ハルシオンの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中の使用、妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入等について添付文書等から解説していきます。
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ハルシオンの特徴
ハルシオンはトリアゾラムを成分として含み不眠症に対して効果がある薬です1)。
ハルシオンの特徴として、超短時間作用型のベンゾジアゼピン系に分類され、1)半減期が短く、翌朝まで作用が残らず目覚め感が良い、2)REM 睡眠、徐波睡眠への影響が少なく、生理的睡眠リズムをくずさない、3)0.125mg~0.25mg 投与で、速やかな入眠、熟眠効果が得られる、などの点が挙げられます2)。
ハルシオンには成分を0.125mg含むハルシオン0.125mg錠と0.25mg含むハルシオン0.25mg錠の2種類があります。
1) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
2) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 インタビューフォーム
ハルシオンとマイスリーの違いや併用
ハルシオンと同じく超短時間型の睡眠導入剤としてマイスリーがあります。
ハルシオンとマイスリーの違いとして、まず、分類の違いがあり、ハルシオンはベンゾジアゼピン系、マイスリーは非ベンゾジアゼピン系となります。作用点にやや違いがあるため、マイスリニーにはハルシオンで見られる抗不安作用や筋弛緩作用がないとされています。ただし、厳密な使い分けはなく、医師の考えによるところが大きい面があります。
また、薬の依存性に関しては、動物実験の結果では身体依存性、精神依存性ともにマイスリーとハルシオンで同程度と推定されています3)。
薬の価格である薬価は、それぞれよく使われる規格で比較すると、ハルシオン0.25mgは1錠あたり13.8円、マイスリー5mgは1錠あたり40.6円となっており、ややマイスリーの方が割高となります。
なお、ハルシオンとマイスリーを併用するケースはありありません。医師からの指示を受けているような場合を除き、自己判断で併用するようなことは避けましょう。
3) マイスリー錠5mg/ マイスリー錠10mg インタビューフォーム
ハルシオンの効果
ハルシオンは不眠症の他、麻酔前投薬としての効果も認められている薬です。
ハルシオンの効能効果の詳細は以下の通りです。
1.不眠症
2.麻酔前投薬ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
ハルシオンの作用機序
ハルシオンで睡眠作用がもたらされる機序は、抑制性神経伝達物質であるGABA(γ-aminobutyric acid)の作用増強です。
GABAがGABAA受容体のβサブユニットに結合するとCl-チャネルが開口し脳が抑制されます。ハルシオンなどのベンゾジアゼピン系薬物は、GABA受容体に結合し、チャネルの開口頻度を増加させるなどにより睡眠作用をもたらします。
なお、ハルシオンの作用の強さは動物実験においてジアゼパム(代表製品:セルシンなど)の4~5倍とされていますが、特に睡眠増強作用及び抗不安作用は強く、各々ジアゼパムの約45倍(マウス)及び約10倍(ラット)とされています1)。
1) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
ハルシオンの実際の患者さんに対する効果
ハルシオンの実際の患者さんに対する効果は臨床試験において確認されています。
ハルシオンの臨床試験を合わせた結果では、不眠症に対して著効もしくは有効であった患者さんの割合は55.2%、やや有効まで含めると80.7%の有効率であることが確認されています。また、手術前の投与の有効率は97.9%とされています2)。
2) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 インタビューフォーム
ハルシオンの効果時間
ハルシオンは超短時間作用型に分類される睡眠導入剤であり、即効性があり作用時間は短い薬です。
具体的な効果発現時間の目安にになるデータとして、睡眠脳波による検討において睡眠までの時間を確認した試験結果があり、ハルシオンの成分を0.25mg使用した場合は14.7分、0.125mgの場合は16.0分という結果が得られています2)。
薬剤名 | 睡眠潜時 |
トリアゾラム0.5mg | 8.5分 |
トリアゾラム0.25mg | 14.7分 |
トリアゾラム0.125mg | 16.0分 |
プラセボ | 28.6分 |
上記のようにハルシオンは使用後速やかに効果が現れることが予想されます。
また、効果持続時間として参考になるのがハルシオンの血中での濃度が半分になる時間(半減期)のデータです。ベンゾジアゼンや非ベンゾジアゼピンの睡眠導入剤では薬剤の半減期と効果持続時間に一定の相関があると考えられています。ハルシオンの半減期は単回投与で2.9時間とされており1)、比較的短い効果持続時間が想定されます。
1) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
2) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 インタビューフォーム
ハルシオンの使い方
ハルシオンは不眠症に対しては、0.25mg錠を1回1錠寝る前に使用するのが一般的な使い方です。
ハルシオンの用法用量の詳細は以下の通りです。
1. 不眠症
通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。高度な不眠症には0.5mgを投与することができる。なお、年齢・症状・疾患などを考慮して適宜増減するが、高齢者には1回0.125mg~0.25mgまでとする。
2. 麻酔前投薬
