シムビコートの特徴、効果、使い方、副作用、併用、授乳中・妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入等について添付文書等から解説していきます。
Contents
シムビコートの特徴
シムビコートはステロイド成分のブデソニドとβ2刺激成分のホルモテロールフマル酸塩水和物を含んだ吸入薬であり、気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患に対して効果がある薬です1)。
シムビコートの特徴として速い作用発現が期待できる点や、日常の維持療法以外にも喘息発作発現時に使用できる点などが挙げられます2)。
シムビコートは2010年1月に発売され、ICS(Inhaled Corticosteroids:吸入ステロイド薬)とLABA(Long-Acting β2 Agonist:β2刺激薬の成分)が含まれている4種類の吸入合剤のうち、2番目に発売された薬です。
シムビコートはタービュヘイラーという専用の容器で使用する薬であり、適切な使用法で使用することで薬の適量を吸入で使用することができます。
シムビコートには30回吸入できるシムビコートタービュヘイラー30吸入と60回吸入できるシムビコートタービュヘイラー60吸入の2種類があります。
1) シムビコートタービュヘイラー 添付文書
2) シムビコートタービュヘイラー インタビューフォーム
シムビコートの効果
シムビコートは気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患に対して効果が認められています。
シムビコートの効能効果の詳細は以下の通りです。
気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)シムビコートタービュヘイラー 添付文書
シムビコートの作用機序
シムビコートの作用機序はステロイド成分による気道の抗炎症作用と、β2刺激成分による気道の拡張作用によるものです。
ステロイド成分であるブデソニドは、各種炎症性メディエーター及びサイトカインの産生及び遊離、気道内好酸球数増加、血管透過性亢進、炎症性肺浮腫形成に対して抑制作用を示し、抗炎症作用を示します。また、β2刺激成分であるホルモテロールはβ2受容体の刺激により細胞内のcAMPが上昇して平滑筋の緊張を低下させ、気管支が拡張します2)。
喘息や慢性閉塞性肺疾患は気道に炎症をおこしており、気道が狭くなっているため、呼吸が苦しく感じますが、シムビコートはこの状態に対して抗炎症作用と気管支拡張作用により、呼吸を楽にします。
2) シムビコートタービュヘイラー インタビューフォーム
シムビコートの効果時間
シムビコートは速やかな効果発現時間と1日2回の使用で効果が持続する効果持続時間が確認されています。
シムビコートの臨床試験では、気管支喘息の患者さんに対しては投与後3分以内に肺機能 (FEV1) が有意に改善し、作用が12時間持続したことが確認されています。また、別の試験では、メタコリン吸入により気道狭窄を誘発した気管支喘息患者に対して、投与後1分より肺機能 (FEV1) 及び呼吸困難感 (Borg score) の改善を認めた、とされており2)、早ければ使用後1分で効果を得られるケースもあります。
2) シムビコートタービュヘイラー インタビューフォーム
シムビコートの使い方
シムビコートは疾患や症状に応じて使用する量が異なりますが、基本的には1日2回使用します。また、発作に対して使用する場合は1回1吸入使用し、発作に対しては最大6吸入まで使用することもできます。
シムビコートの用法用量の詳細は以下の通りです。
1. 気管支喘息
通常、成人には、維持療法として1回1吸入(ブデソニドとして160μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として4.5μg)を1日2回吸入投与する。なお、症状に応じて増減するが、維持療法としての1日の最高量は1回4吸入1日2回(合計8吸入:ブデソニドとして1280μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として36μg)までとする。
維持療法として1回1吸入あるいは2吸入を1日2回投与している患者は、発作発現時に本剤の頓用吸入を追加で行うことができる。本剤を維持療法に加えて頓用吸入する場合は、発作発現時に1吸入する。数分経過しても発作が持続する場合には、さらに追加で1吸入する。必要に応じてこれを繰り返すが、1回の発作発現につき、最大6吸入までとする。
維持療法と頓用吸入を合計した本剤の1日の最高量は、通常8吸入までとするが、一時的に1日合計12吸入(ブデソニドとして1920μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として54μg)まで増量可能である。
2. 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解
通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として9μg)を1日2回吸入投与する。シムビコートタービュヘイラー 添付文書
シムビコートの使用後はうがい
シムビコートは赤色のグリップ部分を右に回した後に、「カチッ」と音がするまで左に回すことで1回分の薬がセットされます。この状態で1吸入するようにしましょう。2回以上吸入する場合は同じ操作を繰り返します。薬を吸ったあとは数秒秒程度息を止めることで気管支全体に薬が行き届くことが期待されるため、無理ない範囲で実施しましょう。
また、使用後は必ずうがいをするようにしましょう。うがいする理由として、主にステロイド成分による副作用を防止する意味合いがあります。口の中が白くなる感染や声が枯れるなどの症状を予防するため、ガラガラうがい、ブクブクうがいの両方を実施するようにしましょう。
シムビコートの副作用
シムビコートの副作用の頻度は各種臨床試験にて確認されています。
