アニュイティについて、薬の特徴、レルベアとの違い、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中・妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。
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アニュイティの特徴
アニュイティはステロイドであるフルチカゾンフランカルボン酸エステルを成分とする吸入用の薬であり、喘息に効果があるICS(Inhaled Corticosteroids:吸入ステロイド薬)です1)。
2017年3月30日に日本において承認され、2017年6月(発売日:6月15日)に発売されてました2)。
アニュイティはエリプタという専用の吸入器具を使用する薬です。エリプタの特徴として、蓋を開けて吸うだけの非常に操作が簡単な点が挙げられます。
また、アニュイティ最大の特徴は1日1回の使用で効果が持続する点です。フルタイド、キュバール、パルミコートなどのこれまでのICSは1日2回使用する必要があったのに対し、アニュイティは1日1回で良いため、使いやすさの点でメリットがあると言えます。
アニュイティの成分であるフルチカゾンフランカルボン酸エステルは同じ喘息の吸入薬であるレルベアにも含まれている成分であり、アニュイティはレルベアのステロイド成分のみを含んでいる薬であり、レルベアよりも症状が軽度な場合などに使用する位置付けとなります。
アニュイティにはステロイドの成分を100μg含んでいるアニュイティ100μgエリプタ30吸入用と、ステロイド成分を200μg含むアニュイティ200μgエリプタ30吸入用があります。
1) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
2) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 インタビューフォーム
アニュイティとレルベアの違い
アニュイティと同じ喘息に対する吸入薬としてレルベアがあります。レルベアもエリプタの陽気で使用する薬であり、アニュイティと非常に似ている薬です。
アニュイティとレルベアの違いはICS(Inhaled Corticosteroids:吸入ステロイド薬)の他にβ2刺激薬の成分(Long-Acting β2 Agonist:LABA)が含まれているかどうかの点となります。アニュイティがICSであるフルチカゾンフランカルボン酸エステルの成分だけなのに対し、レルベアはICSであるフルチカゾンフランカルボン酸エステルに加え、LABAであるビランテロールトリフェニル酢酸塩の成分が含まれています。
したがって、レルベアの方がより多様な作用が期待できる反面、副作用の懸念も増えることなります。症状が軽度であり、ステロイド成分だけの治療で十分と考えられる場合はアニュイティの方がむているケースと言えます。
また、レルベアは100エリプタに限り、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する効能効果があるという点も違いの一つと言えます。
アニュイティの効果
アニュイティの効能効果は「気管支喘息」とされています1)。
なお、アニュイティには原則として既に起きている気管支喘息の発作に対して使用する薬ではなく、毎日規則正しく使用することによっって喘息の症状を抑える薬です。
1) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
アニュイティの作用機序
アニュイティの作用機序はステロイド成分による抗炎症作用です。
喘息は気道に炎症が起きている状態であり、結果として気道が狭くなり呼吸が苦しくなります。
ステロイドはグルココルチコイド受容体に結合し、炎症に関与するケミカルメディエータ、サイトカインなどの産生を遺伝子レベルで調節し、抗炎症作用を発揮する2)、とされており、炎症を抑えることによって喘息を改善します。
2) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 インタビューフォーム
アニュイティの効果時間
アニュイティは1日1回の使用で効果がする薬です。
効果時間の参考になるデータとして、細胞実験レベルではアニュイティの成分の効果は12時間後でも持続していたことが確認されています2)。
また、実際の人に対しては1日1回の使用による臨床試験によって気管支喘息に対する効果が確認されており1)、1回の使用で1日効果がある薬です。
1) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
2) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 インタビューフォーム
アニュイティの実際の効果
アニュイティの実際の喘息患者に対する効果は臨床試験において確認されています。
その一例を挙げると、ビランテロール/フルチカゾンフランカルボン酸エステル(レルベアの成分)で喘息がコントロールされていた患者を対象に、フルチカゾンフランカルボン酸エステルのみ(アニュイティの成分)に切り替えた場合の、投与12週目に喘息コントロール良好の条件を満たした被験者の割合は89.5%とされており、これはフルチカゾンプロピオン酸エステル(フルタイドの成分に該当)を使用した群よりも高い結果であることが確認されています1)。
1) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
アニュイティの使い方
アニュイティは1回に1吸入、1日1回使用するのが一般的な使い方となります。
アニュイティの用法用量の詳細は以下の通りです。
通常、成人にはアニュイティ100μgエリプタ1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100μg)を1日1回吸入投与する。
