インフルエンザワクチンの予防接種に関して、高齢者における効果や2回接種の必要性、効かないと感じる理由や予防接種の費用について、高齢者に絞って解説します。
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インフルエンザワクチン予防接種の高齢者に対する効果は
高齢者に対するインフルエンザワクチン予防接種の効果は、34〜55%とされています。
この結果は厚生科学研究によって確認されているものであり、1997/98、1998/99、1999/2000の30シーズンで病院・老人保健施設・特別養護老人ホーム等へ入院(入所)している65歳以上の高齢者のうち、インフルエンザワクチン予防接種を受けた患者と受けなかった患者の動向を確認したものです1)。
この調査においてインフルエンザワクチン予防接種の高齢者に対する効果(発病予防)が34〜55%であることが確認されました。
1) 平成9-11年度厚生科学研究報告書
インフルエンザワクチン予防接種が高齢者に効かないのは本当か
インフルエンザワクチン予防接種が高齢者に対して効かないというイメージがある方もいるかと思いますが、実際に一般の方に対する予防接種の効果が概ね60〜90%と言われている中で、上記の34〜55%という結果は決して高い効果とは言えないでしょう。
しかし、同調査では高齢者のインフルエンザによる死亡リスクも検討されており、その結果はインフルエンザワクチン予防接種により、死亡リスクを82%減少させるというものでした。
したがって、高齢者に対するインフルエンザワクチンの予防接種は、インフルエンザの発病予防に対しては一般人に比較し、やや効かない傾向もあるものの、死亡リスク減少という面では高い効果を発揮すると考えられ、接種する価値は十分にあると言えるでしょう。
インフルエンザワクチン予防接種を高齢者に2回接種する必要性
高齢者のインフルエンザワクチン予防接種の回数について、2回接種する必要性はあまり言及されていません。
健康成人においては1回接種で十分な免疫が得られることが確認されており2)、高齢者に関しても1回接種と2回接種で予防効果に大きな差が出るとされる報告はあまりありません。
また、費用に関しても高齢者は1回目は市町村からの助成が受けられるものの、2回目はその対象にならないというケースがほとんとです。
ただし、過去にインフルエンザに全くかかったことがなく、ワクチンの予防接種も受けたことがないというような場合は、2回接種することで抗体価がより上昇すると考えられるため、そのような場合は2回接種する選択肢も有りと言えるでしょう。
2) 庵原俊昭: 医療 64: 671-675, 2010
インフルエンザワクチン予防接種の高齢者での副作用
インフルエンザワクチン予防接種の副作用に関しては、高齢者においても特別に頻度が高くなったり、重症化しやすくなることは少ないと考えられます。
こちらも厚生科学研究の報告書によれば、高齢者へのインフルエンザワクチン予防接種後の48時間以内に確認された副作用は発疹や発熱が1%前後、注射部位の副作用として発赤(赤くなる)が10%前後、疼痛(痛み)や腫脹(腫れ)が5%前後であり、いずれも症状は軽度とされています。また、重篤な副作用は認められなかったとされています。
1) 平成9-11年度厚生科学研究報告書
インフルエンザワクチン予防接種の高齢者での費用
インフルエンザワクチンの予防接種は自治体の助成を受けられ、費用が一般の方よりも安くなるケースがほとんどです。
大抵の場合は、条件として65歳以上の高齢者もしくは60歳以上65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能、又はヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に1級相当の障害のある方、という場合です。
これらの条件に合致する場合は、自己負担での費用が安くなります。
具体的な金額は自治体によって異なりますが、一般の方の場合は3000円〜4000円かかるところを、高齢者の場合は1500円〜2500円程度になるケースが多いようです。
また、助成の対象となるのは大抵の場合、該当期間の1回目の予防接種のみが対象となります。2回目は完全に自己負担となるケースがほとんどのようですので、ご注意ください。
上記の内容はあくまで例示となりますので、詳細は居住地の市区町村にご確認ください。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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