アストミンについてその効果や特徴、効かない時の確認点、用法用量、授乳への影響、薬価やジェネリック、アルコールとの飲み合わせ、メジコンとの違いなどについて添付文書等から解説していきます。
Contents
アストミンの特徴と効果
アストミンはジメモルファンという成分を含む咳止めの薬です。錠剤である10mg錠のほか、粉薬のアストミン10%散、アストミンシロップ0.25%の種類があります。
アストミンは鎮咳薬(咳止め薬)の中でも非麻薬性に分類されるものであり、身体依存などがない、比較的安全に使用できる鎮咳薬という特徴を持ちます。
アストミンは咳止めの薬|熱や鼻水には効かない
アストミンの効果は咳止めの作用です。風邪の時に熱や鼻水などの症状があるケースもありますが、基本的にアストミンの効果は咳のみであり、熱や鼻水に対しては、別の薬を併用することも多い薬です。
アストミン錠の効能効果の詳細は以下のとおりです。
下記疾患に伴う鎮咳
上気道炎、肺炎、急性気管支炎、肺結核、珪肺および珪肺結核、肺癌、慢性気管支炎アストミン錠10mg
アストミンは咳中枢に直接作用
アストミンの成分であるジメモルファンは脳において延髄の咳中枢に直接作用して、咳を鎮める効果を発揮します1)。
1) アストミン錠10mg 添付文書
アストミンの効果は77.2%の有効率
アストミンの効果は臨床試験で確認されており、その有効率は77.2%という結果でした1)。
慢性疾患と急性疾患別では、肺結核、珪肺及び珪肺結核、肺癌、慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患では72.4%の有効率、上気道炎、急性気管支炎、肺炎などの急性疾患では84.6%という結果が報告されており、風邪などにおける咳に対しては高い効果が期待できそうです。
1) アストミン錠10mg 添付文書
アストミンの用法用量と使い方|1日3回、用量は1回1〜2錠
アストミン錠は通常は1日3回、1回に1〜2錠を使用する薬です。1回に使用する錠数は症状によって処方医の先生が使い分けるケースがあるので、自分が何錠で処方されているのか確認しましょう。
アストミン錠の用法用量の詳細は以下のとおりです。
成人(15才以上)には1回1~2錠(ジメモルファンリン酸塩として10~20mg)を1日3回経口投与する。
但し、年齢、症状により適宜増減する。アストミン錠10mg
アストミンが効かない場合は
アストミンが効かないと感じる場合は、まずは指示された用法用量を確認しましょう。
前述の通り、錠剤のアストミンは人によって1回に使用する量が異なります。1回2錠使用する場合もあるため、1回の用量が間違っていないか確認するようにしましょう。また、アストミンは1日3回するのが一般的であり、1日の服用回数が間違っていないかという点も確認しましょう。
正しい用法用量で使用しているにもかかわらず、効かないと感じる場合は、薬が症状にあっていない可能性もあります。処方された期間を飲みきっても改善しない場合は再度クリニックを受診するようにしましょう。
アストミンは授乳中でも使用できる
アストミンは授乳中でも使用できる薬と言えます。
医師が授乳中であることを知った上でアストミンを処方された場合は、指示された通り使用して良いと言えるでしょう。
授乳していても使用できる根拠として、アストミンの製薬会社の添付文書では、授乳中の使用に関して特別な注意喚起はされていません1)。
また、専門家による見解でも、アストミンは授乳をしている場合でも使用できるという意見があります。愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きではアストミンが子供でも使用される薬であるため、影響が少ないと考え、授乳婦に使用可能という内容です2)。大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでは、授乳中のアストミン使用による有害事象報告がなく、また、同じ咳止め薬のコデイン類(麻薬性鎮咳薬)よりも安全性が高いため、「限られた授乳婦で研究した結果、乳児へのリスクは最小限と考えられる 授乳婦で研究されていないが、リスクを証明する根拠が見当たらない」という見解です3)。
小児にも適応があり、授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
授乳婦服用による有害事象報告が見当たらない。コデイン類より危険性は少ないと予想される。
母乳とくすりハンドブック
1) アストミン錠10mg 添付文書
2) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
3) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
アストミンの飲み合わせ|アルコールは飲める?
