ザイザルについてその効果、アトピーなどへの使用、眠気などの副作用、ジェネリックの有無、市販での販売の有無、授乳への影響、アルコールの影響、アレグラとの違いなどについて添付文書等から確認していきます。
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ザイザルの効果|アトピーなどへの使用
ザイザルはレボセチリジンを成分とする抗ヒスタミン薬に分類される薬です。
花粉症シーズンに非常によく使われる他、慢性的なアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピーにも使用されることがある薬です。
ザイザルの効能効果の詳細は以下の通りです。
〔成人〕
アレルギー性鼻炎
蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症
〔小児〕
アレルギー性鼻炎
蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒ザイザル錠5mg 添付文書
ザイザルなどの抗ヒスタミン薬が花粉症などのアレルギー性鼻炎やアトピーなどの皮膚炎に効果がある理由は、これらのアレルギーを引き起こす原因物質であるヒスタミンの作用をブロックするためです。
花粉などのアレルギー原因物質が体内に取り込まれると、体の防御反応が働き体内で免疫反応が起こりますが、この反応が過剰になってしまっているのがアレルギーであり、この際にヒスタミンが過剰に放出されることが知られています。
ザイザルなどの抗ヒスタミン薬はこれらのヒスタミンの受容体(ヒスタミンが作用する部分)を阻害することによってヒスタミンの作用を抑制します。これによりアレルギー性の鼻炎などの症状が和らぎます。
ザイザルの疾患に対する効果は
ザイザルの効果は近年使用されている抗ヒスタミン薬の中でも強い部類に入り、アレグラ、クラリチン、アレジオン、エバステル、タリオンなどよりも強いとされており、アレロック、ジルテックなどと同程度の強さと考えられています。
なお、ザイザルはジルテックとほぼ同じ成分であり、ジルテックの成分のうち、より効果が強い部分のみを集めた成分というイメージです。したがって、ザイザルは理論上、ジルテックで使用する量の半分程度でジルテックと同じくらいの効果が得られるとされており、眠気などの副作用も半分程度に抑えられるとされています。
実際の疾患に対する効果は、ザイザルの添付文書に記載されています。
その内容は実際の患者さん636例に対する疾患の改善率であり、花粉症などのアレルギー性鼻炎に対しては 49.6%、蕁麻疹に対しては77.3%、湿疹・皮膚炎に対しては65.9%、痒疹57.7%、皮膚そう痒症 74.5%という結果でした。
なお、上記の改善率は正確にはザイザルではなく、ジルテックの成分であるセチリジンを使用した結果ですが、前述の通り、ザイザルの成分はジルテックの成分とほぼ同じものであり、基本的には同程度の改善率が期待できると言えます。
アトピーに対してザイザルは補助療法
ザイザルはアトピーに対しても使用されることがあり、その位置付けは補助療法となります。
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」ではアトピー性皮膚炎に用いられるおもな抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬としてザイザルが挙げられており、抗ヒスタミン薬の推奨度は1(強い推奨―推奨された治療によって得られる利益が大きく,かつ,治療によって生じうる負担を上回ると考えられる.)とされています1)。
ただし、ザイザルを含めた抗ヒスタミン薬は、すべてのアトピー性皮膚炎患者の痒みに効果があるわけではないことも知られており、場合によっては効果がないケースなどもあります。
1) 日本皮膚科学会ガイドライン アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版
ザイザルの効果が持続する時間と効果が出るまでの時間
ザイザルは1回使用すると持続時間が32時間以上、効果発現時間が1時間後程度、効果が最大になるのが6〜8時間後であることが確認されています。
レボセチリジンのヒスタミン誘発性膨疹および発赤に対する抑制効果は、投与後 1 時間から顕著に認められ、投与後 6~8 時間で抑制率は最大値(膨疹:83.8%、発赤:83.6%)を示し、投与後 32 時間の時点でも抑制効果が認められた。また、レボセチリジンはセチリジンの半量で、セチリジンとほぼ同程度の膨疹および発赤抑制効果が得られた。
ザイザル錠5mg インタビューフォーム
ザイザルの副作用|眠気の出やすさは?
