アスベリンの効果や小児に使われるなどの特徴、眠気などの副作用、尿の着色、ムコダインやペリアクチンなどとの併用、授乳中の使用や影響、効かない場合など添付文書等から解説します。
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アスベリンの種類と特徴|小児にもよく使われる咳止め
アスベリンは風邪をひいたときなどに咳止めとしてよく使われる薬です。咳止めの効果の他にも去痰作用をもつという特徴の他、その安全性から小児にも非常によく使われるという特徴があります。
アスベリンには以下の様な種類があります。
・アスベリン錠10
・アスベリン錠20
・アスベリン散10%
・アスベリンドライシロップ2%
・アスベリンシロップ0.5%
・アスベリンシロップ「調剤用」2%
アスベリン錠10とアスベリン錠20は主に大人で、他のアスベリン散やアスベリンドライシロップ、アスベリンシロップは小児で使われることが多い薬です。
アスベリンの効果と効果時間
アスベリンは咳を止める効果(鎮咳効果)の他に痰を出しやすくする効果(去痰効果)もあるとされています。
効果や効果時間についても詳しく確認していきましょう。
アスベリンは鎮咳効果と去痰効果を併せ持つ薬
アスベリンは咳止めの効果の他にも痰を切れやすくする効果があることが知られています。
アスベリンの鎮咳効果は脳における咳中枢に直接作用することで、咳が出ることを抑制します。
アスベリンの去痰作用は気管支腺分泌亢進作用と気道粘膜線毛上皮運動亢進作用という作用によってもたらされます。
気管支腺分泌亢進作用は簡単に言うと痰を薄めて出しやすくする作用であり、アスベリンのこの作用はブロムヘキシン(ビソルボン)と同程度の効果があるとされています1)。
気道粘膜線毛上皮運動亢進作用は痰がある気道において、痰を出す働きをもつ腺毛の働きを高めることによって、痰を出しやすくすることであり、その効果はアスベリンを使用した30分後に働きが1.5倍になるということが確認されています1)。
1) アスベリン 添付文書
アスベリンの効能効果は風邪や気管支炎における咳止めと痰きり
アスベリンの効能効果(適応疾患)は風邪を引いた時の咳止めや痰切りです。
アスベリンの効能効果の詳細は以下の通りです。
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
感冒、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症アスベリン 添付文書
アスベリンは30分〜1時間で効果が出て、5〜6時間効果が持続する
アスベリンの効果が出るまでの時間は30分〜1時間後であり、効果の持続時間は5〜6時間後までと考えられています2),3)。
これらの効果時間はイヌにおける動物実験でのデータであり、人におけるデータではありませんが、人においてはアスベリンの血中濃度の試験が行われており、その結果は最高の血中濃度に達するまでの時間が1.3時間であり、さらにその濃度が半分になるまでの時間である半減期が1.8時間という結果が得られています1)。血中濃度のデータは薬の効果時間とおおよそ送還することが多いため、これらの結果から人においても上記の効果発現時間、効果持続時間が妥当な結果ということが示唆されます。
1) アスベリン 添付文書
2) 檜垣 鴻 他:薬学研究 1959;31(5):183-198
3) 鈴木省吾 他:基礎と臨床 1973;7(13):3279-3285
アスベリンが効かない場合は?
アスベリンが効かない場合にはさらに効果が強い咳止めに変えてもらうという方法があります。
アスベリンは非常に安全性が高い反面、効果も穏やかと言えます。アスベリンは中枢性鎮咳薬の中でも非麻薬性に分類される鎮咳薬です。非麻薬性の中でもより強い成分としてデキストロメトルファン(商品名:メジコン)などがあり、ジヒドロコデインリン酸塩(商品名:フスコデなど)という麻薬性の鎮咳薬はさらに効果が強いとされています。
アスベリンが効かない場合にはこれらの成分に処方を変えてもらうのが対処の一つと言えます。ただし、人によってはアスベリンの方が効果が高いと感じるケースや、メジコンやフスコデが向かない人もいるため、最終的な処方の内容は医師の判断で決まることになります。
また、アスベリンが効かないと感じる場合にはまずは正しい用法用量で使用できているかを確認してみましょう。アスベリンは1日に3回程度に分けて使用することが多い薬です。1日1回しか使用してない場合などは効果がすでに切れてしまっており、効かないと感じている可能性もあります。必ず正しい用法用量で使用するようにしましょう。
アスベリンの用法用量の詳細は以下の通りです。
通常成人には、チペピジンヒベンズ酸塩として1日66.5~132.9mg(チペピジンクエン酸塩60~120mg相当量)を3回に分割経口投与する。
小児には、チペピジンヒベンズ酸塩として1日1歳未満5.54~22.1mg(同5~20mg相当量)、1歳以上3歳未満11.1~27.7mg(同10~25mg相当量)、3歳以上6歳未満16.6~44.3mg(同15~40mg相当量)を3回に分割経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減する。アスベリン 添付文書
アスベリンの副作用|眠気や尿の着色など
アスベリンはその安全性から小児も非常によく使われる薬であり、副作用が出るようなことはほとんどありません。
その中でも報告が上がっている副作用としては、食欲不振、便秘、眠気などがあります。
ただし、これらの副作用に関しても頻度は最も高いもので食欲不振の1.1%であり1)、ほとんどの人が副作用を経験することはないと言えるでしょう。
重大な副作用として唯一注意喚起されているのが、アナフィラキシー様症状です。アナフィラキシーは咳嗽、腹痛、嘔吐、発疹、呼吸困難などの症状が同時に現れる副作用であり、比較的どの薬でもごく稀に認めらることがある副作用です。このような重い副作用は、薬を正しく使用していればまず起こることはありませんが、万が一このような症状が現れた場合にはすぐに医師の処置を受ける様にしましょう。
1) アスベリン 添付文書
アスベリンで尿が赤くなるのは副作用ではない
アスベリンを使用すると赤い着色尿が出ることがあります。
これは体に有害な副作用ではなく、薬の代謝物が赤みがかったものであることが原因です。特に健康に問題がない現象ですので、心配する必要はありません。
アスベリンの飲み合わせ|ムコダインやペリアクチン、トランサミンなどとの混合、併用は
アスベリンはムコダイン、ペリアクチンといった薬と問題なく混合し併用できる薬です。大人ではロキソニンやトランサミンなどとも問題なく併用される薬です。
アスベリンは原則として併用できない薬や併用に注意が必要な薬はありません。小児では特にアスベリン散やアスベリンドライシロップがムコダイン(成分名:カルボシステイン)という去痰薬や、ペリアクチン(成分名:シプロヘプタジン)という風邪の鼻水やアレルギーに使われる薬と混合して処方されるケースが多い薬ですが、これらの組み合わせも全く問題ないと言えるでしょう。
アスベリンの授乳中の使用
アスベリンは授乳中でも使用出来る薬と言えます。
まず、添付文書において授乳中に注意が必要な旨の記載はありません。さらに、アスベリンは0歳の乳児にも使用される薬であり、万が一母乳経由で乳児が摂取しても大きな影響はないと考えられます。
これらの点からアスベリンは授乳中の方でも安全に使用出来る薬と考えられます。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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