毎年流行するインフルエンザですが、いざかかった時にその対処に困ることがあるとかと思います。一番重要なことは可能な限り早期に医師の適切な診察を受けることですが、市販で売られている薬の中でもインフルエンザに効果が期待できたり、使用出来るものがあります。
インフルエンザにかかった時は医師の診察を大前提としながらも、もしもの時の予備知識として市販薬について確認していきます。
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基本は医師の診察を必ず受ける
インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされる疾患です。インフルエンザウイルスは感染力が非常に強いため、一人のインフルエンザ患者がウイルスをばら撒くことによって多数の感染者が出る可能性があり、多くの迷惑をかける可能性を持っています。普通の風邪よりも一般的に高熱が出るという特徴があるものの、検査をしないとインフルエンザの正確な診断はできません。自分がインフルエンザと疑われる状況になった場合は、必ず医師の診察を受けて、適切な薬の処方をしてもらい1日でも早く治すように心がけましょう。
今回はインフルエンザでも使用出来る、もしくは効果が期待出来る市販薬を紹介していきますが、基本は夜間や休診日で病院やクリニックにすぐいけないなどの場合に一時的にしのぐ目的で使用するようにしましょう。
医療用でインフルエンザに効果がある漢方薬の麻黄湯は、市販でも販売されている
まずは漢方薬の麻黄湯について紹介していきたいと思います。麻黄湯は医療用医薬品にてその効能効果の一つに「インフルエンザ(初期のもの)」を持っている漢方薬であり、実際の医療現場でも用いられています。
漢方薬がインフルエンザに効くというイメージはあまりないかもしれませんが、インフルエンザの患者に対して麻黄湯を投与した調査で解熱作用や自覚症状の改善に関してタミフルなどの抗ウイルス薬と差がないという結果も得られています1)。また、麻黄湯に含まれる生薬の成分がウイルスを抑制したり、免疫作用を増強する効果も確認されており2)、麻黄湯のインフルエンザに対する効果はある程度、科学的に証明されていると言えるレベルです。
そしてこの麻黄湯ですが、市販薬でも販売されており通販など購入することができます。しかし、残念ながら市販の麻黄湯の効能効果は「体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり」(ツムラ漢方麻黄湯エキス顆粒)であり、インフルエンザの適応はありません。また、医療用と市販薬では用量も異なっており、市販薬の1日量は医療用の1/2の量となります。
市販薬の麻黄湯でも内容は医療用と同じため、インフルエンザに対してある程度の効果は期待出来るものの、使用する場合はあくまで医師の診察を受けるまでの一時的な対処という位置付けに留めておきましょう。また、最終的にはインフルエンザでなく、実は麻黄湯を使用することが適さない疾患であった、という可能性もありますので、必ず早い段階で医師の診察を受けましょう。
また、医薬品を使用して、万が一重い副作用が出た場合、医薬品副作用被害救済制度を利用することができますが、この制度を利用する条件として、医薬品を適正に使用したという条件があります。しかし、市販の麻黄湯をインフルエンザに使用した場合は、効能効果の範囲外であり、医薬品の適正な使用とみなされない可能性もありますので、完全な自己責任となることを理解しておきましょう。
1) Saita M, et al; Health. 2011;3(5):300-303.
2) Marsh M, et al; Cell. 2006 Feb 24;124(4):729-40.
