新しいインフルエンザ治療薬であるアビガンの添付文書情報や承認情報、インフルエンザ、エボラ、マダニなどに対する効果、副作用、中国などでの販売状況についても確認していきます。
アビガンの特徴と添付文書情報
アビガンは成分としてファビピラビルを含みインフルエンザの治療薬として開発された薬です。アビガンは、新しいメカニズムを持つインフルエンザ薬であり、鳥インフルエンザウイルスなどに対しても効果が期待できる薬ですが、その反面、妊娠している女性が使用すると奇形児が生まれる可能性が否定できないという安全面の懸念事項があります。そのため、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、国が必要と判断した時に患者さんに投与されるという薬になります。
そのため、平成26年3月24日に厚生労働省より承認されていますが、現在は一般には流通していない薬となります。
アビガンの主な添付文書情報は以下の通りとなります。
【効能又は効果】
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分のものに限る。)
【用法及び用量】
通常、成人にはファビピラビルとして1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与する。総投与期間は5日間とすること。アビガン錠200mg 添付文書
また、アビガンはエボラに対する効果が期待でき、世界中からも注目を浴びている薬です。一例として中国においては、中国大手製薬会社の海正薬業が富士フイルムと特許ライセンス契約を締結しています。
アビガンのインフルエンザなどへの効果
アビガンは前述の通り、新型インフルエンザウイルスにも効果があるとさているインフルエンザ治療薬です。その作用機序はタミフルやイナビルなどの従来のノイラミニダーゼ阻害薬と言われるインフルエンザ治療薬とは異なり、ウイルスが感染した人の細胞内での増殖自体を防ぐ作用があり、ウイルスの放出を阻害するノイラミニダーゼ阻害薬よりも根本からウイルスの被害を防げることが想定され、従来のインフルエンザ治療薬で効果がないケースでも効果が期待できる薬となります。
また、タミフルやイナビルなどのノイラミニダーゼ阻害薬は症状が出てから48時間以内でないと効果が十分に発揮されてないと考えられていますが、アビガンに関してはその作用機序から使用開始が遅れても効果が発揮されることが期待できます。
アビガンはエボラやマダニに対する効果も
アビガンがその名を知られるきっかけになったのが、エボラ出血熱の流行です。アビガンはインフルエンザウイルスに対して効果を示す薬として開発されたものの、エボラウイルスに対しても抗ウイルス効果があることが動物実験で確認され、さらにギニアでのエボラ出血熱に対する臨床試験では、実際に死亡する確率が半分まで減少したという結果も得られています。
エボラ以外ではマダニに対する効果も確認されています。マダニが媒介するウイルス感染症である「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に対して、アビガンが有効であるという動物実験の結果が、厚生労働省の研究班より報告されています。SFTSは日本でも感染者が報告されている致死率の高い感染症であり、今後、人での治療効果も調査していくことが予想されます。
アビガンの副作用
アビガンは安全面に懸念事項があるため、厳しい使用条件があり、その副作用も注意が必要な点となります。
まず、もっとも注意したいのが、催奇形性(奇形児が生まれる)の副作用です。アビガンは動物実験にて初期胚の致死、催奇形性が確認されているために、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこととされています。
また、臨床試験において実際のアビガンの投与で認められている主な副作用には、血中尿酸増加、下痢、好中球減少、AST増加、ALT増加などです。好中球とは白血球の主な顆粒球であり、ASTやALTは肝臓機能に関連する検査値です。
重大な副作用に関してはアビガン錠の副作用としては注意喚起されていないものの、同じインフルエンザ治療薬の重大な副作用としてアナフィラキシーショックや劇症肝炎などが報告されているため、念のため注意が必要とされています。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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