クラリシッドについてその効果やマイコプラズマ、副鼻腔炎、膀胱炎などへの効果、副作用、使いかと小児への使用、クラリス、クラビットとの違いや併用について添付文書などから解説します。
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クラリシッドの効果|マイコプラズマや副鼻腔炎、膀胱炎への効果は?
クラリシッドはクラリスロマイシンを成分とする抗生物質であり、風邪が悪化した時や中耳炎、副鼻腔炎などで非常によく使われる抗生物質の一つです。抗生物質の中でもマクロライド系というグループに分類される薬です。
クラリシッドの効能効果の詳細は以下の通りです。
1.一般感染症
〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属
〈適応症〉
●表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
●外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
●肛門周囲膿瘍
●咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
●尿道炎
●子宮頸管炎
●感染性腸炎
●中耳炎、副鼻腔炎
●歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
2.非結核性抗酸菌症
〈適応菌種〉
本剤に感性のマイコバクテリウム属
〈適応症〉
マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症
3.ヘリコバクター・ピロリ感染症
〈適応菌種〉
本剤に感性のヘリコバクター・ピロリ
〈適応症〉
胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎クラリシッド錠200mg 添付文書
1.一般感染症
<適応菌種>
本剤に感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,モラクセラ (ブランハメラ)・カタラーリス,インフルエンザ菌,レジオネラ属,百日咳菌,カンピロバクター属,クラミジア属,マイコプラズマ属
<適応症>
○表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症,リンパ管・リンパ節炎,慢性膿皮症
○外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
○咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎,肺炎,肺膿瘍,慢性呼吸器病変の二次感染
○感染性腸炎
○中耳炎,副鼻腔炎
○猩紅熱
○百日咳
2.後天性免疫不全症候群 (エイズ) に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス (MAC) 症クラリシッド・ドライシロップ10%小児用/
クラリシッド錠50mg小児用 添付文書
クラリシッドの疾患に対する効果
クラリシッドを実際の疾患に対して使用した時の効果は添付文書に記載されており、よく使われる疾患に対しては成人では66%〜87%の有効率、小児では86%〜98%の有効率となっています1),2)。
成人における主な疾患に対するクラリシッドの有効率は以下の通りです。
疾患名 | 有効率(%) |
皮膚科領域感染症 | 76.7 |
呼吸器感染症 (咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染) |
81.9 |
尿道炎 | 87.0 |
子宮頸管炎 | 84.6 |
耳鼻科領域感染症 (中耳炎、副鼻腔炎) |
66.8 |
歯科口腔外科領域感染症 (歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎) |
83.0 |
小児における主な疾患に対するクラリシッドの有効率は以下の通りです。
疾患名 | 有効率(%) |
皮膚科領域感染症 | 91.7 |
呼吸器感染症 (咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染) |
93.7 |
感染性腸炎 | 98.9 |
耳鼻科領域感染症 (中耳炎、副鼻腔炎) |
88.5 |