柴胡桂枝湯も医療用でインフルエンザに使われることも
同じ漢方薬で柴胡桂枝湯もインフルエンザに使われることがあります。医療用の柴胡桂枝湯の効能効果は「発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症:感冒・流感・肺炎・肺結核などの熱性疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆のう炎・胆石・肝機能障害・膵臓炎などの心下部緊張疼痛」であり、流感がインフルエンザに該当します。
麻黄湯と比較するとより体力が弱っている、胃腸が弱っている人に向いていると言えそうです。発症してからやや時間が経過している場合に適しているかもしれません。。
しかし残念ながら柴胡桂枝湯に関しても市販のものではインフルエンザの適応はありません。効能効果としては「体力中等度又はやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・はきけなどのあるものの次の諸症:胃腸炎、かぜの中期から後期の症状」(ツムラ漢方柴胡桂枝湯エキス顆粒)となっています。
柴胡桂枝湯の市販薬の用量は、医療用の柴胡桂枝湯の1/2倍量となります。インフルエンザに使う場合はやはり自己責任となってしまうことを理解しておきましょう。
解熱剤として使うならタイレノール
続いてインフルエンザのときに使用できる解熱鎮痛薬についてです。まず前提として、解熱剤を使用してもインフルエンザは治りません。また、熱を無理に下げると体の中の免疫反応が弱くなり、回復が遅れる可能性も指摘されています。ですので、インフルエンザが疑われる状況になった場合は、やはり早期に医師の診断を受けることが重要です。
しかし、そうは言ってもなかなか病院やクリニックに行けず、熱がつらくて一時的にでも熱を緩和したいという場合もあるかと思います。そういった状況でおすすめしたいのが、成分としてアセトアミノフェンという解熱鎮痛成分を含んだタイレノールAです。
タイレノールAの成分であるアセトアミノフェンは、医療用医薬品でカロナールという商品名などで販売されており、インフルエンザの時にはタミフルやイナビルといった抗ウイルス薬と一緒に処方されることもある解熱鎮痛成分です。効果は穏やかで、副作用も解熱鎮痛剤の中では比較的少ない方ですので、同じアセトアミノフェンを含んだ市販薬のタイレノールAも、インフルエンザのときに使用する解熱剤として適当と言えるでしょう。
子供の緊急時の解熱剤なら小児用バファリン
子供がインフルエンザにかかった時についても確認しておきましょう。やはり高熱が出た時に止むを得ず解熱剤を使いたいという場面がやはりあるかと思いますが、子供の場合は大人以上に慎重に薬を選ぶ必要があります。
その理由として、インフルエンザ脳症やライ症候群のリスクが挙げられます。インフルエンザ脳症やライ症候群はインフルエンザなどの感染症にかかった時に稀に続発する疾患であり、最悪の場合死亡するケースもあります。いずれも詳細な原因は不明とされていますが、解熱剤との関連も考えられており、ジクロフェナクやメフェナム酸、アスピリンといった成分はインフルエンザの時に使用するのは危険性が高いとされています。
そのようなリスクのあるインフルエンザですが、日本小児科学会からはインフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンがよいと考えるという旨の見解を公表されており、小児においてもアセトアミノフェンを成分とする解熱鎮痛剤なら比較的安全とされています。
子供に使用出来るアセトアミノフェン製剤の代表的なもののひとつが小児用バファリンCIIです。小児用バファリンCIIは成分がアセトアミノフェンのみであり、安全に使用することができます。注意点としては成人用のバファリンは成分が異なり、小児のインフルエンザでは危険とされているアスピリンが、成人用のバファリンでは主成分となっています。小児用バファリンと間違えて成人用のバファリンを使用しないよう、十分に注意しましょう。
なお、緊急時の薬としてアセトアミノフェンを紹介してきましたが、子供の場合はインフルエンザによって最悪のケースでは命に関わる可能性も出てくるため、大人以上に早期に医師の診察を必ず受けるようにしましょう。
終わりに
今回はインフルエンザに対して効果が期待出来る、もしくは使用することに出来る市販薬を紹介してきましたが、やはり基本は医師の適切な診察を受けた上で、処方される薬を使用するのが効果的であり、安全でもあります。市販薬をインフルエンザに対して使用することはあくまで一時的なものに留めることが賢明ですが、もしも市販薬を使わざるをえないような状況になった場合は、各薬剤の特性をしっかり理解し、安全に使用するように心がけましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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