クラリスドライシロップの味などの特徴、風邪、鼻水、中耳炎、マイコプラズマ、インフルエンザに対する効果、体重ごとの用量、小児が飲まない場合の対処法、牛乳などの飲み合わせなどについて添付文書等から解説していきます。
Contents
クラリスドライシロップの特徴|見た目や味は?
クラリスドライシロップはクラリスロマイシンの成分を含むマクロライド系の抗生物質であり、主に小児の風邪のような症状の咽頭炎、肺炎、マイコプラズマ感染の他、耳鼻科領域の中耳炎や副鼻腔炎などにも使われる粉薬です。
クラリスドライシロップはピンク色の甘いスロトベリー味
クラリスドライシロップの見た目の特徴として、ピンク色の粉薬であり、味は甘いストロベリー味となります。
小児でも比較的飲みやすい粉薬となっています。
クラリスドライシロップの効果
小児に対して使用される薬であり、風邪のような症状の咽頭炎、肺炎、マイコプラズマ感染の他、耳鼻科領域の中耳炎や副鼻腔炎など様々な感染症に対して使用されます。また、まれにインフルエンザに感染したときにも使用されることがあります。
クラリスドライシロップの効能効果の詳細は以下の通りです。
1.一般感染症
〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、百日咳菌、カンピロバクター属、クラミジア属、マイコプラズマ属
〈適応症〉
●表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
●外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
●咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
●感染性腸炎
●中耳炎、副鼻腔炎
●猩紅熱
●百日咳
2.後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症
〈適応菌種〉
本剤に感性のマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)
〈適応症〉
後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症クラリスドライシロップ10%小児用 添付文書
鼻水が出る症状の副鼻腔炎や中耳炎にもよく使用される
クラリスドライシロップは前述のとおり、耳鼻科領域の副鼻腔炎や中耳炎に対しても使用されます1)。
副鼻腔炎は鼻のまわりの骨にある「副鼻腔」という空洞部分に、細菌やウイルスの感染による炎症が起こり、鼻水や鼻づまりの症状がでます。しばしば慢性化するケースがあります。
中耳炎は細菌が耳まで入って炎症を起こすもので、耳の痛みがでます。
急性の副鼻腔炎や中耳炎に対しては、クラリスドライシロップの抗菌作用を期待して使用します。
一方、近年は慢性の副鼻腔炎に対しても使用されるケースが多く、この場合はクラリスドライシロップの免疫調節機能を期待して使用します。クラリスドライシロップなどのマクロライド系には免疫を調節する作用があることがわかってきており、慢性副鼻腔炎に対しては、マクロライド系の少量長期投与が有効であるとされています。
クラリスドライシロップなどのマクロライド療法では、慢性副鼻腔炎に対しては60〜80%の有効率が期待でき、2〜4週間程度で効果が現れ始め、1〜3ヶ月目までは投与日数が増えるにつれて有効率も高くなります2)。
少量長期投与で使用する場合は、服用期間が長期になるほか、用量も1/2〜1/4になることがあり、このような使い方をしている場合は、処方医の先生が免疫調節作用を期待していると考えられます。
1) クラリスドライシロップ10%小児用 添付文書
2) 門田淳一 ほか; マクロライド系薬の新しい使い方; 南江堂, 2015
風邪に対する直接の効果はないが、使用されることもある
クラリスドライシロップが風邪に対して処方される理由の例として、風邪が悪化した時の細菌感染を疑っている時や風邪による二次感染を防ぐ目的が挙げられます。
このような目的に対しては一定の効果が期待できます。一般的な風邪を引き起こすウイルスに対して、クラリス200のような抗生物質は効果がありません。ウイルスと細菌は別であるため、細菌に対して効果があるクラリスドライシロップもウイルスに対しては全く効果がありません。
しかし、風邪によって炎症を起こし、結果として細菌感染につながるケースや、ウイルス性の風邪以外に、溶連菌感染などの細菌感染による咽頭炎や猩紅熱が疑われる場合には抗生物質が効果的であるため、医師が処方するケースがあります。
一般的な風邪には効果がないため、風邪を引いた時にクラリスドライシロップが手元に残っていた、という場合でも自己判断で使用することはやめましょう。
マイコプラズマに対しては優先的に使用される
クラリスドライシロップはマイコプラズマ肺炎にかかった時には優先的に使用される薬のひとつです。
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011ではマイコプラズマ肺炎に対する治療ではクラリスドライシロップなどのマクロライド系の抗生物質を第一選択として推奨しています3)。その理由として、マクロライド感性の肺炎マイコプラズマに対するマクロライド系薬の最小発育阻止濃度(MIC)は極めて低値であり、治療終了時には気道から除菌されるという点が挙げられています。最小発育阻止濃度(MIC)が極めて低値ということは、抗生物質が少ない量でも非常に高い効果を得られるということを意味し、クラリスドライシロップなどのマクロライド系が、マイコプラズマに対して非常に効果的ということになります。
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は細菌のひとつであり、特徴として、他の細菌が通常持っている細胞壁という組織を持ちません。そのため、細菌の細胞壁をターゲットとするペニシリン系(サワシリン、ワイドシリン、パセトシンなど)、セフェム系(フロモックス、メイアクトなど)などの抗生物質では効果がないという特徴があります。
感染は飛沫感染と接触感染により、濃厚接触が必要とされているため、感染拡大の速度は遅いとされています。マイコプラズマの潜伏期は2〜3週間では感染後は発熱、頭痛、咳などの風邪のような症状を特徴とします。特に咳に関しては3〜4週間と長く続くことが知られており、最初は乾いた咳で徐々に痰が絡むような湿性の咳になります4)。
クラリスドライシロップをマイコプラズマに対して使用する場合は、服薬期間は10日間ととされており、効果がある場合は2〜3日で解熱すること多いとされています。