猩紅熱 | 100 |
百日咳 | 86.7 |
1) クラリシッド錠200mg 添付文書
2) クラリシッド・ドライシロップ10%小児用/クラリシッド錠50mg小児用 添付文書
クラリシッドのマイコプラズマに対する効果
マイコプラズマ肺炎は数年に一度の頻度で大流行することのある肺炎で、この肺炎に対して、クラリシッドは効果を示します。
マイコプラズマ肺炎はマコプラズマという細菌が感染することによって引き起こされます。マイコプラズマは通常の細菌と異なる点として、細胞壁を持っていないという特徴があり、この特徴から細菌の細胞壁に対して作用を示すペニシリン系(サワシリン、ワイドシリンなど)やセフェム系(フロモックス、メイアクトなど)の抗生物質では効果を示さないという特徴があります。
クラリシッドは細菌の蛋白合成を阻害することによって細菌の増殖を抑えるという作用機序のため、マイコプラズマにも効果があり、適応菌種として「マイコプラズマ属」が明記されています。
ただし、近年はクラリシッドを含めたマクロライド系の薬に対して耐性をもつマイコプラズマも存在しており、注意が必要となります。
クラリシッドの慢性副鼻腔炎に対する効果
クラリシッドは慢性的な副鼻腔炎に対しても効果を示すとされています。
クラリシッドの成分であるクラリスロマイシンには抗生物質として細菌の増殖を防ぐ作用の他に、人の免疫にも影響があることがいくつかの研究でわかっており、クラリシッドを少量で長期に使用することで、慢性副鼻腔炎が改善するケースがあります。
クラリシッドの膀胱炎に対する効果
クラリシッドは膀胱炎に対しても効果を発揮する場合があります。
前述の通り、クラリッドには尿道炎には適応があるものの、厳密には膀胱炎の適応はありません。
膀胱炎で最も原因菌として挙げられる大腸菌に対しては、あまり効果がないと考えられています。従って、膀胱炎で最初に使われることはあまりありませんが、他の抗菌剤で効果が見られなかった場合などは、大腸菌以外が原因の可能性があり、クラリシッドで効果がある細菌が原因と疑う場合に、医師によってはクラリシッドを処方するケースがあるようです。
クラリシッドの副作用
クラリシッドは小児にも使われる薬ですが、副作用の少ない安全な薬の一つです。
主な副作用は発疹や下痢ですが、これらの副作用についても頻度としては1%にも満たないことが大規模な調査で確認1)されています。
薬の副作用として一般的なめまい、頭痛、眠気といったものについてはクラリシッドでも確認されているますが、これらも頻度は0.1%未満とされており、ほとんど起こらないと考えて大丈夫でしょう。
その他、カンジダ症などの副作用も報告がありますが、これは抗生物質の使用による菌交代現象によることが原因のひとつと考えられ、患者さんの状態(カンジダの再発を繰り返すなど)にも左右されることが予想されますが、こちらも頻度としては非常に稀なケースと考えられます。
なお、成人と小児で副作用が出る頻度はほとんど変わらないと考えらえます。添付文書によると約2万人での調査にて、成人の副作用発現率は0.76%、小児では0.89%という結果が確認1)されており、小児でも安全に使用出来る薬と考えれます。
1) クラリシッド錠200mg 添付文書
クラリシッドの使い方|小児への使用
クラリシッドは錠剤200mgの場合は1回1錠を1日2回が一般的、小児に対して錠剤50mg小児用や10%ドライシロップを使用する場合には体重に応じて用量を決めることになります。
クラリシッド錠200の使い方、用法用量
クラリシッド錠200は咽頭炎や気管支炎、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの一般感染症には1回1錠を1日2回使用することになります。
マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス (MAC) 症を含む非結核性抗酸菌症には一般感染症よりも多い用量の1回2錠、1日2回の用量となります。
ヘリコバクターピロリの除菌に用いる場合は1回1錠を1日2回他の薬と飲み、これを7日間継続します。
1.一般感染症
通常,成人にはクラリスロマイシンとして1日400mg (力価) を2回に分けて経口投与する.
なお,年齢,症状により適宜増減する.
2.非結核性抗酸菌症
通常,成人にはクラリスロマイシンとして1日800mg (力価) を2回に分けて経口投与する.
なお,年齢,症状により適宜増減する.
