耳鼻咽喉科領域での有効率は一般臨床試験で70.8%とされています。また、プラセボ(偽薬)との比較をした試験では、52.4%の有効率であったものの、プラセボの有効率26.2%に比較し統計学的に有意であったとされています1)。
抗出血作用に関しては、白血病、再生不良性貧血、紫斑病等の出血傾向及び肺出血、性器出血、腎出血、手術中・術後等の異常出血に対する止血効果を確認した一般臨床試験で73.6%の有効率が確認されています1)。
皮膚疾患に対する抗アレルギー作用に関しては、湿疹、蕁麻疹、薬疹・中毒疹等を対象にした一般臨床試験で60.5%の有効率、プラセボとの比較をした試験では、62.9%の有効率でありプラゼボの有効率31.3%に比較し統計学的に有意であったとされています1)。
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
トランサミンの使い方
トランサミンは用量に幅があり、実際に使用する用量は処方医の先生が症状をみて決めることになります。
少ない用量ではトランサミン錠250やトランサミンカプセル250を1回に1錠(カプセル)、1日3回使用、多い用量ではトランサミン錠250やトランサミンカプセル250を1回に2錠(カプセル)もしくはトランサミン錠500を1回に1錠、1日3〜4回使用するのが一般的です。
トランサミンの用法用量の詳細は以下の通りです。
トラネキサム酸として、通常成人1日750~2,000mgを3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/
トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
トランサミンを肝斑で使用する場合の用法用量
トランサミンを肝斑に対して使用する場合も風邪などの抗炎症作用や止血作用を目的とする場合と同程度の用法用量で使用するのが一般的です。
1日量としては1500mgを使用するケースが多いようですが、750mgで使用するケースも報告としてあります3)。
なお、肝斑治療薬として市販されているトランシーノIIではトラネキサム酸の1日量として750mgを使用することになります2)。
2) トランシーノII 添付文書
3) 東 禹彦; 皮膚, 30(5); 676-680, 1988
トランサミンの副作用
トランサミンの主な副作用は食欲不振(0.61%)、悪心(0.41%)、嘔吐(0.20%)、胸やけ(0.17%)、そう痒感(0.07%)、発疹(0.07%)等とされており、頻度として高い副作用はあまりありません1)。
また、眠気に関しても報告はあるものの、その頻度は0.1%未満とされており、可能性はかなり低いと考えられます。トランサミンを含めた複数の薬を服用して眠気を感じる場合は他の薬に原因がある可能性があります。併用されることが多い薬として、咳止めの薬であるフスコデ、メジコン、アスベリン、アストミンなどのほか、鼻水に対して処方される抗ヒスタミン薬のアレロック(オロパタジン)、ポララミン、ザイザル、タリオン、アレジオンなどはトランサミンよりも眠気の副作用がでる頻度が高く、これらの薬が眠気の原因の可能性があります。
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
トランサミンの飲み合わせ
トランサミンは他の薬との飲み合わせに関して、併用禁忌の(併用できない)薬と併用注意の薬がいくつかあります。
トランサミンの併用禁忌の薬
トランサミンはトロンビン製剤と併用禁忌とされています1)。
トロンビンは血栓形成を促進する作用があり、止血作用のあるトランサミンと併用することでり血栓形成傾向が増大するため、一緒に使用することはできません。
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
トランサミンの併用注意の薬
トランサミンと併用に注意が必要な薬として以下のものが挙げられます1)。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
ヘモコアグラーゼ | レプチラーゼ注 |
バトロキソビン | デフィブラーゼ点滴静注 |
凝固因子製剤 エプタコグアルファ等 |
ノボセブンHI静注用 |
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
トランサミンの授乳への影響、妊娠中の使用
トランサミンは授乳への影響も少なく、授乳中でも使用可能な薬剤と言えます。また、妊娠中でも特に注意喚起はなく使用可能な薬と言えます。それぞれ確認していきます。
トランサミンは授乳への影響が少ない
トランサミンは製薬会社から授乳中の使用に関する注意喚起はなく1)、基本的に授乳中でも使用可能な薬剤と言えます。
授乳への影響を確認した動物実験では、乳汁中の濃度は、血清中のピーク時の濃度の約100分の1であることが確認されており4)、母乳中にはほとんど薬は移行しないことが考えられます。
また、トランサミンはシロップなどでは1歳未満の乳児でも使用されることがある薬であり5)、仮に母乳経由で乳児に移行したとしても大きな問題はないと考えられます。
