タケルダの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中、妊娠中、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から解説していきます。
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タケルダの特徴
タケルダは抗血小板作用を有するアスピリンと胃酸分泌抑制作用を有するランソプラゾールの二成分が配合されている血栓・塞栓形成の抑制に効果がある薬剤です1)。
タケルダの特徴は、ランソプラゾール腸溶性細粒を含む外層とアスピリンを含む腸溶性の内核の2層で構成される錠剤であり、2つの成分を1日1回1錠で服用できる点にあります2)。
胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある患者さんにおいて、血栓・塞栓形成の抑制でアスピリンを使用する場合には適した薬剤と言えます。
タケルダのアスピリンとランソプラゾールの含有量は1錠中にアスピリン100mg、ランソプラゾール15mgとなっています。
1) タケルダ配合錠 添付文書
2) タケルダ配合錠 インタビューフォーム
タケルダの効果
タケルダは胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある場合において、狭心症、心筋梗塞、虚血性脳血管障害、冠動脈バイパス術あるいは経皮経管冠動脈形成術の術後における血栓・塞栓形成の抑制に効果がある薬です。
タケルダの効能効果の詳細は以下の通りです。
下記疾患又は術後における血栓・塞栓形成の抑制(胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある患者に限る)
・狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)
・冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後タケルダ配合錠 添付文書
タケルダの作用機序
タケルダの作用機序はアスピリンによる血小板凝集抑制作用と、ランソプラゾールによる胃潰瘍、十二使用潰瘍の抑制作用によるものです。
血栓・塞栓が作成される過程の一つに血小板の凝集が関わっています。アスピリンはCOX-1(シクロオキシゲナーゼ1)という酵素を阻害することにより、血小板による血液凝固に関わるTXA2(トロンボキサンA2)の生成を阻害して、抗血小板作用を発揮します。
一方、COX-1の阻害は、消化管粘膜を保護しているPG(プロスタグランジン)の合成も阻害し、消化管粘膜の血流量の低下や胃酸の分泌の増加を招き、結果として胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こすケースがあります。
ランソプラゾールは胃酸を生成するプロトンポンプに作用し、胃酸分泌を抑制することにより、アスピリンによる胃潰瘍・十二指腸潰瘍を抑制することが期待できます。
タケルダはこのように2つの成分により、胃潰瘍・十二指腸潰瘍を抑制しながら血栓・塞栓形成の抑制ができます。
タケルダの臨床成績
タケルダの実際の患者さんに対する有用性は臨床試験において確認されています。
低用量アスピリンの長期投与を必要とし、かつ胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往歴を有する患者を対象とした臨床試験において、ランソプラゾールを投与した場合と使用してない場合では、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の累積発症率が、ランソプラゾール群で9.5%、対照群57.7%であったとされており1)、アスピリンを使用する場合にはランソプラゾールを合わせて使用する方が胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の発症率がかなり抑えられることが確認されています。
1) タケルダ配合錠 添付文書
タケルダの使い方
タケルダは1錠を1日1回使用するのが一般的な使い方となります。従来はアスピリンとランソプラゾールの製剤を2剤使用していたところを、1剤で済むようになるのがタケルダのメリットと言えます。
タケルダの用法用量の詳細は以下の通りです。
通常、成人には1日1回1錠(アスピリン/ランソプラゾールとして100mg/15mg)を経口投与する。
タケルダ配合錠 添付文書
タケルダの手術前の休薬は?
タケルダは抗血小板作用がある薬であり、血液が固まるのを防ぐ反面、出血のリスクを増加させる面もあるため、手術前などの使用は注意が必要です。
タケルダの注意喚起として以下の内容が慎重投与とされており、必要に応じて休薬などの処置をとるケースがあります。
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(10)手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者[アスピリンは手術、心臓カテーテル検査又は抜歯時の失血量を増加させるおそれがある。]タケルダ配合錠 添付文書
なお、実際の休薬期間としては、病院によっては明確に日数が設定されているケースもあり、一例として、鳥取赤十字病院などの病院では手術前7日から休薬に設定されている3)ケースが多いようです。
3) 鳥取赤十字病院 抗凝固薬・抗血小板薬の術前休薬期間(院内統一指針)
タケルダの副作用
タケルダの主な副作用は便秘(3.9%)、下痢(2.5%)など1)の消化器症状とされています。
その他、比較的高い頻度で確認されているのが、蕁麻疹、発疹、 瘙痒などの過敏症、A S T( G O T )上昇、A L T( G P T )上昇、AL-P上昇、γ-GTP上昇などの肝機能検査値異常、好酸球増多、下痢・便秘以外の消化器症状として腹部膨満感、口内炎、頭痛注、めまい、結膜炎といった副作用が0.1〜5%未満の副作用として報告されています1)。
1) タケルダ配合錠 添付文書
タケルダの飲み合わせ
タケルダは飲み合わせに関する注意として、併用できない薬(併用禁忌薬)が2種類、併用に注意が必要な薬(併用注意薬)が多数あり、飲み合わせに注意が必要な薬と言えます。
タケルダと併用できない薬(併用禁忌薬)として、アタザナビル硫酸塩(製品名:レイアタッツ)、リルピビリン塩酸塩(エジュラント)があります。いずれもHIVに対する薬であり、HIVの治療をしている場合にはタケルダの使用に関しては併用薬に注意が必要となります。
タケルダとの飲み合わせに注意が必要な薬(併用注意薬)は以下の通りです。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
テオフィリン | |
タクロリムス水和物 | |
ジゴキシン、 メチルジゴキシン | |
イトラコナゾール、 ゲフィチニブ、 ボスチニブ水和物 | |
メトトレキサート | リウマトレックス |
クマリン系抗凝固剤 ワルファリンカリウム |
ワーファリン |
血液凝固阻止剤 | |
血小板凝集抑制作用を有する薬剤 | プラビックス |
血栓溶解剤 ウロキナーゼ、t-PA製剤等 |
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糖尿病用剤 ヒトインスリン、トルブタミド等 |
