過去に熱性けいれんを経験した子供でもインフルエンザの予防接種を打てるのか、打つとしたらけいれんを最後に経験した時からどの程度の期間を設けるべきかなどを、ガイドラインなどを参考に確認していきます。
熱性けいれん持ちでもインフルエンザの予防接種は打てる
以前に熱性けいれんが出たことがある子供でもインフルエンザの予防接種は可能とされています。
1994年の予防接種法の改定前は、けいれん性疾患を既往に持つ小児は1年以内にけいれんがあった場合は禁忌(予防接種できない)という規定がありましたが、現在はそのような規定がなく、インフルンザワクチンの注意喚起としては接種要注意者という位置付けになるため、医師が問題ないと判断すれば基本的に接種は可能となります。
接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)
(3)過去にけいれんの既往のある者インフルエンザHAワクチン「北里第一三共」シリンジ0.25mL 添付文書
また、熱性けいれん診療ガイドライン2015では「現行の予防接種はすべて接種してよい」と明記されており、この点からも熱性けいれん持ちの子供でもインフルエンザの予防接種は問題ないと考えられます。
現行の予防接種はすべて接種してよい。ただし、個別にワクチンの有用性と起こり得る副反応、および具体的な対応案を事前に十分説明し、保護者に同意を得ておく。
熱性けいれん診療ガイドライン2015
熱性けいれんで注意が必要なのは麻疹ワクチン
熱性けいれん後の予防接種で注意が必要なのは麻疹ワクチンや小児肺炎球菌ワクチンであり、インフルエンザの予防接種はあまりリスクは高くないと考えられます。
海外の報告では麻疹ワクチンの接種後2週間以内と、DPTワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン)接種後1週間以内に発熱と発熱を伴うけいれんが増加するという報告があり、日本においては、麻疹風疹混合生ワクチンに次いで小児用肺炎球菌ワクチンの接種後の発熱率が高いとされており1)、インフルエンザに関しては大きなリスクは指摘されていません。
また、日本における熱性けいれん既往児に対しての予防接種による熱性けいれん再発例は1%とされており、これらはすべてジアゼパムの投与による熱性けいれんの予防は行われていなかったとされています。したがって、ダイアップ坐剤などによる熱性けいれんの予防を行えば、この1%という頻度からさらに低下することが予想され、実際には予防接種後の熱性けいれんの頻度はかなり低く抑えられる可能性が有ります。
ダイアップの効果や座薬の使い方|2回目の使用と間隔、体重ごとの使用量や解熱剤との併用についても
1) 熱性けいれん診療ガイドライン2015
熱性けいれんが出ても期間を空けずにインフルエンザの予防接種は可能
インフルエンザの予防接種は、当日の体調が問題なければ、熱性けいれんが出た場合でも、特に間隔を空けずに接種が可能とされています。
熱性けいれん診療ガイドライン2015では、「熱性けいれんの既往がある小児に予防接種を行う場合、最終発作からの経過観察期間はどれぐらいあければよいか」という内容に対し、「当日の体調に留意すればすべての予防接種をすみやかに接種してよい」という結論を明記しています。
また、2つ目の結論として、「初回の熱性けいれん後のワクチン接種までの経過観察期間には明らかなエビデンスはない。長くとも2〜3ヶ月程度に留めておく」という内容も明記しており、特に初回の熱性けいれんが出た時には、医師の判断で経過観察期間を設ける場合でも、その期間は2〜3ヶ月程度で十分という点も言及しています。
前述の通り、ワクチン接種後に最も発熱が多いとされる麻疹の予防接種においても、接種後2週間以内に発熱することが多いため、2週間以上の間隔を空ければ比較的リスクも下がると考えられます。
また、こちらも前述の通り、インフルエンザワクチンに至っては他のワクチンと比較しても安全性が高いと考えられるため、熱性けいれん後の期間を設けずに医師の判断で比較的安全に接種が可能と考えられます。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
コメント