専門家による見解でも、トランサミンは授乳をしている場合でも使用できるという内容がいくつかあり、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは授乳による乳児への有害事象の報告がないため、授乳婦に使用可能という内容です6)。大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでもやはり、授乳中のトランサミンの使用による有害事象報告がなく、「多くの授乳婦で研究した結果、安全性が示された薬剤 / 母乳への移行がないか少量と考えられ乳児に有害作用を及ぼさない」という見解です7)。
授乳による乳児への有害事象の報告が見あたらず、授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
授乳婦服用による有害事象の報告が見当たら ない。小児に適応を持ち、移行したとしても問題にならないと思われる。
母乳とくすりハンドブック
ただし、実際に授乳中でもトランサミンを使用するかは処方医の先生の判断が必要です。トランサミンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断でトランサミンを使用するようなことは避けましょう。
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
4) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% インタビューフォーム
5) トランサミンシロップ5% 添付文書
6) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
7) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
トランサミンは妊娠中でも使用されることも
トランサミンは製薬会社から妊娠中の使用に関する注意喚起はなく1)、授乳中と同様、基本的に妊娠中でも使用可能な薬剤と言えます。
妊娠への影響を確認した動物実験の生殖発生毒性試験では、妊娠マウス及びラットの器官形成期にトランサミンの成分を投与した結果、胎児ならびに新生児に対する致死、発育抑制及び催奇形作用は認められなかったとされており4)、妊婦や胎児への影響はあまりないことが考えられます。
専門家による見解でも、トランサミンは妊娠中の場合でも使用できるという内容があり、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは妊娠中の危険を示すデータがないため、妊婦でも使用可能という内容です6)。
ヒトでの催奇形性を示唆するデータなし。妊娠中の出血に対して使用される。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
また、その他の情報として、虎の門病院「妊娠と薬」相談外来における相談事例では、妊娠中にトラネキサム酸の使用した事例が収集されていますが、その結果からは「異常に共通性はなく、国内における自然奇形発生率を上回る変化とは考えられない」という見解が述べられています8)。
ただし、妊娠中に実際にトランサミンを使用するかはやはり処方医の先生の判断となります。授乳中と同様、トランサミンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断でトランサミンを使用するようなことは避けましょう。
1) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
4) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% インタビューフォーム
6) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
8) 株式会社じほう 実践 妊娠と薬 第2版
トランサミンの薬価とジェネリック
トランサミンの薬価は2016年4月の改定時点(2018年3月まで)にてトランサミン錠250mgとトランサミンカプセル250mgで1錠(カプセル)あたり9.9円、トランサミン錠500mgでは1錠あたり18.3円とされています。
トランサミンにはジェネリック医薬品が販売されており、トラネキサム酸錠やヘキサトロンカプセル、リカバリンカプセルといった名称で販売されています。
ただし、ジェネリック医薬品でも250mgの錠剤やカプセル剤では薬価は同じ価格の9.9円となります。500mgではジェネリック医薬品の方が安価となり、1錠あたり9.3円となります。
上記ようにジェネリック医薬品でも必ずしも薬価が安くならないケースがある点に注意しましょう。
トランサミン の薬価 |
ジェネリック医薬品の薬価 | |
250mg錠 | 9.9円 | 9.9円 |
250mg カプセル |
9.9円 | 9.9円 |
500mg錠 | 18.3円 | 9.3円 |
トランサミンの市販での販売
トランサミンの成分であるトラネキサム酸は市販薬としても含まれる成分であり、市販での購入が可能です。トラネキサム酸を含む代表的な市販薬として、ペラックT錠などがあります。
また、処方薬であるトランサミン自体も厳密には処方箋医薬品以外の医薬品に分類され、処方箋がなくても購入出来るケースがあります。
トランサミンの市販での入手に関しては以下の記事についても参照してください。
トランサミンを市販や通販で購入するには|トランサミンの市販の風邪薬などを解説
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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