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バルプロ酸ナトリウム | |
フェニトイン | |
副腎皮質ホルモン剤 ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン等 |
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リチウム製剤 | |
チアジド系利尿剤 ヒドロクロロチアジド等 ループ利尿剤 フロセミド |
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β遮断剤 プロプラノロール塩酸塩、ピンドロール等 ACE阻害剤 エナラプリルマレイン酸塩等 |
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ニトログリセリン製剤 | |
尿酸排泄促進剤 プロベネシド、ベンズブロマロン |
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非ステロイド性解熱 鎮痛消炎剤 インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム等 |
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イブプロフェン ナプロキセン |
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炭酸脱水酵素阻害剤 アセタゾラミド等 |
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ドネペジル塩酸塩 | |
シクロスポリン | |
ザフィルルカスト | |
プロスタグランジンD2、トロンボキサンA2受容体拮抗剤 ラマトロバン、セラトロダスト |
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選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI) フルボキサミンマレイン酸塩、 塩酸セルトラリン等 |
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アルコール | |
ジアゼパム |
上記の併用注意薬のうち、注意したいのがロキソニンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛剤です。これらの薬は風邪や頭痛などの痛みの際に市販薬としても使用するケースがあるため、市販薬に関しても使用する際にはタケルダを使用している旨を医師や薬剤に相談するようにしましょう。
また、アルコールに関しても消化管出血を増強させる恐れがあるため、注意が必要とされています。アルコールの摂取自体は禁止されてはいないものの、タケルダを服用している場合は極力控えるようにし、アルコールを摂取する量や頻度は予め処方医と相談しておくようにしましょう。
タケルダの授乳中の使用
タケルダは授乳中の使用する場合は基本的に授乳を中止するよう注意喚起されています。
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[アスピリンでは、母乳中へ移行することが報告されている。ランソプラゾールでは、動物試験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。]
タケルダ配合錠 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、アスピリン、ランソプラゾール共に母乳中へのリスクが考えられています。
実際に授乳中にタケルダを使用するかは、処方医の先生の判断となります。タケルダに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
タケルダの妊娠中の使用
タケルダの妊娠中の使用に関しては、出産予定日12週以内の妊婦に限っては禁忌に設定されており、使用することはできません。出産予定日12週以内でない場合は、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起されており、実際に使用するかは医師の判断となります。
1.出産予定日12週以内の妊婦には投与しないこと。[アスピリンでは、妊娠期間の延長、動脈管の早期閉鎖、子宮収縮の抑制、分娩時出血の増加につながるおそれがある。海外での大規模な疫学調査では、妊娠中のアスピリン服用と先天異常児出産の因果関係は否定的であるが、長期連用した場合は、母体の貧血、産前産後の出血、分娩時間の延長、難産、死産、新生児の体重減少・死亡などの危険が高くなるおそれを否定できないとの報告がある。また、ヒトで妊娠末期に投与された患者及びその新生児に出血異常があらわれたとの報告がある。さらに、妊娠末期のラットに投与した試験で、弱い胎児の動脈管収縮が報告されている。]
2.妊婦(ただし、出産予定日12週以内の妊婦は除く)又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。[アスピリンでは、動物試験(ラット)で催奇形作用があらわれたとの報告がある。妊娠期間の延長、過期産につながるおそれがある。ランソプラゾールでは、動物試験(ラット)において胎児血漿中濃度は母動物の血漿中濃度より高いことが認められている。また、ウサギ(経口30mg/kg/日)で胎児死亡率の増加が認められている。]タケルダ配合錠 添付文書
上記のような注意喚起がされている理由として、特にアスピリンに関しては妊娠中における使用のリスクが指摘されており、可能であれば使用しない方が安全と言えるでしょう。
出産予定日12週以内でない場合においても、実際に妊娠中にタケルダを使用するかは、処方医の先生の判断が必要です。タケルダに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
タケルダの薬価、ジェネリック
タケルダの2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価は1錠あたり80.6円となっています。
この薬価はバイアスピリンなどのアスピリン製剤の1錠あたりの薬価5.6円と、ラソプラゾール製剤の先発医薬品であるタケプロン15mgの1錠あたりの薬価80.6円を足した薬価よりも安い薬価になっています。ただし、タケプロンをジェネリック医薬品に変更した場合は、薬価が31.5〜42.1円となるため、タケルダよりも低い薬価となります。
タケルダ自体には現時点ではジェネリック医薬品は販売されていません。
タケルダの市販での購入
タケルダの成分であるアスピリンは市販でも様々な製品として販売されている成分ですが、抗血小板薬としては販売されていません。市販で販売されているアスピリンは解熱鎮痛薬として使用される目的で販売されているため、抗血小板薬目的では使用しないようにしましょう。
もうひとつの成分であるランソプラゾールは市販では販売されていない成分です。
タケルダの代替となるような薬は市販では買うことはできません。必ず医師の適切な診察を受けて処方してもらうようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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