トニール錠の効果や副作用｜薬の使い方、スピロペントとの違いについても

トニール錠10μgの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中の使用、妊娠中の使用、薬価、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。

トニールの特徴

トニール錠10μgはクレンブテロールを成分とし、気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎などによる呼吸困難症状や、腹圧性尿失禁の泌尿器症状にも効果がある薬です¹⁾。
トニールの特徴として、呼吸器領域と泌尿器領域のいずれに対しても効果がある薬であるという点が挙げられ、β2受容体刺激作用による気道の拡張効果、膀胱平滑筋の拡張効果が期待できる薬です²⁾。
トニールはクレンブテロールの成分を1錠中に10μg含んだ錠剤であるトニール錠10μgのみが販売されています。
1) トニール錠10μg　添付文書
2) スピロペント錠10μg／スピロペント顆粒0.002%　インタビューフォーム

トニールはスピロペントのジェネリック医薬品

トニール錠10μgはジェネリック医薬品に分類される薬であり、同じクレンブテロールの成分を含む先発医薬品としてスピロペントがあります。
トニールとスピロペントの違いは、ジェネリック医薬品と先発医薬品の違いであり、薬の価格である薬価はジェネリック医薬品のトニールの方が低く設定されているため、経済的と言えます。

トニールの効果

トニール錠10μgには喘息などの気道障害における呼吸困難の改善、尿失禁などの泌尿器系の障害を改善する効果があります。
トニールの効能効果の詳細は以下の通りです。

下記疾患の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解
気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎
下記疾患に伴う尿失禁
腹圧性尿失禁

トニール錠10μg　添付文書

トニールの作用機序

トニール錠10μgの作用機序は平滑筋に対するβ2受容体刺激作用です。
トニールは呼吸器領域においては、気管及び気道平滑筋を弛緩させ、気管支痙攣の緩解作用並びに抗喘息作用を発現します。また、泌尿器領域では、膀胱平滑筋を弛緩、外尿道括約筋の収縮を増強することで、畜尿機能を改善するとされています。

トニールの実際の効果

トニール錠10μgの実際の患者さんに対する効果として、同じクレンブテロールの成分を含む先発医薬品のスピロペントの臨床試験結果が参考となります。
スピロペントの呼吸器領域、泌尿器領域における疾患の改善率は以下の通りであり、代表的な疾患別では、気管支喘息に対しては45.9%、腹圧性尿失禁に対しては50.8%の改善率が確認されています³⁾。

対象疾患名	錠と顆粒の計
気管支喘息	45.9%(323/704)
小児喘息	57.8%(96/166)
慢性気管支炎・肺気腫	37.9%(55/145)
急性気管支炎	66.0%(93/141)
腹圧性尿失禁	50.8%(155/305)

3) スピロペント錠10μg／スピロペント顆粒0.002%　添付文書

トニールの使い方

トニール錠10μgは大人の場合、1回に2錠、1日2回使用するのが一般的な使い方となります。
喘息などの呼吸器に対しては朝と寝る前、泌尿器で使用する場合は朝と夕に使用します。
トニールの用法用量の詳細は以下の通りです。

1. 気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎
通常、成人には1回クレンブテロール塩酸塩として20μg（本剤2錠）を1日2回、朝及び就寝前に経口投与する。頓用として、通常、成人には1回クレンブテロール塩酸塩として20μg（本剤2錠）を経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
5歳以上の小児には、1回クレンブテロール塩酸塩として0.3μg／kgを1日2回、朝及び就寝前に経口投与する。頓用として、5歳以上の小児には通常、1回クレンブテロール塩酸塩として0.3μg／kgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
本剤の頓用を反復しなければならない場合には、早急に医師の指示を受けさせること。
2. 腹圧性尿失禁
通常、成人には1回クレンブテロール塩酸塩として20μg（本剤2錠）を1日2回、朝及び夕に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、60μg／日を上限とする。

トニール錠10μg　添付文書

トニールは子供でも使用可能

トニール錠10μgは子供でも使用することができる薬です。前述の通り、5歳以上では呼吸器における使用において、0.3μg/kgという用量が設定されており、比較的安全に使用することができる薬です。なお、4歳以下では医師の判断が必要となります。

