キプレス錠10mg、5mgについてその特徴、効果、飲み方、副作用、飲み合わせ、薬価、ジェネリック(後発品)、市販での購入、シングレアとの違い、オノンとの違いなどについて添付文書等から解説していきます。
Contents
キプレスの特徴
キプレスはモンテルカストを成分とし、気管支喘息やアレルギー性鼻炎に対して効果がある薬です1)。
キプレスには通常の錠剤であるキプレス錠5mg、キプレス錠10mgの他、水なしで服用できるキプレスOD錠10mg、子供用の噛み砕いて服用できるキプレスチュアブル錠5mg、1歳以上6歳未満の子供に使用するキプレス細粒4mgの種類が販売されています。
なお、キプレスチュアブルとキプレス細粒にはアレルギー性鼻炎の効能効果はありません。
キプレスは喘息の他、アレルギー性鼻炎に対して効果がある錠剤、OD錠は花粉症の時期などに特に鼻炎症状に対して使用されます。
キプレスの特徴として、同じ系統の薬であるオノン(プランルカスト)と比較して、1日1回の服用で済むというメリットがあります。
今回の記事では主にキプレスの通常の錠剤について確認していきます。
キプレスとシングレアは同じ効果が期待できる薬
キプレスと同じモンテルカストを成分とする薬としてシングレアがありますが、製造販売元が異なる(キプレスは杏林製薬株式会社、シングレアはMSD株式会社)ものの、基本的にキプレスとシングレアは全く同じ効果が期待出来る薬です。
1) キプレス錠5mg/キプレス錠10mg/キプレスOD錠10mg 添付文書
キプレスの効果
キプレス錠は気管支喘息やアレルギー性鼻炎に対して効果がある薬です。喘息持ちの人や花粉症の人は花粉症シーズンになると使用することが多い薬です。
キプレス錠の効能効果の詳細は以下のとおりです。
気管支喘息、アレルギー性鼻炎
キプレス錠5mg/キプレス錠10mg/キプレスOD錠10mg 添付文書
キプレスの作用機序
キプレスの作用機序はロイコトリエン(LT)受容体拮抗作用によるものです。
ロイコトリエンとは、気管支の収縮やアレルギー反応に関与する物質であり、キプレスの成分であるモンテルカストはこのロイコトリエンが受容体に結合するのを抑制し、気道の炎症を抑え、気管支喘息の症状を起こりにくくしたり、鼻炎の症状(鼻水、鼻づまり、くしゃみ)を抑えます。
なお、鼻炎症状に対しては特に鼻づまり症状に対して効果が期待されます。
また、喘息に対しては発作に対して即時的に効果を示すような薬ではなく、日常的にコントールに使用するような薬であるため、症状が落ち着いている時でも継続して使用することが重要となります。
キプレスの効果時間
キプレスを含めたロイコトリエン受容体薬はどちらかと言えば即効性はあまり強くありません。
効果発現は内服開始後1週程度で認められ、連用で改善率が上昇するとされています2)。
2) 藤村昭夫 , 頻用薬の使い分け; 羊土社, 2016
キプレスは風邪に使うか
キプレスは風邪における鼻炎症状に対しては基本的には効能効果の範囲外となります。
ただし、風邪をひいたときの鼻炎症状でもアレルギー性の要因が関わっているようなケースでは一定の効果が規定できることがあります。
鼻炎の症状で風邪と思ってクリニックにかかってキプレスを処方された、というケースでは指示された通り使用して問題ないと言えるでしょう。ただし、自己判断で手持ちのキプレスを風邪で使うようなことは避けましょう。
キプレスの咳に対する効果
キプレスはいわゆる鎮咳薬のような咳中枢に直接働きかけて咳を鎮めるような薬でありませんが、アレルギーの過程を抑制することで、喘息症状のようなアレルギー性の咳を間接的に抑制する効果が期待できます。
キプレスの飲み方、使い方
キプレス錠は1回1錠を1日1回寝る前に使用するのが一般的な飲み方となります。
なお、OD錠に関しては口の中で溶けるため、水なしで使用することも可能です。
キプレス錠の用法用量の詳細は以下の通りです。
〈気管支喘息〉
通常、成人にはモンテルカストとして10mgを1日1回就寝前に経口投与する。
〈アレルギー性鼻炎〉
通常、成人にはモンテルカストとして5~10mgを1日1回就寝前に経口投与する。キプレス錠5mg/キプレス錠10mg/キプレスOD錠10mg 添付文書
キプレスは食事の影響が少ない
キプレス錠は食事の影響は少なく、寝る前に使用するのが一般的です。
食事の影響を見た臨床試験では、キプレス錠を空腹時、食後使用の比較をした結果では、食後に使用した場合の方がCmax(最大血中濃度)、AUC(血中薬物濃度時間曲線下面積)が1.24倍高くなったものの、Tmax(最大血中濃度到達時間)、t1/2(半減期)は差がなかったとされており3)、食事の影響はあまり大きくないと言えます。
3) キプレス インタビューフォーム
キプレスの副作用
キプレスの主な副作用は臨床試験の結果では、気管支喘息に使用した場合は、下痢(1.7%)、腹痛(1.3%)、嘔気(1.1%)、胸やけ(1.0%)、頭痛(1.0%) 等であり、アレルギー性鼻炎に使用した場合は口渇(0.8%)、傾眠(0.8%)、胃不快感(0.5%)、頭痛(0.3%)、下痢(0.3%)、倦怠感(0.3%)等であったとされています。
キプレスは眠気は出にくい
キプレスは花粉症などのアレルギー性鼻炎に使用される薬ですが、眠気が出やすいことで知られている抗ヒスタミン薬とは異なる系統の薬であるため、眠気が出る頻度は非常に低い薬です。前述の通り、眠気(傾眠)が出る頻度は1%にも満たない頻度であり、基本的には眠気を経験することはほとんどないと言えるでしょう。
キプレスの飲み合わせ
キプレスは飲み合わせに注意が必要な薬が1種類あり、フェノバルビタールの成分を含む薬(フェノバール、ヒダントールなど)とは「併用注意」とされています。
キプレスとフェノバルビータルの飲み合わせに注意が必要な理由として、フェノバルビタールがCYP3A4といわれる代謝酵素を誘導し、キプレスの代謝を促進することによってキプレスの作用が減弱する可能性があるためです1)。
