糖尿病の治療薬について飲み忘れた時の対処法を薬のグループごとに確認していきます。
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糖尿病の薬を飲み忘れたら
糖尿病の治療薬は様々な種類があり、飲み方も食前、食直前、食後など種類によって異なります。
糖尿病の薬を飲み忘れた場合、薬の種類によっても対処法が異なるため、自分が飲んでいる薬がどの薬を確認した上で対処するようにしましょう。
スルホニル尿素薬(SU薬)
スルホニル尿素薬はSU薬とも呼ばれ、昔からある薬のグループです。
膵β細胞膜上のSU受容体に結合し、インスリン分泌を促進し、服用後短時間で血糖降下作用を発揮します((糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会 編・著))。
近年使用される主なスルホニル尿素薬は以下の通りです。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
グリベンクラミド | オイグルコン、ダオニール |
グリクラジド | グリミクロン |
グリメピリド | アマリール |
通常の用法は1日1〜2回、食前と食後いずれも使うケースがあります。
スルホニル尿素薬(SU薬)を飲み忘れたら
スルホニル尿素薬(SU薬)を飲み忘れた場合、食後30分程度以内であれば服用し、それ以降であれば一回分を飛ばしましょう。食前の使用を指示されるケースもある薬ですが、食後で使用する場合もあるため、食後30分以内であれば急激な低血糖を引き起こすような可能性は高くありません。
なお、飲み忘れた場合に2回分を一度に飲むことは絶対に避けましょう。
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
速攻型インスリン分泌促進薬は、SU薬よりも早く作用が現れ消失します。食後の高血糖に対して使われることが多い薬です。
作用点はSU薬と同様に、膵β細胞膜上のSU受容体に結合しインスリン分泌を促進し、服用後短時間で血糖降下作用を発揮します((糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会 編・著))。
近年使用される主な速攻型インスリン分泌促進薬は以下の通りです。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
ナテグリニド | スターシス、ファスティック |
ミチグリニド | グルファスト |
レパグリニド | シュアポスト |
通常の用法は1日3回、食直前(グルファストは食前5分以内、他は食前10分以内)で使います。
速攻型インスリン分泌促進薬を飲み忘れたら
速効型インスリン分泌促進薬を飲み忘れた場合、すでに食事を始めている状態、もしくは食後で飲み忘れに気づいた場合、使用するのをやめ、1回分飛ばします((シュアポスト錠0.25mg くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=18477 等))。速攻型インスリン分泌促進薬は、低血糖のリスクを持っており、必ず正しい用法で使うことが重要です。
なお、飲み忘れた場合に2回分を一度に飲むことは絶対に避けましょう。
ビグアナイド薬
ビグアナイド薬は昔からある糖尿病治療薬の一つであり、重篤な副作用である乳酸アシドーシスのリスクから一時期使用が控えられている時期がありましたが、近年はその有効性と安全性が見直されており、使用量が再度増えている薬剤です。
ビグアナイド薬の作用は肝臓での糖新生の抑制が主ですが、その他、消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善などさまざまな膵外作用により、血糖降下作用を発揮します((糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会 編・著))。
近年使用される主なビグアナイド薬は以下の通りです。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
メトホルミン | メトグルコ、グリコラン |
ブホルミン | ジベトス、ジベトン |
通常の用法は1日2〜3回、食後もしくは食直前で使います。
ビグアナイド薬を飲み忘れたら
ビグアナイド薬を飲み忘れた場合、食後30分程度以内であれば服用し、それ以降であれば一回分を飛ばしましょう。食前の使用を指示されるケースもある薬ですが、食後で使用する場合もあるため、食後30分以内であれば急激な低血糖を引き起こすような可能性は高くありません。
なお、飲み忘れた場合に2回分を一度に飲むことは絶対に避けましょう。
チアゾリジン薬
チアゾリジン薬はインスリン抵抗性の改善を介して血糖降下作用を発揮するためインスリン抵抗性の関与がある状態で有効性が期待できる薬です((糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会 編・著))。
近年使用される主なチアゾリジン薬はアクトスとそのジェネリック医薬品です。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