手術前夜:通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。なお、年齢・症状・疾患などを考慮し、必要に応じ0.5mgを投与することができる。ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
ハルシオンが効かない場合は
ハルシオンが効かないと感じる場合は症状に対して薬があっていない可能性があります。
ハルシオンは不眠のタイプの中でも入眠障害に対する作用を得意としており、中途覚醒や早朝覚醒に対しては効果がないわけではないものの、より効果的な薬もあります。自分の不眠タイプをしっかり医師に伝えることが重要です。
また、0.125mg、0.25mgを使用している場合は、最大0.5mgまで増量することも可能性ですが、その判断は処方医の先生が行うため、自己判断で増やすことはせず、必ず医師に相談するようにしましょう。
その他、リファンピシン製剤などの薬物代謝酵素CYP3A4を誘導する薬を併用している場合は、ハルシオンの代謝が誘導させ濃度が低くなり効果が弱まる可能性があるため、どちらかの薬を変えるなどの対処も必要に応じて検討します。
上記のような対処をしても効かないと感じる場合は別の薬剤の方が効果的な可能性もあるため、やはり医師と相談の上、適切な薬を処方してもらうようにしましょう。
ハルシオンの副作用
ハルシオンの主な副作用はめまい・ふらつき(1.27%)、眠気(1.20%)、倦怠感(0.77%)、頭痛・頭重(0.70%)等であった1)、とされています。
特に眠気やふらつきに関しては、その危険性から車の運転などに関して注意喚起がされているため、ハルシオンを服用している場合は車の運転は控えるようにしましょう。
重要な基本的注意
本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
その他注意が必要な副作用として、ハルシオンの依存症と離脱症状が有ります。
一般的に数ヶ月連用したりすると依存症になる可能性があるとされています。依存症には身体依存と精神依存があり、身体依存には薬を使用しても効かなくなる耐性や、薬を使用しなくなったり量を減らしたりすると不眠、不安、幻覚などの離脱症状があります。精神依存は薬を欲する心理状態です。
離脱症状には痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想などがあるとされています。離脱症状の対処としては、漸減法と隔日法があり、漸減法は1〜2週間おきに薬の量を徐々に減らしていく方法、隔日法は週に1〜2日程度の休薬日を設けて徐々に薬を服用しない日を増やしていく方法です。離脱症状が心配されるケースや、一度休薬や減量をして離脱症状が出たケースでは上記のような方法が実施されることがあります。
使用する際はこれらの副作用を防ぐために必要最低限の使用が望ましいと言えるでしょう。
1) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
ハルシオンの致死量は
ハルシオンの過量投与により、傾眠、錯乱、協調運動障害、不明瞭言語を生じ、昏睡に至ることがあるとされており、死亡例の報告もあります1)。
過量投与は危険性が高いため、必ず使用量を守って使用することが大切です。
過量投与の対処法として、ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤のフルマゼニルを使用する手段もあります。症状が重い場合には医師の適切な処置を受けるようにしましょう。
なお、動物に対する単回投与毒性試験では、LD50(半数致死量)が経口使用ではラット、マウスいずれにおいても>7500mg/kgとされており2)、錠数換算では致死量は相当数の錠数となります。通常の誤飲で致死量まで至るケースはほとんどないと考えられますが、万が一誤飲をした場合はすぐに医師の処置を受けるようにしましょう。
LD50(mg/kg) |
投与経路 | ラット | マウス | ||
雄 | 雌 | 雄 | 雌 | |
経口 | >7500 | >7500 | >7500 | >7500 |
皮下 | >5000 | >5000 | >5000 | >5000 |
腹腔内 | 5000 | 3300 | 3450 | 1625 |
1) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
2) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 インタビューフォーム
ハルシオンの飲み合わせ
ハルシオンは他の薬との飲み合わせに関して、併用できない薬(併用禁忌薬)、併用に注意が必要な薬(併用注意薬)がいくつかあります1)。
CYP3Aを強く阻害する薬剤とは併用できない薬(併用禁忌薬)として注意喚起されています1)。併用禁忌とされている理由としてハルシオンの血中での濃度が高くなり、ハルシオンの作用が強く出る可能性があるためです。
CYP3Aを強く阻害する薬剤のとして、イトラコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、ミコナゾール、HIVプロテアーゼ阻害剤、エファビレンツ、テラプレビルが挙げられています。
併用に注意が必要な薬(併用注意薬)としては以下のものがあります。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
アルコール 中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等) |
|
エリスロマイシン クラリスロマイシン ジョサマイシン シメチジン ジルチアゼム メシル酸イマチニブ |
クラリス、タガメット、ヘルベッサー |
キヌプリスチン ダルホプリスチン |
|
リファンピシン | アプテシン、リファジン |
モノアミン酸化酵素阻害剤 | エフピー |
このうち比較的多くの人で使用するケースがあるものとして抗生物質のクラリスロマイシンが挙げられます。クラリスロマイシンはクラリスやクラリシッドなどの製品名としても販売されており、風邪をひいたときや副鼻腔炎などでも非常によく処方される抗生物質の一つであり、多くの人が使用する機会があります。ハルシオンを使用中は別の病院、クリニックにかかる場合にも必ず使用している旨を伝えるようしましょう。
