トラムセットの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中の使用、妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入等について添付文書等から解説していきます。
Contents
トラムセットの特徴
トラムセットはオピオイド鎮痛薬のトラマドールと解熱鎮痛成分のアセトアミノフェンが配合された鎮痛剤であり、他の鎮痛剤で効果が不十分な慢性的な痛みや抜歯後の痛みに対して効果が認められている薬です1)。
トラムセットの特徴して、強力な鎮痛作用を持つオピオイド鎮痛薬トラマドールと、市販でも使用される解熱鎮痛成分のアセトアミノフェンを含み、非常に高い鎮痛効果が期待できる薬であり、世界70以上の国と地域で承認されている薬です2)。
トラムセットの成分の配合量はトラマドール塩酸塩が37.5mg、アセトアミノフェンが325mgとされています。
1) トラムセット配合錠 添付文書
2) トラムセット配合錠 インタビューフォーム
トラムセットの効果と適応
トラムセットは他のヒオイピオド鎮痛剤では治らない慢性疼痛や抜歯後の痛みに対して適応がある薬です。
トラムセットの効能効果(適応)の詳細は以下の通りです。
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛
非がん性慢性疼痛
抜歯後の疼痛トラムセット配合錠 添付文書
トラムセットの作用機序
トラムセットの作用機序は、トラマドールのオピオイド作用とアセトアミノフェン中枢神経系の鎮痛作用によるものです。
トラマドールはオピオイド受容体へ作用し、興奮性伝達物質の放出抑制による鎮痛効果を示します。また、ノルアドレナリン、セロトニンの再取り込み阻害により、痛みの抑制に関わる神経である下行抑制路の活性化作用も併せ持つとされています。
アセトアミノフェンの作用機序は詳細は不明とされているものの、鎮痛作用に関しては痛みの感覚の閾値を高める(痛みを感じにくくする)ことによるものと考えられています。
このようにトラムセットは異なる機序を持つの2種類の鎮痛成分を配合することにより高い鎮痛効果が期待できる薬です。
トラムセットの効果時間
トラムセットの効果時間として、抜歯後に痛みに対して使用した臨床試験の結果が参考となります。
下顎埋伏智歯(親知らず)の抜歯術を施行し痛みが出た患者さんに対して、効果がでるまでの時間(痛みの程度が「なし」又は「軽度」に改善するまでの時間)の中央値は約30分であり、その後に疼痛が再発した患者における効果持続時間(奏効後に痛みの程度が「中等度」又は「高度」に悪化するまでの時間)の中央値は約270分(約4.5時間)であった1)、とされています。
上記の結果からトラムセットは非常に早い効果発現が期待できる反面、効果を持続させたい場合は1日数回使用する必要があると考えられます。
1) トラムセット配合錠 添付文書
トラムセットの実際の患者さんに対する効果
トラムセットの実際の患者さんに対する効果は、臨床試験において確認さています。
臨床試験の結果の例をあげると、下顎埋伏智歯(親知らず)の抜歯術を施行し痛みが出た患者さんに対しては、トラムセットの成分であるトラマドールの単独投与群、アセトアミノフェンの単独投与群よりも、トラムセット投与群の方が投与後8時間までの痛みの改善度が統計学的に有意に高かったことが確認されています1)。
1) トラムセット配合錠 添付文書
トラムセットの使い方
トラムセットは1回1〜2錠を1日数回使用する使い方は一般的です。
トラムセットの用法用量の詳細は以下の通りです。
非がん性慢性疼痛:
通常、成人には、1回1錠、1日4回経口投与する。投与間隔は4時間以上空けること。
なお、症状に応じて適宜増減するが、1回2錠、1日8錠を超えて投与しないこと。また、空腹時の投与は避けることが望ましい。
抜歯後の疼痛:
通常、成人には、1回2錠を経口投与する。
なお、追加投与する場合には、投与間隔を4時間以上空け、1回2錠、1日8錠を超えて投与しないこと。また、空腹時の投与は避けることが望ましい。トラムセット配合錠 添付文書
トラムセットの使用間隔は4時間以上
前述の通り、トラムセットは1度使用してから4時間以上の間隔を空けて使用するように注意喚起されています。
トラムセットの効果持続時間は前述の通り4時間程度は持続することが想定されるため、必ず投与間隔をまもり過量摂取にならないよう注意しましょう。
トラムセットが効かない場合
トラムセットが効かないというケースではまず用法用量の確認をしましょう。
前述の通り、抜歯後は1回2錠使用します。用量が間違っていないかまずは確認しましょう。抜歯後以外は通常1回1錠となりますが、最大で1日4回、1回2錠を使用するケースもあります。抜歯後以外に使用している場合もやはり医師からの指示通りに使用できているか確認し、正しい用法用量で使用するようにしましょう。
正しい使用方法で使っているにもかかわらず効かないと感じる場合は、痛みの種類と薬があっていない可能性があります。医師にどのような痛みであるかをよく伝え場合によっては処方内容を変更してもらうようにしましょう。