3.ヘリコバクター・ピロリ感染症
通常,成人にはクラリスロマイシンとして1回200mg (力価),アモキシシリン水和物として1回750mg (力価) 及びプロトンポンプインヒビターの3剤を同時に1日2回,7日間経口投与する.なお,クラリスロマイシンは,必要に応じて適宜増量することができる.ただし,1回400mg (力価) 1日2回を上限とする.クラリシッド錠200mg 添付文書
クラリシッド錠50、クラリシッドドライシロップの小児の使い方、用法用量
小児に対して、クラリシッド錠50mg、クラリシッドドライシロップは体重によって使い方、用量が異なりますが、1日2回〜3回に分けて使用します。
咽頭・喉頭炎、気管支炎、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの一般感染症に対する体重別の用量(1日量)は以下の通りです。これらの1日量を2〜3回に分けて使用します。
体重 | 用量(1日量) | 10%ドライシロップ量 | 50mg錠剤数 |
5kg | 50〜75mg | 0.5〜0.75g | 1〜1.5錠 |
10kg | 100〜150mg | 1〜1.5g | 2〜3錠 |
20kg | 200〜300mg | 2〜3g | 4〜6錠 |
30kg | 300〜450mg | 3〜4.5g | 6〜9錠 |
なお、クラリシッドのドライシロップは混ぜる薬や一緒に飲む飲料によって苦味が出ることがあります。特にムコダインドライシロップと一緒に飲むと苦味が出ることが有名です。また、スポーツドリンクや柑橘系のジュースなど酸性の飲料で苦味が出ると言われています。
クラリシッドドライシロップを使用するときは他の粉薬を飲んでから口を洗って最後に飲む、もしくは先にクラリシッドドライシロップを飲んで同様に口を洗ってからムコダインを飲むなどが良いでしょう。
また、一緒に飲む飲料としては水やお湯以外ではバニラアイスクリームなどが比較的相性が良いとされています。
1.一般感染症
ドライシロップ:用時懸濁し,通常,小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり10~15mg (力価) を2~3回に分けて経口投与する.
レジオネラ肺炎に対しては,1日体重1kg あたり15mg (力価) を2~3回に分けて経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.
錠:通常,小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり10~15mg (力価) を2~3回に分けて経口投与する.
レジオネラ肺炎に対しては,1日体重1kg あたり15mg (力価) を2~3回に分けて経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.
2.後天性免疫不全症候群 (エイズ) に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス (MAC) 症
ドライシロップ:用時懸濁し,通常,小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり15mg (力価) を2回に分けて経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.
錠:通常,小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり15mg (力価) を2回に分けて経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.クラリシッド・ドライシロップ10%小児用/
クラリシッド錠50mg小児用 添付文書
クラリシッドとクラリス、クラビットの違いと併用
クラリシッドと名称や使う場面が似ているクラリスやクラビットの違いや併用の可否についても見ていきましょう。
クラリシッドとクラリスは同じ薬、併用はしない
クラリシッドとクラリスは同じクラリスロマイシンを含む薬であり、薬の作用には違いはありません。
同じ成分を含む薬であるため、併用することもまずありません。クラリシッドとクラリスを併用するのは、クラリシッドを2倍量使っているのと変わりません。
クラリシッドとクラリスの違いを強いてあげると、製造販売している会社が異なる点と薬価が異なる点があります。製造販売会社はクラリシッドがマイランEPD合同会社、クラリスが大正製薬となります。
薬価はクラリシッド錠200が77.4円、クラリス錠20が75.1円といった感じで若干の差があります。
薬価の違い | クラリシッド | クラリス |
錠200mg | 77.4円 | 75.1円 |
錠50mg | 52.3円 | 49.5円 |
10%ドライシロップ | 84.4円 | 81.7円 |
クラリシッドとクラビットは作用機序が違う薬|併用されるケースは稀
クラリシッドとクラビットは細菌による感染症に使われる共通点があるものの、全く別の薬であり、作用機序(作用のメカニズム)に違いがあります。
クラリシッドは細菌の蛋白合成を阻害することによって細菌の増殖を防ぐのに対し、クラビットは細菌のDNAの合成に必要な酵素を阻害し、細菌を死滅させる効果があります。
また、適応菌種(効果がある細菌の種類)にも違いがあり、それぞれ得意とする細菌にもやや違いがあります。
使い方にも違いがあり、クラリシッドは1日2回程度使用するのが一般的ですが、クラビットは効果が血中で最大濃度に依存することがわかっており、副作用が出ない程度の多い用量で1日1回使用するケースが多くなっています。なお、クラリシッドは小児にも使われるのに対し、クラビットは小児には基本的に使われません。
副作用の種類や頻度も異なっており、一概には言えないものの、比較的クラリシッドの方が副作用が出にくいと考えられます。
このように、同じ細菌感染症に使われるクラリシッドとクラビットですが、多くの違いがあることを覚えておきましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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