リカバリンカプセル250についてその特徴やトランサミンとの違い、効果、使い方、しみにたいする使用、副作用、飲み合わせ、市販での販売などについて添付文書等から解説していきます。
Contents
リカバリンの特徴
リカバリンはトラネキサム酸を成分とし、風邪などでの抗炎症作用や出血傾向に対する止血作用の効果がある薬です。
また、近年は適応外で肝斑(いわゆるしみ)に対して使用されることもある薬です。
リカバリンにはカプセル剤であるリカバリンカプセル250mgと注射剤のリカバリン注250mg、リカバリン注1000mgの種類があります(ただし、注射剤は販売中止予定)。
今回は主にリカバリンカプセル250について確認していきます。
リカバリンとトランサミンの違いは?薬価と規格を確認
リカバリンの成分であるトラネキサム酸を含む薬としてトランサミンもあります。
リカバリンはトランサミンのジェネリック医薬品に該当します。同じ成分であるため、その効果に違いはありません。また、薬の価格である薬価に関しても、リカバリンカプセル250とトランサミンカプセル250では、2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価において違いがなく、共に1カプセルあたり9.9円という薬価になっています。
リカバリンとトランサミンの違いを強いて挙げると、250mgカプセルに含まれる添加物の違い、販売されている規格の違いが挙げられます。添加物は薬の薬効には基本的に影響を与えませんが、人によっては使用感の違いを感じるケースなどがあるとされています。また、販売されている剤型は、先発医薬品であるトランサミンにはカプセル、注射剤の他、錠剤や散剤、シロップ剤がある点が特徴です。
項目 | リカバリン | トランサミン |
250mgカプセルの薬価 | 9.9円 | 9.9円 |
250mgカプセルの添加物 | カルメロースカルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、酸化チタン、黄色5号、ラウリル硫酸ナトリウム、ゼラチン | トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム カプセル: ゼラチン、ラウリル 硫酸ナトリウム、黄色 5 号 |
カプセル以外の剤型 | 注射 | 錠剤、散剤、シロップ、注射 |
リカバリンの効果
リカバリンカプセル250にはいくつかの効果があり、代表的なものは扁桃炎、咽喉頭炎(いわゆる風邪など)における喉の痛み、赤み、腫れなどに対する抗炎症作用と、鼻出血などの出血や再生不良貧血などにおける出血傾向に対する止血作用、さらに蕁麻疹などに対する抗アレルギー作用です。その他口内炎などに対しても使用されます1)。
リカバリンカプセル250の効能効果の詳細は以下の通りです。
○全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
白血病、再生不良性貧血、紫斑病等、及び手術中・術後の異常出血
○局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血
○下記疾患における紅斑・腫脹・そう痒等の症状
湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹
○下記疾患における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状
扁桃炎、咽喉頭炎
○口内炎における口内痛及び口内粘膜アフターリカバリンカプセル250mg 添付文書
1) リカバリンカプセル250mg 添付文書
リカバリンはシミなど美容目的でも使用される
近年、リカバリンは肝斑(いわゆるしみ)に対して、美白・美容目的で使用されるケースがあります。
ただし、これらの使用はリカバリンの正式な適応ではなく1)、保険適応外の使用となります。クリニックなどで依頼すれば実際にリカバリンをこれらの目的で処方してもらえるケースもありますが、美白・美容目的で使用する場合は基本的にすべて自己負担となることを理解しておきましょう。
なお、リカバリンの成分であるトラネキサム酸の肝斑に対する効果は多くの報告があり、実際に市販薬ではトランシーノIIなどで正式な効能効果として認められています2)。また、肝斑に対する効果の発現は4週程度で見られるのが一般的です3)。
1) リカバリンカプセル250mg 添付文書
2) トランシーノII 添付文書
3) 東 禹彦; 皮膚, 30(5); 676-680, 1988
リカバリンの作用機序
