ピレチノールの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中・妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。
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ピレチノールの特徴
ピレチノールはアセトアミノフェンの成分として含む解熱鎮痛薬の一つであり、頭痛、腰痛、生理痛、風邪の解熱、小児の解熱など様々なケースで使用される粉薬です((ピレチノール 添付文書))。
解熱鎮痛剤の中でも一般的であるロキソニンなどとは異なり、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)には分類されない解熱鎮痛剤です。
ピレチノールを含むアセトアミノフェン製剤の全般の特徴として、小児から安全に使用できる内服薬であり、NSAIDsに分類される解熱鎮痛剤と異なり消化性潰瘍の発生が少ない点が挙げられます((Pocket Drugs 2017, 医学書院))。
ピレチノールの効果
ピレチノールは、頭痛、腰痛、生理痛(月経痛)、風邪での解熱や喉の痛み、子供に対する解熱など様々な症状に対して効果が認められている薬です。
ピレチノールの効能効果の詳細は以下の通りです。
1.頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛
2.下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
3.小児科領域における解熱・鎮痛ピレチノール 添付文書
ピレチノールの作用機序
ピレチノールの作用機序は、解熱作用に関しては、体水分の移動と末梢血管の拡張とが相まって起こる発汗を伴う解熱、鎮痛作用は視床と大脳皮質の痛覚閾値(痛みを感じる閾値)を高めることによる((ピレチノール 添付文書))、と推察されています。
なお、アセトアミノフェン製剤は解熱効果は平熱時にはほとんど体温に影響を及ぼさず、発熱時には投与3時間当たりで、最大効果を発現する点や、抗炎症作用はほとんどないという点も特徴として挙げられます((カロナール錠200/カロナール錠300/カロナール錠500 インタビューフォーム))。
ピレチノールが使われる場面の一つに喉の痛み(咽頭痛)もありますが、喉の痛みは一般的に喉に炎症が起きているケースが多いです。ピレチノールは前述の通り鎮痛作用はあるものの、抗炎症作用はあまりないため、喉の痛みに対して使用する場合はトラネキサム酸(製品名:トランサミンなど)と合わせて使用するとより効果的と考えられます。
ピレチノールの効果時間
ピレチノールの効果時間の参考となるデータとして同じアセトアミノフェンを含む製剤のカロナールの情報が参考となります。
カロナールは服用してから30分程度で効果が現われ始めて、2〜6時間程度持続するとされています。また、使用の間隔は4~6時間以上空けるようにします((カロナール錠200/カロナール錠300/カロナール錠500 添付文書))。
カロナールの効果や効き目の強さ、時間、間隔など
ピレチノールの使い方
ピレチールは年齢や疾患によって使用する量が違ってくる薬です。
ピレチノールの用法用量の詳細は以下の通りです。
(1)頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛
通常、成人にはアセトアミノフェンとして1回300~500mg、1日900~1,500mgを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
(2)下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
通常,成人にはアセトアミノフェンとして,1回300~500mgを頓用する。なお,年齢,症状により適宜増減する。ただし,原則として1日2回までとし,1日最大1500mgを限度とする。また,空腹時の投与は避けさせることが望ましい。
(3)小児科領域における解熱・鎮痛
通常,幼児及び小児にはアセトアミノフェンとして,体重1kgあたり1回10~15mgを経口投与し,投与間隔は4~6時間以上とする。なお,年齢,症状により適宜増減するが,1日総量として60mg/kgを限度とする。ただし,成人の用量を超えない。また,空腹時の投与は避けさせることが望ましいピレチノール 添付文書
ピレチノールはインフルエンザでも使用
ピレチノールはその安全面からインフルエンザの解熱や鎮痛目的でも使用できます。
インフルエンザの時は解熱鎮痛薬の使用に関して、インフルエンザ脳症やライ症候群などに対するリスクが指摘されており、特に小児に関しては慎重に解熱鎮痛剤の種類を選択する必要があります。