トニールの副作用

トニール錠10μgの主な副作用は、振戦（ふるえ）、動悸、腹痛などが認められています。
副作用の頻度は、同じクレンブテロールの成分を含む先発医薬品のスピロペントの試験結果が参考となります。呼吸器に使用した場合が、振戦（2.0%）、動悸（1.2%）であり、泌尿器に使用した場合が、振戦（3.6%）、腹痛（0.9%）となっています³⁾。
重篤な副作用はほとんど認められていないものの、外国において、重篤な血清カリウム値の低下が報告されているため、血液検査の結果も念のため、注意が必要となります。
3) スピロペント錠10μg／スピロペント顆粒0.002%　添付文書

トニールの飲み合わせ

トニール錠10μgは他の薬との飲み合わせに関して、併用に注意が必要な薬がいくつかあります¹⁾。
併用注意が必要なものは以下の通りです。

成分名等	代表的な薬剤
カテコールアミン製剤 アドレナリン イソプロテレノール等
キサンチン誘導体 テオフィリン アミノフィリン水和物 ジプロフィリン等ステロイド剤 ベタメタゾン プレドニゾロン ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム等利尿剤 フロセミド等	テオドール、ラシックス

1) トニール錠10μg　添付文書

トニールの授乳中の使用

トニール錠10μgは授乳中に使用する場合は基本的に授乳を中止するよう注意喚起されています。

本剤投与中は、授乳を避けさせること。［動物実験（ラット）で、乳汁への移行性を有することが報告されている。］

トニール錠10μg　添付文書

上記のような注意喚起がされている理由は、トニールの成分であるクレンブテロールの動物実験において、乳汁への移行性が報告されているためです²⁾。
実際に授乳中にトニールを使用するかは、処方医の先生の判断となります。トニールに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) スピロペント錠10μg／スピロペント顆粒0.002%　インタビューフォーム

トニールの妊娠中の使用

トニール錠10μgは妊娠中の使用に関して、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起されており、実際に使用するかは医師の判断となります。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。［ヒト妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験（ラット）で、妊娠後期に投与すると子宮筋の収縮を抑制して分娩遅延を起こすこと及び胎盤通過性を有することが報告されている。］

トニール錠10μg　添付文書

トニールの成分であるクレンブテロールは動物実験において、胎盤を通過することが確認されており、また妊娠後期には分娩遅延をおこすことが報告されています²⁾。ただし、生殖発生毒性試験では催奇形性は認められなかったという報告もあります²⁾。

実際に妊娠中にトニールを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。トニールに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。

2) スピロペント錠10μg／スピロペント顆粒0.002%　インタビューフォーム

トニールの薬価

トニール錠10μgの2016年4月改定（2018年3月まで）の薬価は1錠あたり5.7円となっています。
トニールはジェネリック医薬品に分類される薬ですが、同じ成分を含む先発医薬品のスピロペント錠は1錠あたり14.4円となっており、トニールの方が経済的と言えます。
スピロペントとトニールの薬局でかかる費用の比較を例示すると、調剤基本料が41点、薬学管理料が50点、自己負担が3割、14日分と仮定して、
スピロペントの場合が、
（60（円；1日の薬剤料）×14（日））（薬剤料）＋ 1500円（調剤技術料＋薬学管理料）= 2340（円）
2340（円）× 0.3（3割負担） ≒ 700（円）
トニールの場合が、
（20（円；1日の薬剤料）×14（日））（薬剤料）＋ 1500円（調剤技術料＋薬学管理料）= 1780（円）
1780（円）× 0.3（3割負担） ≒ 530（円）
となります。上記はあくまで例であり、薬局の状況やお薬手帳の有無、他の薬剤の処方状況などでも変わりますが、トニールの方が経済的である点は変わりないと言えるでしょう。

トニールの市販での購入

トニール錠10μgの成分であるクレンブテロールは市販では販売されていない成分であり、市販薬としては購入することはできません。
必ず医師の診察を受けて処方してもらうようにしましょう。
 
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。