ピオグリタゾン | アクトス |
通常の用法は1日1回朝食前または朝食後に服用します。
チアゾリジン薬を飲み忘れたら
チアゾリジン薬を飲み忘れた場合、朝の食前もしくは食後の用法をされているケースでは、昼までであればできるだけ早く1回分を飲みます。低血糖のおそれがあるので、激しい運動をした後や空腹時には飲まないようにしましょう((アクトス錠15 くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=43785))。
なお、飲み忘れた場合に2回分を一度に飲むことは絶対に避けましょう。
α-グルコシダーゼ阻害薬
α-グルコシダーゼ阻害薬は食後の高血糖がある場合に適している薬です。
α-グルコシダーゼ阻害薬の作用は、α-グルコシド結合を加水分解する酵素であるα-グルコシダーゼの作用を阻害し、糖の吸収を遅らせることにより食後の高血糖を抑制します((糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会 編・著))。
近年使用される主なα-グルコシダーゼ阻害薬は以下の通りです。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
アカルボース | グルコバイ |
ボグリボース | ベイスン |
ミグリトール | セイブル |
通常の用法は1日3回食直前(食前5分もしくは10分以内)に使用します。
α-グルコシダーゼ阻害薬を飲み忘れたら
α-グルコシダーゼ阻害薬を食前に飲み忘れた場合、食事中に飲み忘れに気づいたら、そのときすぐ服用します。食事中以外のときは飲み忘れに気がついても、その分は服用せず飛ばしましょう((セイブル錠25mg くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=7720 等))。
α-グルコシダーゼ阻害薬は食後に時間が経過した場合に服用しないようにするのは、低血糖のリスクというよりも効果が得られない可能性が高いためです。したがって間違って食後に服用した場合、単剤では低血糖が起こるリスクはあまり高くありません。
ただし、α-グルコシダーゼ阻害薬も他の糖尿病治療薬を併用している場合に低血糖を起こす可能性があり、その場合α-グルコシダーゼ阻害薬の効果により、ブドウ糖以外の糖では吸収が阻害されてしまい低血糖が解消されにくくなります。α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している状況で低血糖を起こした場合は必ずブドウ糖を使用する必要があります。また、α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している場合は普段からブドウ糖を持ち歩くのが安全と言えます。
なお、飲み忘れた場合に2回分を一度に飲むことは絶対に避けましょう。
DPP-4阻害薬
DPP-4阻害薬は比較的新しい糖尿病治療薬であり、近年最も使われている薬剤の一つです。
DPP-4阻害薬はDPP-4の選択的阻害により活性型GLP-1濃度および活性型GIP濃度を高め、血糖降下作用を発揮します((糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会 編・著))。
血糖値に依存してインスリン分泌を促進するため、低血糖を起こしにくい特徴があります。
近年使用される主なDPP-4阻害薬は以下の通りです。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
シタグリプチン | グラクティブ、ジャヌビア |
ビルダグリプチン | エクア |
アログリプチン | ネシーナ |
リナグリプチン | トラゼンタ |
テネリグリプチン | テネリア |
サキサグリプチン | オングリザ |
トレラグリプチン | ザファテック |
オマリグリプチン | マリゼブ |
通常の用法は、ザファテックとマリゼブは週1回使用、それ以外は毎日の服用であり、エクアのみ1日2回使用、その他は1日1回の使用となります。
DPP-4阻害薬を飲み忘れたら
DPP-4阻害薬を飲み忘れたときの対処法は基本的に気づいたときに服用することとなります。
毎日使用する薬剤であるジャヌビア、グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニー、オングリザでは、飲み忘れた場合、気が付いたときに1回分を服用します。ただし、次の服用時間が近い場合は飲まずに、次の服用時間に1回分を服用しましょう((エクア錠50mg くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=17377 等))。いずれも食前、食後に使用するケースがあり、あまり食事の有無は影響がないため、飲み忘れた場合は指示されていた食前・食後の用法と異なってもあまり問題ありません。
週一回使用するザファテック、マリゼブの場合も飲み忘れた場合は気がついた時、1回分をのみます。次回以降はあらかじめ決めた曜日に服用しましょう((マリゼブ錠12.5mg くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=41814))。