リカバリンの作用機序は幾つかあり、風邪などに対する抗炎症作用や蕁麻疹などに対する抗アレルギー作用は、血管透過性の亢進、アレルギーや炎症性病変の原因になっているキニンやその他の活性ペプタイド等のプラスミンによる産生を抑制することでもたらされるとされています4)。プラスミンとは通常は血栓を溶かす役割を果たす血中のタンパク分解酵素であり、リカバリンはこの酵素に作用します。
また、鼻出血などに対する止血作用はプラスミンによるフィブリン分解を阻害し止血作用を示すとされています4)。フィブリンは血液の凝固に関わるタンパク質です。
4) リカバリンカプセル250mg インタビューフォーム
リカバリンの効果は52.4%〜73.6%の有効率と想定
リカバリンはジェネリック医薬品であるため、有効性を確認する臨床試験などのデータは明記されていませんが、リカバリンの先発医薬品であるトランサミンでは、実際の患者さんに対する効果がそれぞれの疾患に対する臨床試験にて確認されています。
いわゆる風邪などが含まれる咽喉頭炎、扁桃炎、口内炎等の耳鼻咽喉科領域での有効率は一般臨床試験で70.8%とされています。また、プラセボ(偽薬)との比較をした試験では、52.4%の有効率であったものの、プラセボの有効率26.2%に比較し統計学的に有意であったとされています5)。
抗出血作用に関しては、白血病、再生不良性貧血、紫斑病等の出血傾向及び肺出血、性器出血、腎出血、手術中・術後等の異常出血に対する止血効果を確認した一般臨床試験で73.6%の有効率が確認されています5)。
皮膚疾患に対する抗アレルギー作用に関しては、湿疹、蕁麻疹、薬疹・中毒疹等を対象にした一般臨床試験で60.5%の有効率、プラセボとの比較をした試験では、62.9%の有効率でありプラゼボの有効率31.3%に比較し統計学的に有意であったとされています5)。
5) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
リカバリンの使い方|何錠使用するか
リカバリンカプセル250は用量に幅があり、実際に何錠(何カプセル)を使用するかは処方医の先生が症状をみて決めることになります。
少ない用量ではリカバリンカプセル250を1回に1カプセル、1日3回使用、多い用量では1回に2カプセル、1日3〜4回使用するのが一般的です。
リカバリンカプセル250の用法用量の詳細は以下の通りです。
トラネキサム酸として、通常成人1日750~2,000mgを3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
リカバリンカプセル250mg 添付文書
リカバリンを肝斑で使用する場合の用法用量
リカバリンカプセル250を肝斑に対して使用する場合も風邪などの抗炎症作用や止血作用を目的とする場合と同程度の用法用量で使用するのが一般的です。
1日量としては1500mgを使用するケースが多いようですが、750mgで使用するケースも報告としてあります3)。
なお、肝斑治療薬として市販されているトランシーノIIではトラネキサム酸の1日量として750mgを使用することになります2)。
2) トランシーノII 添付文書
3) 東 禹彦; 皮膚, 30(5); 676-680, 1988
リカバリンの副作用
リカバリンはジェネリック医薬品であるため、副作用の頻度が明確になる調査などは実施されていませんが、参考になるデータとして、リカバリンの先発医薬品であるトランサミンの調査の結果があります。
トランサミンの主な副作用は食欲不振(0.61%)、悪心(0.41%)、嘔吐(0.20%)、胸やけ(0.17%)、そう痒感(0.07%)、発疹(0.07%)等とされており、頻度として高い副作用はあまりありません5)。
また、眠気に関しても報告はあるものの、その頻度は0.1%未満とされており、可能性はかなり低いと考えられます。リカバリンを含めた複数の薬を服用して眠気を感じる場合は他の薬に原因がある可能性があります。併用されることが多い薬として、咳止めの薬であるフスコデ、メジコン、アスベリン、アストミンなどのほか、鼻水に対して処方される抗ヒスタミン薬のアレロック(オロパタジン)、ポララミン、ザイザル、タリオン、アレジオンなどはリカバリンよりも眠気の副作用がでる頻度が高く、これらの薬が眠気の原因の可能性があります。
5) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% 添付文書
リカバリンの飲み合わせ
リカバリンカプセル250は他の薬との飲み合わせに関して、併用禁忌の(併用できない)薬と併用注意の薬がいくつかあります。
リカバリンの併用禁忌の薬
リカバリンカプセル250はトロンビン製剤と併用禁忌とされています1)。
トロンビンは血栓形成を促進する作用があり、止血作用のあるリカバリンと併用することでり血栓形成傾向が増大するため、一緒に使用することはできません。
1) リカバリンカプセル250mg 添付文書
リカバリンの併用注意の薬
