クラリチンの市販薬であるクラリチンEXについて、その特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳・妊娠への影響、処方薬との違い、アレグラとの違いなどについて添付文書等から解説していきます。
Contents
クラリチンEXの特徴|2017年1月に大正製薬が発売
クラリチンEXはロラタジンを成分とした抗ヒスタミン薬の市販薬であり、花粉症などによるアレルギー性鼻炎に効果がある薬です1)。
クラリチンEXは以前から処方薬として販売されていたら成分ですが、2017年1月に大正製薬から市販薬として新たに発売されました(発売日:2017年1月25日)。
クラリチンEXの最大の特徴は花粉症などに使用される抗ヒスタミン薬の中でも非常に眠くなりにくい点であり、「集中力、判断力、作業効率の低下」(いわゆるインペアード・パフォーマンス)を起こしにくいことが挙げられます。また、同様に眠くなりにくいアレルギー薬としてアレグラがありますが、アレグラが1日2回使用なのに対し、クラリチンEX1日1回で効果が持続するという特徴もあります。
1) クラリチンEX 添付文書
クラリチンEXは要指導医薬品|薬剤師のいる店舗のみで購入可能
クラリチンEXはもともとが処方薬であり、市販薬としては新しく販売される成分を含んでいるため、当面は市販薬の中では最も規制が厳しい要指導医薬品として販売されます。
要指導医薬品は薬剤師がいる薬局やドラッグストアでしか販売することができず、通販で買うこともできません。
ただし、クラリチンEXが含まれる抗ヒスタミン薬類は、アレグラやアレジオンにみられるように数年を経過するとより低い区分に規制変更される傾向があるため、数年後にはクラリチンEXも薬剤師がいない店舗や通信販売での購入も可能になる可能性があります。
クラリチンEXの効果
クラリチンEXは花粉症やハウスダストなどによって引き起こされるアレルギー性の鼻炎症状に対して効果があります。
クラリチンEXの効能効果の詳細は以下のとおりです。
花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和:
鼻水、鼻づまり、くしゃみクラリチンEX 添付文書
クラリチンEXの効果の作用機序
クラリチンEXの効果の作用機序は、ロラタジンによる抗ヒスタミン作用によるものです。
花粉やハウスダストなどのアレルギー原因物質が体内に侵入すると、ヒスタミンなどのアレルギーを引き起こす物質が放出され、体内の受容体に作用することで鼻水、鼻づまり、くしゃみなどが引き起こされます。クラリチンEXはヒスタミンの受容体を阻害してアレルギー症状が起こるのを和らげます。
また、クラリチンEXは抗アレルギー作用も併せ持っており、ヒスタミンが放出されること自体も抑制する作用があります2)。
2) 大正製薬 ブランドサイト http://www.taisho.co.jp/claritin/
クラリチンEXの効果時間
クラリチンEXの効果が出るまでの時間は処方薬のクラリチンの情報が参考となります。
処方薬のクラリチンは効果発現時間が2時間後とされています3)。
また、効果の持続時間は皮内反応のデータであるものの、14時間以上の効果持続が確認されています4)。
3) クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg インタビューフォーム
4) クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg 添付文書
クラリチンEXの臨床効果
クラリチンEXの実際の人に対する効果は処方薬のクラリチンの臨床試験結果が参考となります。
処方薬のクラリチンにおける国内臨床試験において、通年性アレルギー性鼻炎に対してロラタジン錠10㎎を1日1 回投与したときの最終全般改善率(中等度改善以上)は52.7%であった4)とされています。
4) クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg 添付文書
クラリチンEXの使い方
クラリチンEXは1日1回で効果が持続する薬です。1回に1錠使用します。なお、1日1回の服用時間はなるべく同じ時間とし、必ず食後に服用しましょう。
クラリチンEXの用法用量の詳細は以下の通りです。
成人(15才以上)、1回1錠、1日1回食後に服用してください。
なお、毎回同じ時間帯に服用してください。クラリチンEX 添付文書
クラリチンEXは食後に服用
クラリチンEXは前述の通り食後に服用します。
食後の理由は処方薬のクラリチンでは食後の臨床試験での効果しか確認していないためとしており、クラリチンEXも同様の理由と考えられます。
ただし、成分のロラタジンの活性代謝物に関しては食事の影響は認められなかったという情報もあり4)、仮に間違えて空腹時に服用しても影響は大きくないことが予想されます。
4) クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg 添付文書