一つの例として、シムビコートを喘息の維持療法として定期吸入することに加え、発作発現時(咳嗽、喘鳴、胸苦しさ、息切れ等の喘息症状)に頓用吸入する治療法を検討した臨床試験では、安全性評価対象1,049例(日本人201例含む)中41例(3.9%)に副作用が認められ、主な副作用は、口腔カンジダ症5例(0.5%)、動悸5例(0.5%)であったとされています。また、喘息の維持療法としてのみ定期吸入する治療法を検討した国内臨床試験では、安全性評価対象314例中58例(18.5%)に副作用が認められ、主な副作用は嗄声17例(5.4%)、筋痙攣9例(2.9%)、動悸8例(2.5%)、咽喉頭疼痛4例(1.3%)であったとされています1)。
上記の副作用のうち、特にカンジダ症の感染については、ステロイド成分による免疫抑制により感染しやくすなるためと考えられ、使用後のうがいの徹底が効果的であり、シムビコート使用後は毎回必ずうがいをするようにしましょう。
1) シムビコートタービュヘイラー 添付文書
シムビコートの併用
シムビコートは他の薬との併用に注意が必要な薬がいくつかあります1)。
併用注意が必要なものは以下の通りです。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
CYP3A4阻害作用を有する薬剤 イトラコナゾール等 |
アムロジン、クラリス |
カテコールアミン アドレナリン イソプレナリン等 |
|
キサンチン誘導体 テオフィリン アミノフィリン等 |
テオドール |
全身性ステロイド剤 プレドニゾロン ベタメタゾン等 |
|
利尿剤 フロセミド等 |
ラシックス |
β遮断剤 アテノロール等 |
テノーミン、アーチスト |
QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤 抗不整脈剤 三環系抗うつ剤等 |
上記のうち、CYP3A4阻害作用を有する薬剤では抗生物質であるクラリス(クラリスロマイシン)などは一般の方でもよく使用される薬になるため、意図せず併用しないよう注意が必要です。また、喘息の患者さんであればテオフィリン製剤などを使用しているケースもあります。実際には併用注意に該当する場合でも併用するケースも多くあり、過度な心配は必要ありませんが、自分が使用している薬は必ず医師や薬剤師に伝える、お薬手帳を持ち歩くなどを心掛けましょう。
1) シムビコートタービュヘイラー 添付文書
シムビコートの授乳中の使用
シムビコートは授乳中に使用する場合は治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、実際に使用するかは医師の判断となります。
授乳中の婦人に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[ブデソニドはヒト乳汁に移行するが、乳児の血液中には検出されないことが報告されている。ホルモテロールはラット乳汁への移行が報告されている。]
シムビコートタービュヘイラー 添付文書
上記のような注意喚起がされている理由として、シムビコートの成分であるブデソニドは実際の授乳中の患者において、また、ホルモテロールについては動物実験において授乳中に移行することが確認されています2)。
ただし、専門家による見解のひとつとして、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、局所作用の薬であるため、授乳婦にも使用可能という内容です3)。
局所作用であり、授乳による乳児への有害事象の報告が見あたらない。授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
実際に授乳中にシムビコートを使用するかは、処方医の先生の判断となります。シムビコートに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) シムビコートタービュヘイラー インタビューフォーム
3) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
シムビコートの妊娠中の使用
シムビコートは妊娠中の使用に関して、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、実際に使用するかは医師の判断となります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[ラットを用いた器官形成期毒性試験では、ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物として12/0.66μg/kg以上を吸入投与したときに、着床後胚損失率の増加、及び催奇形性作用が認められている。]
シムビコートタービュヘイラー 添付文書
授乳中の使用と同様に、実際にはシムビコートは吸入して使用する局所作用の薬であるため、通常の使用量であれば胎児への影響は限定的とも考えられます。
実際に妊娠中にシムビコートを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。シムビコートに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
シムビコートの薬価、ジェネリック
シムビコートの2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価は以下の通りです。
製品名 | 薬価(円) |
シムビコートタービュヘイラー30吸入 | 2996.3 |
シムビコートタービュヘイラー60吸入 | 5877.7 |
なお、シムビコートにはジェネリック医薬品は販売されていません。
シムビコートの市販での購入
シムビコートの成分を含んでいる吸入ステロイド剤は市販薬としては販売されていません。基本的には喘息治療のステロイド剤は市販では買うことができないため、必ず医師の診察を受けて薬をもらうようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
コメント