特にリスクが指摘されている薬剤はジクロフェナクを含む薬剤(代表製品:ボルタレンなど)やメフェナム酸を含む薬剤(代表製品:ポンタールなど)はインフルエンザ脳症での使用にて死亡率を上昇させたという報告があり((平成11年度厚生科学研究「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」))、小児のインフルエンザは基本的には使用しません。
一方、同じ報告でピレチノールの成分であるアセトアミノフェンに関しては、解熱剤を使用しない場合とリスクがほとんど変わらないため、インフルエンザの時に使用する解熱鎮痛剤はピレチノールなどのアセトアミノフェンが推奨されます。
インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤の使用
全症 例数 |
死亡 者数 |
死亡率 | |
解熱剤を使用せず | 63 | 16 | 25.4 |
アセトアミノフェン (カロナール) |
78 | 23 | 29.5 |
ジクロフェナク | 25 | 13 | 52.0 |
メフェナム酸 | 9 | 6 | 66.7 |
その他の解熱剤 | 22 | 5 | 22.7 |
日本小児科学会も以下のような見解を示しており、インフルエンザの時にピレチノールを使用するのは安全な手段と言えます。
一般的に頻用されているアセトアミノフェンによる本症の致命率の上昇はなく、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンがよいと考える。
平成12年11月12日 日本小児科学会理事会
ピレチノールの副作用
ピレチノールは副作用の心配が少ない薬です。
ロキソニンなどの一般的な解熱鎮痛薬はNSAIDsと言われるグループに分類されており、胃が荒れるなどの副作用が共通して出やすいとされていますが、ピレチノールはNSAIDsには分類されない解熱鎮痛剤であり、胃が荒れる作用も少ないとされています。
報告されている副作用を挙げると、過敏症(アレルギー症状)や、嘔吐、吐き気、食欲の低下などです。また、頻度は低いものの、大量に使用することで肝臓の障害が起きるケースもあるため、長期かつ大量に使用する様な場合には少し注意が必要と言えます。
カロナールの副作用について症状別に解説
ピレチノールの飲み合わせ
ピレチノールには飲み合わせに注意が必要な薬がいくつかあり、薬の他、お酒やアルコールも併用注意として注意喚起されています。
ピレチノールの併用注意の薬剤は以下の通りです((ピレチノール 添付文書))。
成分名等 | 代表的な薬剤等 |
リチウム製剤 (炭酸リチウム) |
リーマス錠 |
チアジド系利尿剤 (ヒドロクロロチアジド等) |
フルイトラン |
アルコール(飲酒) | |
クマリン系抗凝血剤 (ワルファリンカリウム) |
ワーファリン |
カルバマゼピン フェノバルビタール フェニトイン プリミドン リファンピシン イソニアジド |
テグレトール、ヒダントール |
抗生物質 抗菌剤 |
上記のような薬のうち、特に抗生物質や抗菌剤に関しては、実際には併用されるケースも多くあり、必ずしも避ける必要はありません。併用注意とされている理由は過度の体温下降を起こ
す頻度が高くなるという理由であり、念のため体温が下がりすぎないか注意しましょう。近年では風邪などを悪化させた際の上気道炎にて使用される抗生物質・抗菌剤としてサワシリン、メイアクト、フロモックス、セフゾン、クラリス、ジスロマック、クラビット、ジェニナックななどがありますが、医師の適切な診察のもと、ピレチノールと一緒に処方された場合は併用して問題ないと言えるでしょう。
また、その他の併用注意薬に関しても必ずしも避ける必要はありません。医師が承知の上で処方された場合にはあまり心配せず服用しましょう。ただし、自己判断でピレチノールを併用するのは避けましょう。
ピレチノール使用中の飲酒(アルコール)
ピレチノールとお酒(アルコール)は、併用注意として注意喚起されています。
併用注意ですので、一緒に飲むことが禁止されているわけではないものの、飲み合わせには注意が必要となります。
ピレチノールがアルコールと併用注意な理由として、アルコール多量常飲者がアセトアミノフェンを服用したところ肝不全を起こしたとの報告がある、とされています。
絶対に併用できないわけではありませんが、ピレチノール服用期間中は極力お酒は控えるようにしましょう。また、事前に医師に相談し、アルコールを飲む機会があった場合に、飲む量や時間帯など取り決めておくなどの対策も良いでしょう。
ピレチノールの授乳中の使用
ピレチノールは授乳中の使用に関しては特別な注意喚起はされていません((ピレチノール 添付文書))。基本的には授乳中でも使用可能な薬の一つとなります。