リカバリンと併用に注意が必要な薬として以下のものが挙げられます1)。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
ヘモコアグラーゼ | レプチラーゼ注 |
バトロキソビン | デフィブラーゼ点滴静注 |
凝固因子製剤 エプタコグアルファ等 |
ノボセブンHI静注用 |
1) リカバリンカプセル250mg 添付文書
風邪などの際に使用される解熱鎮痛剤のロキソニン、カロナール、ボルタレン、咳止めのメジコン、アストミン、フスタゾール、フスコデ、アスベリン、痰切りのムコダイン(カルボシステイン)、ムコソルバン(アンブロキソール)、鼻水を止める抗ヒスタミン薬のアレロック、アレグラ、ザイザル、タリオン、総合感冒剤のPL配合顆粒など、これらはいずれも飲み合わせ問題ありません。
リカバリンの授乳、妊娠中の使用
リカバリンカプセル250は授乳への影響も少なく、授乳中でも使用可能な薬剤と言えます。また、妊娠中でも特に注意喚起はなく使用可能な薬と言えます。それぞれ確認していきます。
リカバリンは授乳への影響が少ない
リカバリンは製薬会社から授乳中の使用に関する注意喚起はなく1)、基本的に授乳中でも使用可能な薬剤と言えます。
リカバリンの先発医薬品であるトランサミンにおいて、授乳への影響を確認した動物実験では、乳汁中の濃度は、血清中のピーク時の濃度の約100分の1であることが確認されており6)、母乳中にはほとんど薬は移行しないことが考えられます。
また、トランサミンのシロップ剤は1歳未満の乳児でも使用されることがある薬であり7)、仮に母乳経由でリカバリンの成分が乳児に移行したとしても大きな問題はないと考えられます。
専門家による見解でも、リカバリンの成分は授乳をしている場合でも使用できるという内容がいくつかあり、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは授乳による乳児への有害事象の報告がないため、授乳婦に使用可能という内容です8)。大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでもやはり、授乳中のリカバリン成分の使用による有害事象報告がなく、「多くの授乳婦で研究した結果、安全性が示された薬剤 / 母乳への移行がないか少量と考えられ乳児に有害作用を及ぼさない」という見解です9)。
授乳による乳児への有害事象の報告が見あたらず、授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
授乳婦服用による有害事象の報告が見当たら ない。小児に適応を持ち、移行したとしても問題にならないと思われる。
母乳とくすりハンドブック
ただし、実際に授乳中でもリカバリンを使用するかは処方医の先生の判断が必要です。リカバリンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断でリカバリンを使用するようなことは避けましょう。
1) リカバリンカプセル250mg 添付文書
6) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% インタビューフォーム
7) トランサミンシロップ5% 添付文書
8) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
9) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
リカバリンは妊娠中でも使用されることも
リカバリンカプセル250は製薬会社から妊娠中の使用に関する注意喚起はなく1)、授乳中と同様、基本的に妊娠中でも使用可能な薬剤と言えます。
リカバリンの先発医薬品であるトランサミンにおいて、妊娠への影響を確認した動物実験の生殖発生毒性試験では、妊娠マウス及びラットの器官形成期にトラネキサム酸の成分を投与した結果、胎児ならびに新生児に対する致死、発育抑制及び催奇形作用は認められなかったとされており6)、妊婦や胎児への影響はあまりないことが考えられます。
専門家による見解でも、リカバリンの成分は妊娠中の場合でも使用できるという内容があり、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは妊娠中の危険を示すデータがないため、妊婦でも使用可能という内容です8)。
ヒトでの催奇形性を示唆するデータなし。妊娠中の出血に対して使用される。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
また、その他の情報として、虎の門病院「妊娠と薬」相談外来における相談事例では、妊娠中にトラネキサム酸の使用した事例が収集されていますが、その結果からは「異常に共通性はなく、国内における自然奇形発生率を上回る変化とは考えられない」という見解が述べられています10)。