なお、症状に応じてアニュイティ200μgエリプタ1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして200μg)を1日1回吸入投与する。アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
エリプタの使い方
アニュイティはエリプタという専用の容器を用いて使用します。エリプタは蓋を開けるだけで1回分の薬が充填され、その状態で1回吸うだけで1日分の治療が完了します。1アクションで吸入できるデバイスとして、非常に使い勝手が良い吸入薬です。
アニュイティを使用した後はうがいをする
アニュイティを使用した後はうがいをしましょう。
うがいが必要な理由は副作用の抑止につながるからです。
アニュイティはステロイド成分を含んでおり、ステロイド成分が口の中に残ると、ステロイドの免疫抑制作用によりカンジダなどの感染症にかかりやすくなるリスクがあります。また、発声障害の副作用がおこることもあるため、これらの確率をさげるためにもうがいを徹底するようにしましょう。
アニュイティの副作用
アニュイティの主な副作用は口腔カンジダ症(1.0%)、頭痛(0.7%)、中咽頭カンジダ症(0.7%)、発声障害(0.7%)とされています1)。
アニュイティの副作用で口腔カンジダ症、中咽頭カンジダ症が起きる理由は、ステロイド成分による免疫抑制により感染しやくすなるためと考えられます。これらの副作用を抑止するにはアニュイティ使用後のうがいの徹底が効果的と考えられるため、アニュイティ使用後は毎回必ずうがいをするようにしましょう。
1) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
アニュイティの飲み合わせ
アニュイティは他の薬との飲み合わせに関して、「CYP3A4阻害作用を有する薬剤」との併用に注意が必要とされています1)。
CYP3A4阻害作用を有する薬剤の具体例としてC型肝炎などのウイルス治療薬のリトナビル(製品名:ノービアなど)、抗生物質のエリスロマイシン(製品名:エリスロシンなど)があます。
飲み合わせに注意が必要な理由として、アニュイティの成分は主としてシトクロムP450(CYP)という代謝酵素のうち、CYP3A4で代謝されますが、CYP3A4阻害作用を有する薬剤と併用すると、アニュイティの成分が代謝されにくくなり、結果として効果が強く出る可能性が考えられます。
このようなリスクを事前に把握するためにも医師の診察を受ける際や薬局で薬をもらう際には必ず他に使用している薬について相談するようにしましょう。
1) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
アニュイティの授乳中・妊娠中の使用
アニュイティの授乳中、妊娠中の使用に関して確認していきます。
アニュイティの授乳中の使用
アニュイティは授乳中に使用する場合は基本的に授乳を中止もしくはアニュイティを中止するよう注意喚起されています。
授乳中の婦人に対しては、患者に対する本剤の重要性を考慮した上で授乳の中止あるいは本剤の投与を中止すること。[他の副腎皮質ステロイド剤はヒト乳汁中に移行することが知られている。ラットの授乳期にFFを投与したとき、生後10日の出生児血漿中に薬物が検出された( 6 /54例)。]
アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
ただし、実際にはアニュイティは吸入して使用する薬であり、授乳への影響は限定的とも考えられます。
実際に授乳中にアニュイティを使用するかは、処方医の先生の判断となります。アニュイティに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
アニュイティの妊娠中の使用
アニュイティは妊娠中の使用に関して、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、実際に使用するかは医師の判断となります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[FFの高用量の吸入投与により、ラットの胎児では母動物毒性に関連した胎児の低体重、胸骨の不完全骨化の発現率増加、ウサギでは流産が報告されている。]
アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 添付文書
授乳中の使用と同様に、実際にはアニュイティは吸入して使用する局所作用の薬であるため、通常の使用量であれば胎児への影響は限定的とも考えられます。
実際に妊娠中にアニュイティを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。アニュイティに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
アニュイティの薬価、ジェネリック
アニュイティは現時点では薬価が決まっていません。同じ成分を含んでいるレルベアは100μgの規格で1キットあたり5987.2円、200μgの規格で6692.6円となっており、この薬価に近い薬価が設定されると考えられます。
また、アニュイティは新薬でありジェネリック医薬品はありません。最短でも医薬品の再審査期間が終了するまではジェネリック医薬品は販売されることはなく、アニュイティの再審査期間は、同成分を含むレルベアの再審査残余期間(2017 年 3 月 30 日~2021 年 9 月 19 日)が設定されています2)。
2) アニュイティ100μg/200μgエリプタ30吸入用 インタビューフォーム
アニュイティの市販での購入
アニュイティの成分を含んでいる吸入ステロイド剤は市販薬としては販売されていません。基本的には喘息治療のステロイド剤は市販では買うことができないため、必ず医師の診察を受けて薬をもらうようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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