その他にはキプレスと飲み合わせが悪い薬は基本的にはなく、よく一緒に使用される薬として、アレロック(オロパタジン)、アレグラ(フェキソフェナジン)、アレジオン(エピナスチン)、クラリチン(ロラタジン)、タリオン、ザイザルなどの抗ヒスタミン薬や、ナゾネックス、アラミスト、フルナーゼ、エリザスなどのステロイド点鼻薬、ムコダイン(カルボシステイン)、ムコソルバン(アンブロキソール)などの痰切りの薬、喘息の薬などとはいずれも飲み合わせに問題がなく、一緒に使用できる薬です。
1) キプレス錠5mg/キプレス錠10mg/キプレスOD錠10mg 添付文書
キプレスの授乳・妊娠中の使用
キプレスは授乳・妊娠に影響がある可能性が注意喚起されています。
キプレスの授乳中の使用
キプレスは基本的に授乳中の使用は避け、止むを得ず使用する場合は、授乳を中止するよう注意喚起されています。
授乳中の婦人に投与する場合は慎重に投与すること。〔動物実験 (ラット) で乳汁中への移行が報告されている。〕
キプレス錠5mg/キプレス錠10mg/キプレスOD錠10mg 添付文書
キプレスの成分は乳汁中に移行することが確認されており、乳児が母乳経由で成分を摂取してしまう可能性があります。ただし、その量はわずかであることや動物実験において母動物が授乳した乳児には毒性は認められていないことも確認されています3)。
専門家による見解のひとつとして、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、小児にも適応があり、授乳婦にも使用可能という内容です4)。また、大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでも、乳汁中には移行しにくいという内容であり、「限られた授乳婦で研究した結果、乳児へのリスクは最小限と考えられる / 授乳婦で研究されていないが、リスクを証明する根拠が見当たらない」という見解です5)
小児にも適応があり、授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
ヒトでの情報が見当たらない。血漿蛋白結合率が99%以上で乳汁中へ移行しにくい。
母乳とくすりハンドブック
実際に授乳中にキプレスを使用するかは、処方医の先生の判断となります。キプレスに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
3) キプレス インタビューフォーム
4) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
5) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
キプレスの妊娠中の使用
キプレスは妊娠中の使用に関しては、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、医師の判断によっては使用できるケースがあります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
〔妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。海外の市販後において、妊娠中に本剤を服用した患者から出生した新生児に先天性四肢奇形がみられたとの報告がある。これらの妊婦のほとんどは妊娠中、他の喘息治療薬も服用していた。本剤とこれらの事象の因果関係は明らかにされていない。〕キプレス錠5mg/キプレス錠10mg/キプレスOD錠10mg 添付文書
なお、動物実験ではキプレスの成分は血液-胎盤関門通過性を確認した実験では胎盤を通過することが確認されていますが、生殖発生毒性試験では極端な高用量での使用を除き、繁殖能に大きな影響は与えないことが確認されています3)。
専門家による見解のひとつとして、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、催奇形性を示すデータがなく、妊婦にも使用可能という内容です4)。
催奇形性を示唆するデータなし。妊婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
実際に妊娠中にキプレスを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。キプレスに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
3) キプレス インタビューフォーム
4) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
キプレスの薬価・ジェネリック(後発品)
キプレスの薬価は、2016年4月の改定時点(2016年4月〜2018年3月まで)でキプレス錠5mgが153.8円、キプレス錠10mg及びキプレスOD錠112.5mgで203.5円となっています。
なお、キプレス錠にはジェネリック医薬品(後発品)が販売されており、成分名である「モンテルカスト」の製品名で販売されています。ジェネリック医薬品の薬価は5mg錠で61.4〜76.8円、10mg錠で81.4〜101.8円となっており、キプレスよりも安価な薬価となっています。
キプレスの市販での購入
キプレスは市販薬としては販売されていない成分となります。また、キプレスが分類されるいわゆる抗ロイコトリエン薬は市販薬としては販売されていない系統の薬であり、基本的には市販では購入できない薬となるのでご注意ください。
キプレスとオノンの違い
キプレスと同じ抗ロイコトリエンの薬として、オノン(成分名:プランルカスト)があります。
キプレスとオノンの最も大きな違いはその用法です。キプレスは1日1回使用するのに対し、オノンは1日2回使用するのが一般的です。この点から自分の生活にあった方を選ぶのが使い分けのひとつのポイントとなります。
効果の強さや副作用の出やすさという面では個人による差もあり、一概にどちらが優れていると言えない面もあるため、基本的には医師の判断による処方に従って使用するようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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