ハルシオン使用中はお酒(アルコール)は控える
ハルシオンとお酒(アルコール)は、併用注意として注意喚起されています。
併用注意とは一緒に飲むことが禁止されているわけではないものの、飲み合わせには注意が必要なものです。
ハルシオンがアルコールと併用注意な理由として、相加的な中枢抑制作用を示すことが考えられ、精神機能、知覚・運動機能の低下を起こすおそれがある、とされています。
絶対に併用できないわけではありませんが、ハルシオン服用期間中は極力お酒は控えるようにしましょう。また、事前に医師に相談し、アルコールを飲む機会があった場合に、飲む量や時間帯など取り決めておくなどの対策も良いでしょう。
ハルシオンの授乳中の使用
ハルシオンは授乳中の場合は使用しない、もしくは使用する場合は授乳を中止することが推奨されています。
授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること。[ヒト母乳中へ移行し、新生児に嗜眠、体重減少等を起こすことが他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されており、また黄疸を増強する可能性がある。]
ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、同じベンゾジアゼピン系の薬剤で乳汁中に移行することが確認されているためです。
専門家による見解の例として、大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでは、単回使用なら授乳可能であるものの、長期連用は要注意としており「乳児に有害作用を及ぼす可能性があり、授乳婦へ使用する場合は注意 / 安全性を示す情報が見当たらず、より安全な薬剤の使用を考慮」という見解です4)。
単回使用なら授乳可能。長期連用時は要注意、児の傾眠をモニターすること。
母乳とくすりハンドブック
実際に授乳中にハルシオンを使用するかは、処方医の先生の判断となります。ハルシオンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
4) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
ハルシオンの妊娠中の使用
ハルシオンは妊娠中の使用に関して、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、実際に使用するかは医師の判断となります。
(1) 妊婦(3ヵ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物の投与を受けた患者の中に奇形を有する児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告がある。]
(2) 妊娠後期の婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[ベンゾジアゼピン系化合物で新生児に哺乳困難、嘔吐、活動低下、筋緊張低下、過緊張、嗜眠、傾眠、呼吸抑制・無呼吸、チアノーゼ、易刺激性、神経過敏、振戦、低体温、頻脈等を起こすことが報告されている。なお、これらの症状は、離脱症状あるいは新生児仮死として報告される場合もある。また、ベンゾジアゼピン系化合物で新生児に黄疸の増強を起こすことが報告されている。]ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、ハルシオンの動物実験では催奇形性は認められていないものの2)、他のベンゾジアゼピン系薬剤において、胎児、新生児に対して一定のリスクが確認されているためです。
実際に妊娠中にハルシオンを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。ハルシオンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) ハルシオン 0.125mg錠/ ハルシオン 0.25mg錠 インタビューフォーム
ハルシオンの薬価・ジェネリック
ハルシオンの薬価は、2016年4月の改定時点(2016年4月〜2018年3月まで)で、ハルシオン0.25mg錠が1錠あたり13.8円、ハルシオン0.125mg錠が9.5円となっています。
なお、ハルシオンにはジェネリック医薬品が販売されており、ハルラック、トリアゾラムなどの名称で販売されています。ハルシオンのジェネリック医薬品の薬価は0.25mgで5.8円、0.125mg錠で5.6円であり、ハルシオンを使用するよりも薬局でかかる費用が安くなるケースがあります。
ハルシオンの市販・通販での購入
ハルシオンの成分であるトリアゾラムは通販や市販で買うことはできません。
ハルシオンは通販などの個人輸入でも購入することはできません。この理由はハルシオンが向精神薬に分類されており、個人輸入も規制の対象となるためです。
また、ハルシオンの成分は市販薬には使用できない成分とされており、ハルシオンを含むベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤は市販薬としては販売が許可されていません。
ハルシオンは処方薬の中でも「処方箋医薬品」に分類され、必ず処方箋が必要な医薬品に該当します。処方薬の中には「処方箋医薬品以外の医薬品」に分類される薬もあり、この場合は必ずしも処方箋がなくても薬局で買えるケースがありますが、ハルシオンは必ず処方箋が必要な薬となります。
以上のようにハルシオンはその成分も含め、市販で購入することはできず、必ず医師の処方箋が必要となる薬と言えます。
なお、市販で販売されているドリエルなどの睡眠補助剤はハルシオンなどの睡眠導入剤とは全く違った作用機序の薬です。ハルシオンと同等の効果は得られず、代替薬として使用するのは適していませんので注意しましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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