インフルエンザワクチン予防接種と卵アレルギーについて、注意が必要な理由や実際に注意が必要なのかといった点、皮内てすとについても解説していきます。
インフルエンザワクチン予防接種で卵アレルギーの注意が必要な理由
インフルエンザワクチンの予防接種に関して、卵アレルギーの場合に注意が必要とされている理由は、インフルエンザワクチンに卵白の成分が入っている可能性があるからです。
インフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスを鶏卵に接種し増殖させた上で、ウイルスを不活性化し、ワクチンとしています。
このため、インフルエンザワクチンには微量の卵の成分が混入している可能性があり、卵アレルギーの場合には注意が必要となります。
想定される危険なケースは、インフルエンザワクチンを予防接種したあとにアナフィラキシーショックを起こすことです。
製薬会社が作成しているインフルエンザワクチン添付文書の記載では、接種上の注意に「接種要注意者」として卵アレルギーの人に対する注意喚起がされています。
接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)
被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合は、健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種すること。
(1)
〜
(5)
(6)本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのある者インフルエンザHAワクチン「北里第一三共」シリンジ0.25mL 添付文書
卵アレルギーでインフルエンザワクチン予防接種をしても問題ないケースがほとんど
実際には卵アレルギーでも問題になるケースはほとんどなく、大抵はインフルエンザワクチンを問題なく予防接種することが可能です。
製薬会社からの注意喚起に関しても、前述の通り、使用できない・危険であるというわけではなく、あくまで慎重に使用するという内容のものです。
また、実際に卵アレルギーの子供に対してインフルエンザ予防接種をし、問題なかったという報告が日本や海外でも挙がっています。
日本においては、鶏卵アレルギーもしくは鶏卵を摂取してアナフィラキシー症状が出たことがある子供17人に対してインフルエンザ予防接種をし、その経過をみた調査がありますが、結果は副作用はなかったというものでした1)。
上記の日本の報告では例数が少ないですが、海外では4000人以上の卵アレルギーの子供にインフルエンザ予防接種をした調査があり、その結果でもアナフィラキシーの副作用が出た子供はいなかったという結果でした。
このように、卵アレルギーを持つ子供でのインフルエンザ予防接種は注意されているものの、実際にはほとんどの場合は問題ないケースというのが実情と言えそうです。
ただし、卵アレルギーによりアナフィラキシーを起こした経験が過去にある場合は、必ず医師に申し出て、インフルエンザ予防接種の可否の判断を仰ぐようにしましょう。
1) 清水麻由ほか :アレルギー 65: 128-133, 2016
インフルエンザ予防接種の前に卵アレルギーの皮内テストについて
インフルエンザ予防接種で卵アレルギーによるアナフィラキシーのリスクを皮内テストで推測する方法があります。
近年では皮内テストはアナフィラキシーを起こすかどうかの根拠としては不十分という意見がありますが、インフルエンザワクチンを薄めた液体を用いて皮内に接種し、その反応をみるという歩法で、膨疹や発赤が出るかを確認する手法となります。
皮内テストを実施するかも医師の判断となりますが、このような手法でもリスクを確認する方法の一つとなります。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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