ジェニナック錠200について、肺炎、マイコプラズマ、クラミジアなどに対する効果、略語などの特徴、ロキソニンやアルコールなどとの飲み合わせ、副作用、薬価、ジェネリック、市販での購入可否等について添付文書等から解説していきます。
Contents
ジェニナックの特徴
ジェニナック錠200はガレノキサシンの成分を含みキノロン系に分類される抗菌剤です。
肺炎球菌やインフルエンザ菌などによる細菌性肺炎の他、マイコプラズマやクラミジアによる非定型肺炎に対しても効果があり、中耳炎、副鼻腔炎の耳鼻科領域における適応症も持った抗菌薬です1)。
1) ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックの特徴は高い抗菌活性と良好な組織移行性
ジェニナック錠200の特徴として挙げられているのが、高い抗菌活性と良好な組織移行性です。
ジェニナックは従来のフルオロキノロン系抗菌剤の抗菌活性に必須とされてきたキノロン母核にフッ素原子がという特徴からデスフルオロキノロンとも言われており、特徴的な構造を持っています。主に呼吸器領域と耳鼻咽喉科領域の感染症に使用され、これらの領域における主要な起炎菌に対して、優れた抗菌活性を有し、多剤耐性肺炎球菌にも強い抗菌活性を示すと同時に、薬物動態面でも大きいAUC(血中薬物濃度時間曲線下面積)と良好な組織移行性を有するという特徴を持っています2)。
2) ジェニナック錠200mg インタビューフォーム
ジェニナックは1日1回の使用
ジェニナックの特徴として1日1回の使用という点も挙げられます。
ジェニナックが分類されるキノロン系の抗菌剤では、1日に何回も使用するよりも高用量で1日1回使用したほうが有効性が高いことがわかっており、近年は1日1回で使用するキノロン系の薬(クラビット、グレースビット、アベロックスなど)が増えてきています。
ジェニナックの略語は
抗生物質や抗菌剤は一般にその成分に基づいて略語で表示されることがあります。
ジェニナックの略語はガレノキサシン(Garenoxacin)の成分名から取ってGRNXとされています。
ジェニナックの効果
ジェニナック錠200は主に呼吸器領域と耳鼻咽喉科領域の感染症に対して効果を示し、いわゆる喉の風邪である咽頭炎や気管支炎、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎に対する効果を持っています。
また、適応菌種としては、咽頭炎、肺炎、中耳炎などの主要な原因菌となるレンサ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌の他、非定型肺炎の原因となるクラミジアやマイコプラズマに対しても効果がある抗菌剤です。
ジェニナックの効能効果の詳細は以下のとおりです。
〈適応菌種〉
ガレノキサシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌(ペニシリン耐性肺炎球菌を含む)、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
〈適応症〉
咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎
・肺炎球菌には多剤耐性肺炎球菌を含む。ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックの作用機序は細菌のDNA合成阻害
ジェニナックが細菌に作用する機序は、細菌のDNA合成を阻害することによるものです。
ジェニナックは細菌のDAN複製に関与するDNAジャイレースとトポイソメラーゼⅣを阻害し、細菌を死滅させる効果をもたらします。これらの作用は人などの真核細胞由来のトポイソメラーゼⅡに対する阻害作用は弱く、細菌由来のⅡ型トポイソメラーゼに対して選択的に作用するため1)、人に対しては影響が少なく、細菌のみに作用することになります。
1) ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックの効果は85.0%〜100%の有効率
ジェニナック錠200の効果は実際の患者さんに対する臨床試験において確認されています。
実際の疾患に対する有効率は領域によっても異なりますが、その結果は国内の患者さんでは85.0%〜100%の有効率となっています1)。
主な疾患に対する効果として、咽頭・喉頭炎に対しては85.0%の有効率、細菌性肺炎に対しては97.0の有効率、中耳炎に対しては87.2%の有効率、副鼻腔炎に対しては92.0%の有効率が確認されています。
疾患名 | 有効率(%) | |
咽頭・喉頭炎 | 85.0 | |
扁桃炎 | 95.2 | |
急性気管支炎 | 95.5 | |
肺炎 | 細菌性肺炎 | 97.0 |