ただし、妊娠中に実際にリカバリンを使用するかはやはり処方医の先生の判断となります。授乳中と同様、リカバリンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断でリカバリンを使用するようなことは避けましょう。
1) リカバリンカプセル250mg 添付文書
6) トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50% インタビューフォーム
8) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
10) 株式会社じほう 実践 妊娠と薬 第2版
リカバリンの市販での販売
リカバリンの成分であるトラネキサム酸は市販薬としても販売されている成分であり、市販で購入することが可能です。
のどの炎症を鎮める成分として風邪薬(総合感冒薬)に含まれていたり、咽頭炎などの喉の痛みに特化して販売されているケース、口内炎の治療薬として販売されているケース、顔のシミ(肝斑)の治療薬として販売されているケースなどがあります。
それぞれケース別に確認していきましょう。
リカバリンの成分を喉の痛みに特化して使用したい
喉の痛みに対してのみ使用したい場合は、ペラックT錠がおすすめの市販薬となります。
ペラックは咽頭炎・扁桃炎(のどのはれ、のどの痛み)、口内炎に対して効果があり、トラネキサム酸の他には抗炎症作用のあるカンゾウ乾燥エキス、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンCが含まれており、解熱鎮痛成分や、鼻水を抑える抗ヒスタミン成分、鎮咳成分などは含まれておりません。したがって、喉の痛みに対して特化している市販の薬と言えます。
喉の痛み以外にも風邪の症状全般に効く市販薬
風邪の症状で出ている時に、喉の痛み以外にも熱、咳、鼻水などに効いてほしい場合は、ルルアタックEX、ベンザブロックS、カイゲン感冒カプセルDXなどが市販薬としてあります。
この中でもルルアタックEXはトラネキサム酸を1日量として750mg含んでおり、他のかぜ薬よりも高用量でトラネキサム酸を使用することができます。
リカバリンの成分をロキソニンの成分と一緒に使用したい
代表的な解熱鎮痛薬のロキソニンの成分であるロキソプロフェンとリカバリンの成分であるトラネキサム酸が配合されている市販薬もあり、それがコルゲンコーワ鎮痛解熱LXαです。
コルゲンコーワ鎮痛解熱LXαは1錠中にロキソプロフェンが60mg含まれており、これは処方薬のロキソニンと同じ量になるため、非常に高い解熱鎮痛効果が期待できます。
ただし、トラネキサム酸は1錠中140mgであり、ペラックなどと比較すると、摂取できるトラネキサム酸の量は少なくなります。
ロキソプロフェンを含む場合は第1類医薬品となり、薬剤師のいる店舗、もしくは通販で薬剤師の問診などを受けて購入することができます。
リカバリンの成分を口内炎に対して使用したい
トラネキサム酸は口内炎にも効果が期待でき、代表的な市販の薬がトラフル錠です。
口内炎、咽頭炎・扁桃炎(のどのはれ、のどの痛み)に対して効果があるとされています。
ただし、トラフル錠は成分の内容、量はペラックT錠と基本的には同じになります。ペラック錠があればそれを口内炎にも使用すれば同等の効果が期待でき、逆も同じことが言えるため、どちらか一つあれば良いと言えるでしょう。
リカバリンの成分を肝斑に対して使用したい
リカバリンは適応外で肝斑(顔などの薄茶色のシミ)に対しても使われることがあり、市販の薬でも専ら肝斑に対する効能効果で販売されているのがトランシーノIIです。
トラネキサム酸を1日量として750mg含んでおり、肌のターンオーバーに関連するとされるL-システインやビタミン類などの成分も含まれます。
第1類医薬品とされているため、薬剤師のいる店舗、もしくは通販で薬剤師の問診などを受けて購入することができます。
市販薬では上限量が処方薬よりも少ない点に注意
リカバリンの成分であるトラネキサム酸を含む市販の薬を紹介してきましたが、注意点としていずれも市販薬で使用できるトラネキサム酸の量は処方薬で使用する場合と比較し少なくなっています。
処方薬では上限は1日2000mgですが、市販薬では基本的に750mgとなります。
したがって、より高い効果を期待したい場合には、医師の診察を受けた上でリカバリンを処方をしてもらうようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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