ガスロンNの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中・妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入、ムコスタ・ガスターとの違いなどについて添付文書等から解説していきます。
Contents
ガスロンNの特徴
ガスロンNはイルソグラジンマレイン酸塩を成分として含み、胃潰瘍や胃炎の症状に対して効果がある薬です1)。
ガスロンNの最大の特徴は1日1回でも効果が得られる点です。ガスロンNと同じく胃の防御因子増強薬に分類されるアルサルミン、プロマック、マーズレン、セルベックス、ムコスタなどは全て1日2〜3回使用する必要がある薬であり、1日1回はガスロンNのみの特徴です。その他、細胞間コミュニケーション活性化作用、胃粘膜血流量低下抑制作用、抗炎症作用などを有する特徴があります2)。
ガスロンNにはイルソグラジンマレイン酸塩の成分を2mg含むガスロンN錠2mgと4mg含む ガスロンN錠4mg、口の中で溶け水なしで服用できるガスロンN・OD錠2mg、ガスロンN・OD錠4mg、粉薬であるガスロンN細粒0.8%の種類があります。
1) ガスロンN錠 添付文書
2) ガスロンN錠 インタビューフォーム
ガスロンNの効果
ガスロンNは胃潰瘍や急性胃炎、慢性胃炎の増悪期における胃粘膜の病変に対して効果が認められている薬です。
ガスロンNの効能効果の詳細は以下の通りです。
胃潰瘍
下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期ガスロンN錠 添付文書
ガスロンNの作用機序
ガスロンNの主な作用機序は胃酸などの胃粘膜障害物質による胃粘膜表層上皮細胞の細胞間の間隙を抑制したり、胃粘膜の血流量低下を抑制することで、胃を保護します。
この作用はガスロンNにより胃粘膜におけて情報伝達物質であるサイクリックAMPという物質の増加作用や粘膜抵抗力やバリア機能を増強するとされる細胞間コミュニケーション活性化作用が関与しているとされています2)。
2) ガスロンN錠 インタビューフォーム
ガスロンNの臨床成績
ガスロンNの効果は実際の患者さんに対する臨床試験にて確認されています。
胃潰瘍に対しては、内視鏡判定における治癒率は62.6%、全般的な改善率は74.4%、胃炎に対しては85.2%の改善率という結果が得られています1)。
疾患名 | 内視鏡判定 (治癒率) |
改善率 (中等度改善以上) |
胃潰瘍 | 311/497 (62.6%) |
406/546 (74.4%) |
急性胃炎・ 慢性胃炎の 増悪期 |
- | 283/332 (85.2%) |
1) ガスロンN錠 添付文書
ガスロンNの使い方
ガスロンNの使い方は4mg錠であれば1日1回1錠、2mg錠であれば1日2回、1回1錠という使い方が一般的です。
ガスロンNの用法用量の詳細は以下の通りです。
通常成人イルソグラジンマレイン酸塩として1日 4mg(ガスロンN錠 2mg:2錠、ガスロンN錠 4mg:1錠、ガスロンN細粒 0.8%:0.5g)を1~2回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。ガスロンN錠 添付文書
ガスロンNの副作用
ガスロンNは副作用の種類が少なく、頻度が高いものもあまりありません。
主な副作用はは肝機能異常、肝機能の指標となるALT(GPT)上昇、AST(GOT)上昇などとされています。その他は便秘、発疹、そう痒、下痢などとされていますが、これらの頻度はいずれも0.1%未満であり1)、実際に経験することはあまり多くないと言えるでしょう。
1) ガスロンN錠 添付文書
ガスロンNの飲み合わせ
ガスロンNには飲み合わせが悪い薬は基本的にありません。
製薬会社からも併用禁忌や併用注意に該当する薬剤は注意喚起されておらず1)、基本的にはどの薬とも併用することが可能と言えます。
ロキソニンなどの痛み止めやフロモックスなどの抗生剤、フスコデなどの咳止めなど様々な薬と併用しても問題ないと言える薬です。
1) ガスロンN錠 添付文書
ガスロンNの授乳中・妊娠中の使用
ガスロンNの授乳中、妊娠中の使用について確認していきます。
ガスロンNの授乳中の使用
ガスロンNは授乳中の使用に関しては特別な注意喚起はされていません1)。基本的には授乳中でも使用可能な薬の一つとなります。
ガスロンNは動物実験にて、乳汁中に移行するものの蓄積する傾向はないことが確認されています2)。
実際に授乳中にガスロンNを使用するかは、処方医の先生の判断となります。ガスロンNに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
1) ガスロンN錠 添付文書
2) ガスロンN錠 インタビューフォーム
ガスロンNの妊娠中の使用
ガスロンNは妊娠中の使用に関して、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、実際に使用するかは医師の判断となります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]ガスロンN錠 添付文書
動物実験ではガスロンNの成分は胎盤を通過することが確認されており、高用量で出生児の生存率の低下、出生児の体重増加抑制など確認されています2)。ただし、あくまで動物実験での高用量使用による結果であり、人における危険性が確認されているわけではありません。
実際に妊娠中にガスロンNを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。ガスロンNに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) ガスロンN錠 インタビューフォーム
ガスロンNの薬価、ジェネリック
ガスロンNの2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価は4mg錠で1錠あたり54.8円、2mg錠で26.3円となっています。通常の錠剤とOD錠とでは薬価に差はありません。ガスロンN細粒は1gあたり98.7円となります。
ガスロンNにはジェネリック医薬品が販売されており、セレガスロン、イルソグラジンマレイン酸の製品名で販売されています。薬価は4mg錠が1錠あたり9.9〜18.4円、2mg錠が9.7円、細粒が1gあたり20.2円とされており、ガスロンNよりも安価で手に入ります。
ガスロンNの市販での購入
ガスロンNの成分であるイルソグラジンマレイン酸は市販では販売されていない成分であり、市販薬としては購入することはできません。
ただし、ガスロンの成分に比較的近い成分として、ソファルコンやセトラキサートの成分は氏市販薬として販売されており、代表的な製品はアバロンやグッドナー錠などが挙げられます。これらの市販薬はガスロンNと比較的近い効果を得ることができる可能性があります。ただし、いずれも複数の成分が含まれている製剤である点に注意しましょう。
ガスロンNとムコスタ、ガスターとの違い
ガスロンNと同じく胃炎や胃潰瘍の治療薬として有名な薬剤にムコスタやガスターがあります。
ガスロンNとムコスタの違いとして、作用機序がガスロンNは主に組織の血流改善にて胃の防御因子を増強するのに対しムコスタは主に粘膜修復により防御因子を増強します。また、ムコスタは基本的には1日3回使用するのに対し、ガスロンNは1日1〜2回の使用となります。
ガスロンNとガスターの違いとして、ガスターの作用機序は胃酸の分泌を抑制し症状を改善します。ガスロンNとは根本的に機序が異なり、胃炎や胃潰瘍に対する効果はより強力と考えられているものの、腎機能の状態や薬物相互作用、副作用についてもガスターの方が気をくばる必要があるとされています。なお、ガスターは通常は1日2回使用するケースが多い薬です。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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