マイコプラズマ肺炎 | 100 | |
クラミジア肺炎 | 92.3 | |
レジオネラ肺炎 | 症例なし | |
慢性呼吸器病変の二次感染 | 88.0 | |
中耳炎 | 87.2 | |
副鼻腔炎 | 92.0 |
1) ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックはマイコプラズマやクラミジアなどの非定型肺炎にも効果がある
ジェニナック錠200はマイコプラズマやクラミジアが原因となる非定型肺炎に対しても効果がある抗菌剤です。
前述の通り、ジェニナックはマイコプラズマ肺炎やクラミジア肺炎に対しても実際の患者酸での臨床試験で効果が確認されており、例数は少ないものの、マイコプラズマ肺炎に対しては100%(22/22例)、クラミジア肺炎に対しては92.3%(12/13例)の高い有効率が確認されています1)。
なお、クラミジアのうち、尿道炎や子宮頸管炎の主要な原因菌とされるクラミジア・トラコマティスに対しては、ジェニナックに適応はありません。ジェニナックの適応菌種になるのはいわゆるクラミジア肺炎の原因となるクラミジア・ニューモニエです。クラミジア・トラコマティスに対しても試験管レベルでは抗菌活性は認められているものの、現時点では適応外であり、泌尿器などの領域でもジェニナックは適応症を持っていません。従ってクラミジア・トラコマティスが原因の疾患では別の抗生剤、抗菌剤を使用することになります。
1) ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックが風邪に使用される理由は
ジェニナック錠200が風邪に処方される理由は①細菌による疾患を疑う場合、②ウイルス感染の悪化による細菌の二次感染の対処、の2点が主に考えられます。
そもそも風邪は多くのケースでウイルスが原因であり、ジェニナックが効果をもつのは細菌であるため、ウイルスには効果がありません。あくまでジェニナックは細菌に対して処方されるものです。
①は風邪のような症状がでる疾患でも細菌が原因となるケースがあり、レンサ球菌属の細菌は溶連菌とも呼ばれしばしば咽頭炎などを起こしいわゆる喉風邪の症状がでます。肺炎球菌やインフルエンザ菌も完全初期では風邪のような症状を引き起こします。このような細菌の感染が疑われる場合には抗菌剤、抗生物質が効果的と考えられます。
②はウイルス感染の風邪と判断しても悪化により細菌の二次感染が懸念される場合です。風邪による炎症などが原因で二次的に細菌にも感染してしまうケースがあり、これらの可能性が高い場合に予め抗菌剤、抗生剤が投与されることがあります。ただし、こちらは現在は医師が処方を控えるケースも多くなっているようです。
現在は単なる風邪でジェニナックのような抗菌剤が処方されるケースは少なくなっていますが、処方された場合には、医師が細菌感染や風邪の悪化を懸念して処方されたと考えられるため、指示された日数を飲みきるようにしましょう。
ジェニナックの使い方
ジェニナック錠200の使い方は、原則として1日1回、1回に2錠を使用します。
ジェニナックの用法用量の詳細は以下のとおりです。
通常、成人においてガレノキサシンとして、1回400mgを1日1回経口投与する。
ジェニナック錠200mg 添付文書
なお、ジェニナックを含めた抗菌剤、抗生物質は基本的に指示された期間を全て飲みきる必要があります。その理由として、症状が治っても体内に細菌が残っているケースがあり、症状が治まった時点で薬を中止してしまうと残った細菌が増殖し症状が再発・再燃するケースがあるためです。ジェニナックを処方された場合は、特別な指示がある場合や、体に合わないといったケースを除き、処方された日数を飲みきるようにしましょう。
ジェニナックが使用できないケース(禁忌):妊婦、小児など
ジェニナック錠200や他のキノロン系抗菌剤に対して過敏症(アレルギー症状)を経験したことがある場合、妊娠中の場合、15歳未満の小児ではジェニナックは使用できず、禁忌(次の患者には投与しないこと)として注意喚起されています1)。
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
(1) 本剤の成分又は他のキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者
(2) 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
(3) 小児等ジェニナック錠200mg 添付文書
過敏症の経験がある場合に禁忌とされている理由は、ジェニナックもしくは他のキノロン剤の成分で過敏症を起こした患者では、ジェニナックの投与により再び過敏症を起こす危険性があるためとされています2)。