なお、飲み忘れた場合に2回分を一度に飲むことは絶対に避けましょう。
SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬は比較的新しい糖尿病治療薬であり、近年新しい薬が登場してきています。
SGLT2阻害薬は近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮します((糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会 編・著))。
インスリンとの関連がない薬剤であり、低血糖を引き起こす可能性が低い特徴があります。
近年使用される主なSGLT阻害薬は以下の通りです。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
イプラグリフォロジン | スーグラ |
ダパグリフロジン | フォシーガ |
ルセオグリフロジン | ルセフィ |
トホグリフロジン | アプルウェイ、デベルザ |
カナグリフロジン | カナグル |
エンパグリフロジン | ジャディアンス |
通常の用法は1日1回の使用であり、食前、食後いずれでも使用されます。
SGLT2阻害薬を飲み忘れたら
SGLT2阻害薬を飲み忘れたときの対処法を薬剤ごとに確認していきます。
フォシーガ、ルセフィ、アプルウェイ、デベルザについては「くすりのしおり」において、飲み忘れに気づいた時点ですぐ服用、ただし、次の飲む時間が近い場合は次の時に1日分飲むように注意喚起されています((フォシーガ錠10mg くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=39190 等))。
スーグラ、カナグル、ジャディアンスについては「くすりのしおり」において、忘れた分を服用せずに、1回とばして翌日使用するよう注意喚起されています((スーグラ錠50mg くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=38966 等))。
なお、飲み忘れた場合に2回分を一度に飲むことは絶対に避けましょう。
糖尿病治療配合薬
糖尿病の治療薬では近年は複数の成分が配合されている配合剤が登場してきています。
その組み合わせは様々であり、現在使用されている配合薬の種類は以下の通りです。
成分名(一般名) | 主な製品名 |
ピオグリタゾン/ メトホルミン |
メタクト |
ピオグリダゾン/ グリメピリド |
ソニアス |
アログリプチン/ ピオグリタゾン |
リオベル |
ミチグリニド/ ボグリボース |
グルベス |
ビルダグリプチン/ メトホルミン |
エクメット |
テネリグリプチン/ カナグリフロジン |
カナリア |
それぞれの用法は配合薬ごとに様々であり、飲み忘れの対応策もそれぞれ異なってきます。
糖尿病治療配合薬を飲み忘れたら
配合薬の飲み忘れについては、薬の種類によって対応が異なります。
最も注意が必要なものはグルベスです。グルベスは速効型インスリン分泌促進薬のミチグリニド(代表製品:グルファスト)とα-グルコシダーゼ阻害薬のボグリボース(代表製品:ベイスン)を含んだ配合剤です。グルベスは通常、毎食直前、毎食の食前5分以内に服用しますが、すでに食事を始めている状態、もしくは食後で飲み忘れに気づいた場合、使用するのをやめ、1回分飛ばします((グルベス配合錠 くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=18716))。グルベスは速攻型インスリン分泌促進薬を含んでいるため、比較的高い低血糖のリスクを持っており、必ず正しい用法で使うことが重要です。
万が一グルベスで低血糖を起こした場合、α-グルコシダーゼ阻害薬が含まれる配合剤であるため、ショ糖など、ブドウ糖以外の糖では効果が不十分となります。必ずブドウ糖で対処するようにしましょう。
その他の配合剤については、そこまで厳密な用法が設定されていません。
ソニアス、リオベル、エクメット、カナリアは食前の使用を指示されるケースもある薬ですが、食後で使用する場合もある薬です。
リオベルは昼くらいまでに気づいた場合は服用((リオベル配合錠HD くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=18845))、エクメットは次の服用するタイミングまで時間があればその時点で服用する((エクメット配合錠HD くすりのしおり http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=41810))よう注意喚起されています。
ソニアス、カナリアも比較的低血糖のリスクが低い組み合わせであり、食後30分以内であれば服用し、それ以降であれば一回分を飛ばしましょう。
メタクトは用法が朝食後ののみであるため、こちらも食後30分をすぎてしまった場合は、一回分を飛ばしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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