トラムセットの副作用
トラマールは比較的多種類の副作用が報告されている薬剤です。
主な副作用は、悪心(吐き気;41.4%)、嘔吐(26.2%)、傾眠(眠気;25.9%)、便秘(21.2%)、浮動性めまい(18.9%)などとされています1)。
便秘はオピオイド受容体刺激による胃や小腸の蠕動運動の抑制が原因の一つと考えれ、悪心や嘔吐はドパミン遊離によるドパミン受容体刺激によることが原因の一つと考えられます3)。
なお、トラムセットによるオピオイド作用が下忍の吐き気や傾眠(眠気)は、数日間で耐性ができることが多いため4),5)、耐えられる範囲であれば数日間様子を見ても良いでしょう。
その他、頭痛の副作用も一定の頻度(8.0%)で報告されており2)、オピオイド系を含む鎮痛薬では共通の副作用であるため注意するべき副作用の一つと言えます。
1) トラムセット配合錠 添付文書
2) トラムセット配合錠 インタビューフォーム
3) 副作用症状のメカニズム 虎の巻, 日経BP
4) トラムセット配合錠 新医薬品の「使用上の注意」の解説
5) がん疼痛の薬物治療に関するガイドライン
トラムセットの離脱症状(退薬症)
トラムセットなどのオピオイド作用薬は突然中止するとあくび、吐き気などの離脱症状(退薬症候)が見られる可能性があります。
これらの症状を防ぐ方法としてトラムセットを中止する際に徐々に減量することがあります。
トラムセットを中止する際には、自分は不要と思っても医師がこれらを考慮して減量しながら中止していくケースもあるため、指示通りに使用するようにしましょう。
トラムセットの飲み合わせ
トラムセットは他の薬との飲み合わせに関して、併用できないもの、併用に注意が必要な薬がいくつかあります1)。
エフピーなどのセレギリン塩酸塩を含むモノアミン酸化酵素阻害剤はトラムセットとは併用できない薬(併用禁忌薬)として注意喚起されています1)。併用禁忌の理由として錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等の症状がでるセロトニン症候群などの副作用が報告されているためです。エフピーなどのモノアミン酸化酵素阻害剤を投与してからトラムセットを使用する場合は14日の間隔、トラムセットを使用してからモノアミン酸化酵素阻害剤を使用する場合は2〜3日の間隔を空けることが推奨されています。
また、トラムセットにはトラマドールとアセトアミノフェンの二つの成分が含まれている薬であり、これらを含む他の製剤とは基本的に併用を避けるよう警告されています1)。トラマドールの代表的な製品であるトラマールやワントラム、アセトアミノフェンの代表的な製品であるカロナールやコカールなどを使用している場合はその旨を医師や薬剤師に必ず伝えるようにしましょう。
その他、併用に注意が必要なものは以下の通りです。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
オピオイド鎮痛剤 中枢神経抑制剤 |
|
三環系抗うつ剤 セロトニン作用薬 |
アモキサン、ジェイゾロフト |
リネゾリド | ザイボックス |
カルバマゼピン フェノバルビタール フェニトイン プリミドン リファンピシン イソニアジド |
テグレトール |
アルコール(飲酒) | |
キニジン | |
クマリン系抗凝血剤 | ワーファリン |
ジゴキシン | |
オンダンセトロン塩酸塩水和物 | ゾフラン |
ブプレノルフィン、ペンタゾシン等 | ソレゴン、レペタン |
エチニルエストラジオール含有製剤 | トリキュラー、マーベロン |
上記のうち、特に注意したいものの一つとしてアルコールとの併用があります。トラムセットとアルコールは、併用禁忌(併用できない)ではないものの、併用注意とされており、一定の危険性が伴います。
トラムセットとアルコールが併用注意の理由として、トラムセットとアルコールが共に中枢神経系を抑制する作用を有しており、呼吸抑制が生じる可能性があるためとされています。
上記の理由からトラムセットを使用中の場合は基本的にはアルコールを避けるようにし、お酒の席があるような場合は、予め医師と薬の使用について相談しておくなどするようにしましょう。
1) トラムセット配合錠 添付文書
トラムセットとロキソニンなどとは併用されるケースも
トラムセットはロキソニンなどのいわゆる一般的な解熱鎮痛剤NSAIDsとは異なる作用を持つ薬です。したがって、中には異なる作用機序のトラムセットとロキソニンなどのNSAIDsを併用するケースもあります。
しかし、一般的にはロキソニンなどのNSAIDsで効果がない場合にトラムセットに切り替えるケースが多く、自己判断でトラムセットにロキソニンなどの痛み止めを併用するようなことは避けるようしましょう。
トラムセットと市販の解熱鎮痛剤、風邪薬は基本的に避ける
トラムセットを使用している期間は基本亭に市販の解熱鎮痛剤や風邪薬は自己判断で使用するのは避けるようにしましょう。