妊娠中が禁忌である理由は臨床試験において安全性が確認されていないためとされています。動物実験では、妊娠ラットにおいて胎児への移行が認められています。しかし、同時にラットにおける生殖発生毒性試験で、受(授)胎能、生殖能力、胎児及び出生児への影響、並びに催奇形性は認められておらず、また、ウサギでは母動物の摂餌量減少、栄養不良に起因すると思われる流産、早産、胎児体重減少等がみられたが、催奇形性は認められなかった、とされています2)。
小児が禁忌とされている理由は、臨床試験において使用経験はなく、安全性が確認されていないためとされています。また、動物実験では幼若イヌで関節軟骨障害が認められたとされています2)。
1) ジェニナック錠200mg 添付文書
2) ジェニナック錠200mg インタビューフォーム
腎機能障害がある場合のジェニナックの使用
ジェニナックを含めたキノロン系の薬は一般的に薬が腎臓から排泄される率が多いことが多く、腎機能が低下していると薬が思うように排泄されずに高い濃度のまま薬の中に残り、効果が通常より強くなったり、副作用が出やすくなる可能性があります。
ジェニナックの場合は用法・用量に関連する使用上の注意として、40kg未満の低体重かつ腎機能の指標であるクレアチニンクリアランス(Ccr)が30mL/min未満の透析を受けていない高度腎機能障害患者において、通常の半量である200mg(1錠)の使用が推奨されています。
〈用法・用量に関連する使用上の注意〉
(2)低体重(40kg未満)の患者でかつ透析等を受けていない高度の腎機能障害(Ccr30mL/min未満)の患者への投与は、低用量(200mg)を用いることが望ましい。ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックの副作用
ジェニナックの主な副作用は下痢3.28%、頭痛1.71%、軟便1.42%等の他、臨床検査値異常として、ALT(GPT)増加(10.40%)、AST(GOT)増加(8.38%)、血中アミラーゼ増加(4.23%)等が報告されています1)。
頻度が高い副作用の一つである下痢や軟便に関しては、腸内細菌の常在菌に対しても抗菌剤が効果を発揮し、腸内の細菌のバランスが崩れてしまうことが原因のひとつです。抗菌剤の使用をやめれば速やかに回復するのが一般的であり、下痢や軟便の副作用がでても基本的には大きな心配はいりませんが、あまりに症状がひどい場合は医師に相談しましょう。
1) ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックの飲み合わせ
ジェニナック錠200には飲み合わせに少し注意が必要な併用注意の薬があります。痛み止めのロキソニンや制酸剤・緩下剤の酸化マグネシウムといった身近な薬も併用注意に該当するため注意が必要です。
ジェニナックと併用注意の薬
併用注意とは併用することが禁止されていないものの、併用する場合には注意が必要とされている薬剤や食品で、ジェニナックには数種類の併用注意薬があります1)。
成分名等 | 代表的な薬剤等 |
・アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛を含有する製剤 制酸剤、ミネラル入りビタミン剤等 |
酸化マグネシウム |
ニトログリセリン、硝酸イソソルビド | アイトロール |
・クラスIA抗不整脈薬 キニジン、プロカインアミド等 ・クラスIII抗不整脈薬 アミオダロン、ソタロール等 |
アンカロン、シベノール |
フェニル酢酸系、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤 | ロキソニン、ボルタレン |
テオフィリン、アミノフィリン水和物 | テオドール、テオロング |
ワルファリン | ワーファリン |
降圧作用を有する薬剤(降圧剤、利尿剤等) | |
血糖降下剤 |
これらの中でも特に身近なものとして、痛み止めや解熱剤として使用されるロキソニンや制酸剤や緩下剤として用いられる酸化マグネシウムなどが挙げられます。
ロキソニンは処方薬の他、近年は市販薬としても販売されており、使用経験のある方も多くいるかと思います。また、ロキソニン以外の痛み止めでもイブプロフェンなどを成分として含む場合は同様に注意が必要であり、イブプロフェンも市販薬の痛み止めによく含まれている成分の一つです。一般の人では併用注意に該当する成分であるかどうかを調べるのは難しい面もあるため、ジェニナックを使用している期間は市販の痛み止めは基本的に使用せず、痛み止めや解熱剤が必要な場合は飲み合わせを確認してもらった上で処方薬の痛み止めをもらうのが安全と言えます。これらの解熱鎮痛剤が併用注意の理由は、痙攣が起きることがあるとされいるためです。