専門家による見解の例として、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでも、授乳婦に対して使用可能と考えられるという内容です((愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)))。大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでも、母乳育児に適しているという内容であり、「多くの授乳婦で研究した結果、安全性が示された薬剤 / 母乳への移行がないか少量と考えられ乳児に有害作用を及ぼさない」という見解です((大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)))。
授乳婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
母乳中への移行は極少量で、母乳育児に適している。
母乳とくすりハンドブック
ピレチノールの成分であるアセトアミノフェンは幼い子供でも使用されるような安全な成分です。もし母乳経由で子供が飲んでしまったとしてもあまり影響はないと考えられます。
医師が授乳中を承知の上でピレチノールを処方している場合は、安全面で問題ないと判断しての処方と考えられますので、指示された通りに使用すれば問題ないでしょう。
実際の授乳中の母親にピレチノールの成分であるアセトアミノフェンを使用し、その母乳を飲んだ乳児についても確認した結果が報告されており、母親にアセトアミノフェン650mgを1回投与すると、1~2時間後に最高母乳中濃度が観察され、半減期は1.35~3.5時間、乳児の尿中にはアセトアミノフェンそのものも代謝物も検出されなかった、という内容でした((カロナール錠200/カロナール錠300/カロナール錠500 インタビューフォーム))。
この結果からも子供が実際にピレチノールを使用している母親から授乳しても、子供の尿中には成分は見られず、ほとんど影響がないことが想定されます。
なお、実際に授乳中にピレチノールを使用するかは、処方医の先生の判断となります。ピレチノールに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
ピレチノールの妊娠中の使用
ピレチノールは妊娠中の使用に関して、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、実際に使用するかは医師の判断となります。
1.妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。
2.妊娠後期の婦人への投与により胎児に動脈管収縮を起こすことがある。
3.妊娠後期のラットに投与した実験で,弱い胎仔の動脈管収縮が報告されている。ピレチノール 添付文書
実際にはピレチノールは少量ではあまり影響がないと考えられており、短期的には実際に使用されることもありますので、こちらも処方医の先生が妊娠中であることと妊娠週数を知った上で処方した場合は、指示通り使用して問題ないと言えるでしょう。
専門家による見解の例として、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、通常量の短期間の使用では問題ないという見解です((愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)))。
アセトアミノフェンは、胎盤を通過するが、通常量の短期使用では安全であることが知られている。長期大量服用では、母体の腎障害・肝障害、新生児の腎障害の報告がある。
妊娠・授乳と薬 対応基本手引き
実際に妊娠中にピレチノールを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。ピレチノールに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
ピレチノールの薬価・ジェネリック
ピレチノールの薬価は薬価は、2016年4月の改定時点(2016年4月〜2018年3月まで)で、1gあたり7.2円とされています。
同じ解熱鎮痛剤の代表製品であるロキソニン細粒の薬価が1gあたり29.3円であり、単純にグラムあたりの比較であればピレチノールの方が安い計算となります。
なお、ピレチノールにはジェネリック医薬品に該当する製品はなく、アセトアミノフェン原末の粉薬はいずれもの先発医薬品の扱いとなります。ただし、同じアセトアミノフェンの原末でもアセトアミノフェン「JG」原末とアセトアミノフェン「ヨシダ」では1gあたりの薬価は7.8円であり、やや薬価が異なります。
ピレチノールの市販での購入
ピレチノールの成分は市販薬でも使用されている成分であり、市販で購入することができます。
アセトアミノフェンの成分を含む薬として、解熱鎮痛剤や総合感冒薬に多くの種類があるため、自分の症状や年齢にあった市販薬を選択するようにしましょう。
カロナールを市販で買うには
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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