その理由の一つとして、トラムセットに含まれる成分のうち、アセトアミノフェンは非常に多くの市販の解熱鎮痛剤や風邪薬に使用されている成分であり、併用することによって過量摂取となり肝疾患につながる可能性があります。
トラムセットを使用している期間は市販薬を使用するときには注意をするようにしましょう。
トラムセットの授乳中の使用
トラムセットは授乳中の使用する場合は基本的に授乳を中止するよう注意喚起されています。
授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には、授乳を中止すること。[トラマドールは、乳汁中へ移行することが報告されている。]
トラムセット配合錠 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、トラムセットの成分であるトラマドールは乳汁中に移行することが確認されているためです。
また、トラマドールの成分は12歳未満の小児には使用しないよう注意喚起されており、母乳経由でも摂取しないほうが望ましいと考えられます。
実際に授乳中にトラムセットを使用するかは、処方医の先生の判断が必要です。トラムセットに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
トラムセットの妊娠中の使用
トラムセットの妊娠中の使用に関しては、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起されており、実際に使用するかは医師の判断となります。
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。トラマドールは胎盤関門を通過し、新生児に痙攣発作、身体的依存及び退薬症候、並びに胎児死亡及び死産が報告されている。また、動物実験で、トラマドールは器官形成、骨化及び出生児の生存に影響を及ぼすことが報告されている。]
2.妊娠後期の婦人へのアセトアミノフェンの投与により胎児に動脈管収縮を起こすことがある。
3.アセトアミノフェンは妊娠後期のラットで胎児に軽度の動脈管収縮を起こすことが報告されている。トラムセット配合錠 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、トラムセットの成分であるトラマドールは胎盤を通過し、動物実験において、器官形成、骨化及び出生児の生存に影響することが確認されているためです。
また、アセトアミノフェンの成分に関しても特に妊娠後期において胎児への一定のリスクが注意喚起されています。
実際に妊娠中にトラムセットを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。トラムセットに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
トラムセットの薬価、ジェネリック
トラムセット配合錠の2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価はで1錠あたり70.1円となっています。
鎮痛剤として最もよく使われているロキソニンの1錠あたりの薬価が15.9円ですので、比較するとやや高いと言えます。
なお、トラムセット配合錠には現時点でジェネリック医薬品は販売されていません。
トラムセットの市販での購入
トラムセットの成分であるトラマドールを含んだ薬は市販で買うことはできません。また、トラマドールと同系統の成分も市販薬として販売されていません。
トラマドールの成分は痛み止めの中でも特別な知識が必要な成分であり、市販薬として販売される可能性は今後も高くないと言えます。
もうひとつの成分であるアセトアミノフェンは市販でも数多くの解熱鎮痛剤、総合感冒薬(風邪薬)に配合されている成分ですが、アセトアミノフェンのみではトラムセットと同程度の鎮痛効果は期待できません。
トラムセットの成分を使用したい場合は市販ではなく、必ず医師の適切な診察を受けた上で処方してもらうようにしましょう。
トラムセットとリリカやロキソニンとの違い
トラムセットは鎮痛剤の一つであり、同じ鎮痛剤には様々な薬があります。痛みに対して最も使われているロキソニンや神経の痛みによく使われるリリカなどが代表的なものです。
トラムセットは強い鎮痛効果が期待出来るオピオイド系のトラマドール塩酸塩と、相乗効果の期待出来るアセトアミノフェンが配合されている薬であり、ロキソニンなどのNSAIDsと呼ばれる一般的な解熱鎮痛剤よりも高い鎮痛効果が期待出来る薬です。一方、神経の痛みに対しても効果があるものの、リリカとは適応が異なり、疾患にもよるものの神経の痛みに対してはリリカの方が向いているケースもあると考えられます。また、トラムセットとリリカは併用されるケースもあります。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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