酸化マグネシウムなどの金属イオンが含まれる薬と併用が注意が必要な理由は、同時に使用することで、ジェニナックの成分と金属イオンが結合(キレートを形成)し、吸収が悪くなり、ジェニナックの効果が低下する可能性があるためとされています。対応策として、これらの薬を併用する場合は、ジェニナックを服用後に2時間以上の間隔をあけるなどの方法が添付文書に提示されています。
自分が複数の薬を使用している場合に、薬の飲み合わせについて気をつけるには、クリニックや薬局においてお薬手帳を提示するのが最も有効な手段の一つです。必ず持ち歩くようにし、持っていない場合は薬局にて発行してもらうようにしましょう。
1) ジェニナック錠200mg 添付文書
ジェニナックはアルコールとの飲み合わせは注意喚起されていない
ジェニナック錠200はアルコールとの飲み合わせに関して特別な注意喚起はありません。アルコールとの飲み合わせは大きな問題はないと言えます。
しかし、一般的に薬を使用している期間は、アルコールによる影響が全くないとは言い切れない面もあり、また、ジェニナックを使用する場合は風邪の悪化の他、肺炎や中耳炎などいわゆる急性疾患の症状がある場面が多いため、原疾患自体がアルコールを飲むのに適していない状態であるといえます。
従って、可能な限りジェニナック使用中の期間はアルコールを控えるようにした方が賢明と言えるでしょう。あらかじめお酒の席が予定されているような場合は、処方医の先生に事前に相談し、対応方法などを話し合っておくのも良いでしょう。
ジェニナックの授乳への影響
ジェニナック錠200は授乳中の使用はあまり推奨されておらず、授乳中に使用する場合は授乳を一時的に中止するように注意喚起されています。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
(2)授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。[ヒト母乳中へ移行することが認められている。]ジェニナック錠200mg 添付文書
授乳の中止が注意喚起されている理由の一つは、授乳婦 6 例に実際にジェニナックを使用した結果、乳汁中に分泌されることが確認されたためです2)。
授乳を再開するタイミングの参考になるデータとしては、投与後120時間後には6例のうち1例を除きジェニナックの成分が乳汁中から検出されなくなたっという結果2)もあります。また、120 時間後までに乳汁中へ分泌された量は約 0.435mg(約 0.07%)という結果2)からは、実際に母乳中に移行するジェニナック量のは多くはないことが推察されます。
専門家による見解の一つとして、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、他の小児にも適応がある薬への変更を検討する、という内容です3)。
可能ならばペニシリン系やセフェム系、マクロライド系など小児に適応のある薬剤の使用を検討する。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
実際に授乳中に使用するかを決めるのは処方医の先生になりますが、基本的に授乳中は他の抗生剤・抗菌剤を使用するか、使用する場合は授乳を一時的に注意するのが安全と言えそうです。
2) ジェニナック錠200mg インタビューフォーム
3) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
ジェニナックの薬価とジェネリック
ジェニナック錠200の2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価は224.7円とされています。
仮にジェニナックを1回2錠、1日1回、1週間使用する場合の価格は、
224.7円 × 2錠 × 7日間 = 3145.8円
となり、ここから一定の割合の負担(3割負担等)になります。上記は簡易的な計算であり、実際には薬価は1日ごとに10円単位で五捨五超入の計算になる点や、クリニックの診察料、処方料、薬局の調剤料など他の料金がかかる点にご注意ください。
また、ジェニナックは2017年1月時点でジェネリック医薬品は販売されていません。
ジェニナックの市販での購入
ジェニナックの成分は市販で買うことはできない成分となっています。ジェニナックの成分が含まれている市販薬は販売されていません。
ジェニナックを含め、抗菌剤、抗生剤の成分は、適正使用からの面からも飲み薬においては基本的に市販薬で買うことはできず、今後も販売される可能性はほとんどないと言えます。
抗菌剤・抗生剤を使用する場合は必ず医師の適切な診察の上で処方してもらう必要があり、手元に抗菌剤、抗生剤が残っていたとしても自己判断では使用しないようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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