なお、クラリスドライシロップは従来はマイコプラズマに対して非常に効果的と考えられていましたが、近年はマイコプラズマのクラリスドライシロップを含めたマクロライド系抗生物質に対する耐性が問題となっています。
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011ではマクロライド耐性マイコプラズであることも考慮し、マクロライド治療で48時間以上の発熱が持続した場合はトスフロキサシン(オゼックス)もしくはミノサイクリン(ミノマイシン)を使用することが推奨されています3)。
ただし、肺炎マイコプラズマ感染症は自然治癒傾向があるため、マクロライド耐性株による肺炎マイコプラズマ肺炎の一部の症例は、効果が期待できないマクロライド系薬を投与して
も投与後 2〜3 日以内に解熱することや、マクロライド系薬の前投薬与がないときのマイコプラスマの耐性率は 50%以下(実際にはマクロライド耐性でない場合が50%以上)であるということも確認されているため、第一選択はあくまでマクロライド系となります。
上記のようにマクロライド耐性マイコプラズマに対してもマクロライドで最終的に治癒するようなことが起きる理由の一つとして、マイコプラズマによる炎症は、細菌による直接障害よりも、人に免疫を司っているタンパク質のインターロイキン(IL)のうちIL-8、IL-18などによる免疫反応が主要因と考えられるためです。近年の研究では、マクロライド系の抗生物質には抗菌作用の他に、免疫系に影響を与えることがわかっており、抗菌作用はあまり効果がなくても、免疫作用によりマイコプラズマに対して作用することが示唆されています2)。
このように、クラリスドライシロップはマイコプラズマに対して耐性の問題があるものの、現段階では最も使用される薬の一つとされ、非常に頼りにされています。
なお、マイコプラズマ感染後の登園・登校の基準は、熱や咳などの主要な症状が改善すれば可とされていますが5)、可能であれば医師と相談しながら決めるのが望ましいでしょう。
2) 門田淳一 ほか; マクロライド系薬の新しい使い方; 南江堂, 2015
3) 小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2011
4) 国立感染症研究所 http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html
5) American Academy of Pediatrics. 2012 Report of the committee on infectious
diseases. 29th eds, p520,801, 2012.
インフルエンザに使用されるケースもある
クラリスドライシロップなどのマクロライド系抗生物質は、インフルエンザに対しても使用されるケースがあります。
インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスに対して、クラリスドライシロップは直接の作用はありません。クラリスドライシロップをインフルエンザに使用する理由の一つが、インフルエンザに続発する細菌の二次感染を防ぐ目的が挙げられます。
そして、別の理由として近年注目されているのが、クラリスドライシロップの免疫賦活化作用です。
インフルエンザの治療では一般的にタミフルやイナビルなどの抗インフルエンザ薬を使用しますが、この抗インフルエンザ薬を使用すると、感染時の獲得免疫が不十分となるなど、翌年以降の再感染率が高くなります。この抗インフルエンザ薬にクラリスを併用すると、その免疫賦活化作用により抗インフルエンザ薬の使用によって免疫が不十分になる欠点をカバーすることが確認されました2)。
このようにクラリスドライシロップはインフルエンザウイルスに対する直接の効果はなくても、その免疫作用によってインフルエンザに対して使用されることがあります。
2) 門田淳一 ほか; マクロライド系薬の新しい使い方; 南江堂, 2015
クラリスドライシロップの使い方や飲み方|体重どこの用量
クラリスドライシロップの一般的な用量は体重1kgあたり、10〜15mgの成分量(製剤として0.1〜0.15g)を1日に使用します。
クラリスドライシロップの一般感染症の用法用量は以下の通りです。
ドライシロップ:用時懸濁し、通常、小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり10~15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。
レジオネラ肺炎に対しては、1日体重1kgあたり15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。クラリスドライシロップ10%小児用 添付文書
体重ごとの用量は以下の通りとなります6)。
体重(kg) | 1日投与量の目安:製剤量(g) (2〜3回に分ける) |
5〜10 | 0.5〜1.5 |
11〜15 | 1.1〜2.2 |
16〜20 | 1.6〜3.0 |
20〜25 | 2.0〜3.7 |
26〜30 | 2.6〜4.0 |
クラリスドライシロップの通常の飲み方は少量の水(小さじ1〜2杯)に混ぜて飲ませます。作り置きはせず、飲ませる直前に混ぜましょう。
また、薬を飲ませた後は、すぐにお水を飲ませてあげましょう。口の中に残った薬で苦く感じることがあります。水だけでは不十分と感じる場合は、薬を飲んだ後にチョコレートやアイスクリームを食べされるのも苦味を防ぐ方法とされています7)。
6) クラリス投与量早見表 一部改変
7) クラリスドライシロップの飲ませ方
小児が飲まない場合の対処法
小児がクラリスドライシロップを飲まない場合の対処法として、他の食べ物や飲み物に混ぜて飲ませる方法があります。
クラリスドライシロップを混ぜることが可能なものとして、アイスクリーム、プリン、お砂糖、コンデンスミルク、ココアパウダー、クリームパウダー・ミルク(コーヒー用)、ピーナッツクリームなどがあります8)。メーカーからの資料には記載がありませんが、牛乳でも問題ないと考えられています。
また、ヨーグルト、フルーツジュース、スポーツドリンク、フルーツ味の服用補助ゼリーは混ぜると苦味が出るため、避けるようにしましょう。
8) クラリスドライシロップを服用されている方へ
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
コメント