ザイザルは効果が強い割に眠気などの副作用が比較的抑えらえた非常に使い勝手の良い薬です。
前述の通り、ザイザルはジルテックの成分を改良したものであり、ジルテックの効果の強さをそのままに、副作用は出にくくなっている成分が含まれています。
特に眠気に関しては、アレグラやクラリチンといった抗ヒスタミン薬よりは出やすいものの、アレジオンやエバステル、タリオンなどと同等、ジルテックやアレロックよりは眠気が出にくいとされています。
実際の副作用が出る頻度は国内では頻度を算出する臨床試験が行われていませんが、海外データでは傾眠(眠気)が2.6〜6.0%、疲労や倦怠感が0.2〜3.0%、頭痛が0.1〜3.3%などという結果でした2)。
なお、ザイザルなどの抗ヒスタミン薬で眠い状態になっていまう理由は、ヒスタミンが脳の覚醒に影響する作用をもっており、そのヒスタミンの作用を阻害してしまうためとされています。
抗ヒスタミン薬の中でも脳内に移行しにくければ、脳のヒスタミン作用を阻害することが少なくなるため、近年は脳内移行率の低い抗ヒスタミン薬が開発されており、それらがアレグラやクラリチンをはじめとする眠くなりにくい抗ヒスタミン薬です。ただし、これらの薬は副作用も少ない代わりに作用も強いとは言えないとされています。
ザイザルはアレグラやクラリチンよりは眠気が出やすいと考えられているものの、その効果の割には眠気が出にくい部類に入り、効果と副作用のバランスが非常に良い薬とされています。
2) ザイザル錠5mg 添付文書
ザイザルとアレグラの違い
ザイザルとアレグラの大きな違いは作用の強さと眠気の出やすさ、使用する回数です。
一般的にザイザルの方がアレグラよりも効果が強く、眠気も出やすいとされています。また、ザイザルは1日1回、アレグラは1日2回使用する点も異なり、飲み忘れなどを防ぎたい場合はザイザルの方が適していると言えます。
アレグラの最大の特徴は眠くなりにくい、眠気の副作用が出にくいという点にありますが、その分効果も決して強いとは言えず、また1日2回使用しなければならない点も人によってはデメリットとなります。
ザイザルはアレグラよりも多少眠気が出やすいとされているものの、人によっては気にならない程度であり、その長所は効果の強さと1日1回の使用で済む点です。
自分の生活スタイルや薬との相性によって、どちらの薬を使用するか処方医の先生と相談してみるのも良いでしょう。
ザイザルの授乳への影響|授乳中の使用は
ザイザルは授乳中の使用は推奨されていません。その理由はザイザルの成分が母乳中に移行し、授乳により乳児への影響の可能性があるためです。
製薬会社からは以下の注意喚起がされています。
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[セチリジン塩酸塩において、ヒト乳汁中へ移行することが報告されている。]
ザイザル錠5mg 添付文書
しかし、実際にはザイザル錠と同じ成分のザイザルシロップでは6ヵ月以上の乳児でも使用されることがある薬であり、仮に母乳経由で乳児がザイザルの成分を摂取しても大きな影響はないと予想されます。
また、ザイザルとほぼ同じ成分のジルテックに関しては、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)において、小児にも適応があり、授乳婦に使用可能という判断をしています。
小児にも適応があり、授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
ただし、ザイザルは比較的新しい薬であるため、授乳への影響のデータが少ないということも事実としてあります。最終的には処方医の先生の判断となりますが、現時点では安全に使用できる可能性は高いと考えられるものの、情報が少ないため、他の抗ヒスタミン薬を使用するなどの対処が最も安全といえるかもしれません。なお、自己判断でザイザルを授乳中に使うのは避けるようにしましょう。
ザイザルのアルコールの影響
ザイザルの使用中はアルコールは併用注意(一緒に服用する場合に注意が必要)とされています。
その理由はザイザルが中枢神経系影響を与える可能性が指摘されており、アルコールと併用することによって、中枢神経の過剰な抑制が懸念されるためです。
注意喚起のレベルは「併用注意」であるため、ザイザルを使用中に絶対にお酒を飲めないわけではありませんが、眠気などの症状が強く出るような可能性は懸念されます。
ザイザルを使用している期間中は基本的にはアルコールを避けるのが望ましく、長期的に服用しているような場合では、予め処方医の先生とアルコールを飲むタイミングや頻度、量などを相談しておくと良いでしょう。
ザイザルの市販での販売の有無
ザイザルは市販では買うことができない薬であり、市販薬でもザイザルの成分を含む薬は販売されていません。
ただし、ザイザルとほとんど同じ成分である処方薬のジルテックについては、同じ成分を含む市販薬が販売されています。
ジルテックの成分はセチリジンであり、市販薬のコンタック鼻炎ZとストナリニZがこのセチリジンを含んでいます。
ザイザルの成分とジルテックの成分は基本的には同じ作用が期待できるため、ザイザルと同じ効果を市販薬で得たいという場合には、コンタック鼻炎ZもしくはストナリニZで比較的近い効果が得られると考えられます。
ただし、これらはザイザルよりも眠気などの副作用が出やすい可能性が考えられるため、その点は注意が必要です。
また、価格に関しては、コンタック鼻炎Zは10日分のメーカー希望小売価格が税抜きで1791円、ストナリニZも同じく10日分で1619円であり、保険適用となるザイザルなどの処方薬と比較すると割高になるケースが多いと考えられます。
一時的に使用する分には手軽に手に入る市販薬は向いていると言えますが、長期的に使用する場合には医師の適切な診断のもと、処方箋を発行してもらい処方薬を使用するのが合理的と言えるでしょう。
ザイザルのジェネリックの有無
ザイザルは現在、ジェネリック医薬品は販売されていません。
ジェネリック医薬品を販売できる条件として、その薬の特許期間がすぎていることと、再審査期間という薬が市販された後に再度、規制当局から有効性と安全性に問題がないか一定期間調査した結果の審査を受ける過程を経ないと、ジェネリック医薬品は販売されません。
ザイザルに関しては、再審査期間が8年と設定されており、最低でも規制当局に承認された2010年10月27日から8年後の2018年10月26日まではジェネリック医薬品が販売されることはありません。
実際には早くても再審査期間終了から1年程度はジェネリック医薬品は販売されないため、当面はザイザルのジェネリック医薬品は販売されることがなさそうと言えるでしょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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