クラリチンEXの副作用
クラリチンEXの副作用に関しては以下のようなものが注意喚起がされています1)。
下記の症状が出た場合は原則中止します。
[関係部位:症状]
皮膚:発疹、かゆみ、じんましん、皮膚が赤くなる、脱毛
呼吸器:のどの痛み、鼻の乾燥感
消化器:吐き気、嘔吐、腹痛、口唇の乾燥、口内炎、胃炎
精神神経系:倦怠感、めまい、頭痛
循環器:動悸、頻脈
その他:眼球の乾燥、耳なり、難聴、ほてり、浮腫(顔・手足)、味覚異常、月経不順、胸部不快感、不正子宮出血、胸痛、尿閉
また、非常に稀と考えられますが、以下のような重大な副作用が起きる可能性もあり、初期症状が見られた場合はすぐに医師の診察を受けましょう。
[症状の名称:症状]
ショック(アナフィラキシー):服用後すぐに、皮膚のかゆみ、じんましん、声のかすれ、くしゃみ、のどのかゆみ、息苦しさ、動悸、意識の混濁などがあらわれる。
てんかん:(てんかん発作既往歴のある人)
筋肉の突っ張りや震え、意識障害、発作前の記憶がない。
けいれん:筋肉の発作的な収縮があらわれる。
肝機能障害:発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振などがあらわれる。
以下のような症状については、持続又は増強がみられた場合には、服用を中止しましょう。
口のかわき、便秘、下痢、眠気
1) クラリチンEX 添付文書
クラリチンEXの眠気の副作用は
クラリチンEXは花粉症などに使用する抗ヒスタミン薬の副作用の定番である眠気に関して、かなり出にくいといいう位置付けの薬です。
実際の眠気がでる頻度は処方薬のクラリチンでは6.4%とされています4)。
クラリチンは抗ヒスタミン薬の中でもアレグラと並んで非常に眠気が出にくいとされており、花粉症シーズンなどで眠気が出てほしくない場合に重用される薬です。
一般的に抗ヒスタミン薬で眠い状態になっていまう理由は、ヒスタミンが脳の覚醒に影響する作用をもっており、そのヒスタミンの作用を阻害してしまうためとされています。
しかし、クラリチンやアレグラは薬の成分が脳内に移行しにくいことが各種実験で確認されています。このため、他の抗ヒスタミン薬では、薬の服用中の車などの危険を伴う機械の操作に対して注意喚起がされていますが、クラリチンやアレグラに関してはこの注意喚起がありません。また、外国でのデータでは、クラリチン使用時の自動車運転能力に及ぼす影響を検討したとき、運転能力に影響を与えなかったという確認もされています4)。
花粉症などによるアレルギー性鼻炎に対して、抗ヒスタミン薬を使用したいときに、日常的に車の運転などをしたり、仕事で機械の操作などをする場合には、眠気がでにくいクラリチンEXがおすすめの薬の一つとなります。
4) クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg 添付文書
クラリチンEXの飲み合わせ
クラリチンEXと飲み合わせが悪い薬は、エリスロマイシン(エリスロシンなど)、シメチジン(タガメットなど)の成分を含んだ薬です。
これらの薬と併用するとクラリチンEXの成分であるロラタジンの濃度が上がり4)、思わぬ副作用などが出る可能性があります。
その他、抗ヒスタミン薬の作用が重複する可能性があるため、他のアレルギー用薬や、風邪薬などとは併用しないよう注意喚起されています。
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用・事故が起こりやすくなります)
2.本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も使用しないでください。
他のアレルギー用薬(皮膚疾患用薬、鼻炎用内服薬を含む)、抗ヒスタミン剤を含有する内服薬等(かぜ薬、鎮咳去痰薬、乗物酔い薬、催眠鎮静薬等)、エリスロマイシン、シメチジンクラリチンEX 添付文書
クラリチンEXの授乳中・妊娠中の使用
クラリチンEXは授乳中・妊娠中について注意喚起されています。それぞれ確認していきましょう。
クラリチンEXを服用中は授乳を避けるのが基本
製薬会社からは授乳中に関してはクラリチンEXを使用しないか、使用する場合は授乳を避けるよう注意喚起されています。
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用・事故が起こりやすくなります)
4.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けてくださいクラリチンEX 添付文書
処方薬のクラリチンの情報を確認すると、クラリチンの成分が人の母乳中に移行することがわかっています4)。ただし、その成分の移行率は活性代謝物を合わせても投与後48時間までで0.03%とされており、移行する量は少量と考えられます。
処方薬のクラリチンに関しては粉薬もあり、子供でも使用されることがある成分であり、万が一間違えて授乳中に使用しても大きな心配はいらないと言えるでしょう。ただし、クラリチンEXに関しては、原則は授乳中止であるため、必ず守るようしましょう。また、間違えて授乳中に使用してしまった場合は、念のため、医師に相談するようにしましょう。
4) クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg 添付文書
クラリチンEXを妊娠中に使用したい場合
クラリチンEXを妊娠中に使用したい場合、製薬会社からは医師や薬剤師に相談するよう注意喚起されています。
相談すること
1.次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談してください
(5)妊婦又は妊娠していると思われる人。クラリチンEX 添付文書
処方薬のクラリチンの情報を確認すると、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、投与を避けることが望ましい、とされています4)。その理由として、動物実験で胎児への移行が認められている点が挙げられています。
専門家による見解でも、クラリチンEXの成分は妊娠中の場合でも使用できるという内容があり、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは妊娠中の危険を示すデータがないため、妊婦でも使用可能という内容です5)。
ヒトでの催奇形性を示唆するデータなし。妊婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
また、その他の情報として、虎の門病院「妊娠と薬」相談外来における相談事例では、妊娠中にロラタジンの使用した事例が収集されていますが、その結果は例数が少ないものの、奇形などのない健常児を出産したとされています6)。
上記のように、妊娠中にクラリチンEXの成分を使用できるという見解もありますが、最中的に妊娠中に実際にクラリチンEXを使用するかは、医師や薬剤師に個々に相談して決めるようにしまし、自己判断での妊娠中の服用は避けるようにしましょう。
4) クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg 添付文書
5) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
6) 株式会社じほう 実践 妊娠と薬 第2版
クラリチンEXの価格
クラリチンEXの希望小売価格は税抜で7錠入り(1週間分)が1,380円、14錠入り(2週間分)が1,980円となっています。
クラリチンEXと処方薬クラリチンとの違い
市販薬のクラリチンEXと処方薬のクラリチンの違いとして、効能効果の違い、小児での使用可否が挙げられます。
含まれる成分は共に1錠あたりロラタジンが10mgであり、理論的には得られる効果は変わりません。
しかし、処方薬の場合は医師の診察を受けた上での処方となるため、使用できる範囲がより広く、アレルギー性鼻炎の他、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎,皮膚そう痒症)に伴うそう痒にも使用されるケースがあります。
また、処方薬のクラリチン錠では7歳以上で用量が設定されており、さらに処方薬の粉薬であるクラリチンドライシロップでは3歳以上の用量が設定されています。市販薬のクラリチンEXでは15歳未満の使用はできないため、この点は大きな違いと言えます。
クラリチンEXの大きなメリットは市販薬であるため、手軽に手に入るという点です。基本は処方薬のクラリチンを使用し、薬が切れて緊急の時などにクラリチンEXを使用するなどの使い分けも選択肢の一つと言えるでしょう。
クラリチンEXとアレグラとの違い
クラリチンEXとアレグラ(市販薬の正式名アレグラFX)との違いは1日の使用回数です。
クラリチンEXは1日1回であるのに対し、アレグラは1日2回使用します。薬の飲み忘れなどのリスクを考えると、1日1回の使用で効果が持続するクラリチンEXの方が使い易いと言えるでしょう。
その他、効果の強さや眠気の出やすさは、クラリチンEXとアレグラでは同程度と考えられています。これらについては個人差によるところも大きいため、実際に使ってみて自分に合う方を選ぶのも良いでしょう。
なお、市販薬同士であるクラリチンEXとアレグラFXの値段を比較すると、アレグラの希望小売価格が税抜きで14錠入り(1週間分)が1,314円、28錠入り(2週間分)1,886円であり、クラリチンの1週間分1,380円、2週間分1,980円よりも若干価格が抑えられています。
また、現時点では規制区分がクラリチンEXが要指導医薬品であり、薬剤師がいない店舗や通販では買うことができないのに対し、アレグラFXは規制変更で第2類医薬品になったため、薬剤師がいない店舗や通販でも購入が可能となっています。この点も両者の違いと言えるでしょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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