アストミンは絶対に一緒に飲んではいけないもの(併用禁忌)や、飲み合わせに注意が必要なもの(併用注意)と言える薬などはありません。
アストミンは風邪などで処方されるケースが多く、解熱鎮痛剤のロキソニンやカロナール、ボルタレン、去痰薬のムコダイン、ムコソルバン、鼻水に使用するアレグラ、アレロック、ザイザル、炎症を抑えるトランサミンなどと一緒に処方されることが多い薬です。これらに関しても飲み合わせは問題ないため、指示された通りに使用しましょう。
ただし、同じ鎮咳薬であるメジコン、フスコデ、アスベリン、フラベリックなどとは作用が重複する面があるため、医師から特別な指示があるようなケースを除き、自己判断で併用するのはやめましょう。
アストミンとアルコールの飲み合わせは悪くないが・・・
アストミンは前述のとおり、基本的に飲み合わせが悪いものはなく、アルコールに関しても特別な注意喚起はありません。従って、アルコールとの飲み合わせは問題ないと言えます。
しかし、一般的に薬を使用している期間は、アルコールによる影響が全くないとは言い切れない面もあり、また、アストミンを使用する場合は風邪などで咳などの症状がある場面が多いため、原疾患自体がアルコールを飲むのに適していない状態であることがあります。
従って、可能であればアストミン使用中の期間はアルコールを控えるようにした方が賢明と言えるでしょう。あらかじめお酒の席が予定されているような場合は、処方医の先生に事前に相談し、対応方法などを話し合っておくのも良いでしょう。
アストミンの副作用
アストミン錠の主な副作用は食欲不振、口渇、悪心、眠気、めまい等です。これらの副作用の頻度は0.1〜5%の頻度であり1)、決して高い頻度ではありませんが、念のため注意しましょう。
なお、アストミンでは重大な副作用はあまり報告がなく、添付文書においても注意喚起されていません。前述の通り、一定の頻度で副作用が出てしまうことはありますが、いずれも軽度なものが多く、アストミンは比較的安全に使用できる咳止めのひとつと言えます。
1) アストミン錠10mg 添付文書
アストミンの薬価とジェネリック
アストミンの錠剤の薬価は2016年4月の改定時点(2018円3月まで同価格)で1錠あたり5.6円であり、1日3回1回2錠使用する場合は 5.6円 × 3回 × 2錠 = 33.6円 が1日の薬価となります。
なお、アストミンにはジメモルファンリン酸塩というジェネリック医薬品がありますが、薬価はアストミンと同じく、1錠あたり5.6円となっており、ジェネリックに切り替えるメリットはあまり大きくないと言えます。成分は同じであるため、効果は基本的には同じと考えられ、どちらを使用してもあまり違いはないと言えます。
アストミンの市販薬
アストミンの成分であるジメモルファンは市販の薬にも含まれている成分になります。
ただし、現在ジメモルファンを含んでいる市販薬は「新パブロンせき止め液」のみであり、アストミンとは錠剤ではない点、およびジメモルファンの単一成分でない点の違いがあります。
新パブロンせき止め液は効能効果が「せき,たん」とされており、ジメモルファンリン酸塩の他に、去痰成分であるブロムヘキシン塩酸塩、アレルギー性の咳を鎮める抗ヒスタミン成分のd-クロルフェニラミンマレイン酸、痰を柔らかくする効果を期待されているリゾチーム塩酸塩、抗ヒスタミン成分による眠気を緩和したり他の成分の補助的な役割を担う無水カフェインの成分が含まれています。
新パブロンせき止め液を最大用量で使用した場合は、ジメモルファンを1日あたり60mg摂取することになり、これはアストミンを1回2錠1日3回使用した時と同量の用量となるため、アストミンと同程度の効果が期待できますが、新パブロンせき止め液には他の成分も含まれているため、必ずしも使用する場面は同じとはいませんので注意しましょう。
アストミンとメジコンの違い、強さの比較、併用は
アストミンと同じ鎮咳薬で、よく処方されるものにメジコンがあります。メジコンについてアストミンとの違いや効果の強さの比較、併用の可否について確認していきます。
アストミンとメジコンの違いは成分と用法
アストミンとメジコンは同じ非麻薬性の鎮咳薬に分類されるものの、成分は違うものであり、メジコンはデキストメトルファンという成分を含みます。
用法はメジコンの方が幅が広く、メジコン錠15mgの場合は、1回に1〜2錠を1日1〜4回使用する用法となっています。
アストミンとメジコンの強さの比較は
アストミンとメジコンの効果の強さを比較した調査の中に、アストミンの方が効果が強いという報告があります4)。
ただし、上記の報告はあくまで一例であり、必ずしも誰にでもアストミンの方が効果が高いということではなく、人によってはメジコンの方が効果を感じるというケースも少なくはないと考えられます。
基本的には医師が最適と考え処方した咳止めをまずは試してみるようにしましょう。
4) 梅田 博道 他:現代医療. 5(3):459, 1973
アストミンとメジコンは基本的に併用はしない
アストミンとメジコンは作用がほぼ同じものであるため、特別なケースを除き併用するケースはあまりありません。
自己判断で併用するようなことは避けましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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