ニポラジン錠の特徴、効果、使い方、副作用、薬価、ジェネリック、授乳中・妊娠中の使用、アレグラとの違い、小児での使用等について添付文書等から解説していきます。
Contents
ニポラジンの特徴
ニポラジンはメキタジンを成分とする第二世代の抗ヒスタミン薬です。第一世代の抗ヒスタミン薬と比較して眠気の副作用が改善され、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、じん麻疹などに効果がある薬です1)。
ニポラジンには通常の錠剤であるニポラジン錠3mgの他、主に子供に使用される粉薬のニポラジン小児用細粒0.6%、シロップ剤のニポラジン小児用シロップ0.03%があります。
ニポラジンの特徴は比較的強い抗ヒスタミン作用と子供でも使いやすい安全性が挙げられます。また、喘息とその他の症状で使用する量が異なる点もニポラジンの特徴の一つです。
今回は主にニポラジン錠について確認していきます。
1) ニポラジン錠3mg 添付文書
ニポラジンの効果
ニポラジンは気管支喘息、花粉症をはじめとしたアレルギ―性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症の痒みなどに対して効果がある薬です。
ニポラジン錠の効能効果の詳細は以下のとおりです。
気管支喘息
アレルギ―性鼻炎
じん麻疹
皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)ニポラジン錠3mg 添付文書
ニポラジンの作用機序
ニポラジンの主な作用機序は抗ヒスタミン作用です。
抗ヒスタミン薬が花粉症などのアレルギー性鼻炎や蕁麻疹、皮膚炎に効果がある理由は、これらのアレルギーを引き起こす原因物質であるヒスタミンの作用をブロックするためです。
花粉などやアレルギーなどでアレルギー原因物質が体内に取り込まれると、体の防御反応が働き体内で免疫反応が起こりますが、この反応が過剰になってしまっているのがアレルギー状態であり、この際にヒスタミンが過剰に放出されることが知られています。
ニポラジンなどの抗ヒスタミン薬はこれらのヒスタミンの受容体(ヒスタミンが作用する部分)を阻害することによってヒスタミンの作用を抑制します。これによりアレルギー性の鼻炎や蕁麻疹、皮膚炎などの症状が和らぎます。
ニポラジンの効果は39.9〜71.1%
ニポラジンの実際の患者さんに対する効果は、臨床試験によって確認されており、その主な有効率は気管支喘息に対しては39.9%、花粉症などのアレルギー性鼻炎に対しては54.8%、蕁麻疹に対しては69.5%などとされています1)。
疾患名 | 有効率 |
気管支喘息 | 39.9%(81/203) |
アレルギ-性鼻炎 | 54.8%(244/445) |
じん麻疹 | 69.5%(228/328) |
湿疹・皮膚炎群 | 62.6%(122/195) |
皮膚そう痒症 | 71.1%(59/83) |
1) ニポラジン錠3mg 添付文書
ニポラジンの咳への効果
ニポラジンはいわゆる鎮咳薬のような咳中枢に直接働きかけて咳を鎮めるような薬でありませんが、アレルギーの過程を抑制することで、喘息症状のようなアレルギー性の咳を間接的に抑制する効果が期待できます。
ニポラジンの使い方
ニポラジン錠の一般的な使い方は喘息に対しては1回に2錠を1日2回使用、その他のアレルギー性鼻炎や蕁麻疹などには1回1錠を1日回使用します。
ニポラジン錠の効能効果の詳細は以下のとおりです。
[気管支喘息の場合]
通常成人1回2錠(メキタジンとして6mg)を1日2回経口投与する。
なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。
[アレルギ―性鼻炎、じん麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)の場合]
通常成人1回1錠(メキタジンとして3mg)を1日2回経口投与する。
なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。ニポラジン錠3mg 添付文書
ニポラジンの小児での使用
ニポラジンは15歳以上の成人に対して使用することが一般的であり、15歳未満の小児に対しては明確な用法用量は規定されていません。
ただし、実際には小児でも使用されるケースもあり、医師の適切な診察の上で処方された場合は、その通りに使用して問題ないと言えるでしょう。
なお、幼児以下のケースでは同じニポラジンでもニポラジン細粒やニポラジンシロップが使われることが多くなります。
ニポラジンの副作用
ニポラジン錠は同じ成分を含む製品であるゼスラン錠も含め使用した患者さんの調査において、3.33%に副作用が認められたとされています1)。
また、主な副作用としては眠気(2.17%)、けん怠感(0.46%)、口渇(0.44%)などとされています。
ニポラジンを含めた抗ヒスタミン薬で眠気がでる理由として、アレルギーの原因となるヒスタミンは同時に脳の覚醒に影響する作用をもっており、抗ヒスタミン薬はそのヒスタミンの作用を阻害してしまうため、脳の覚醒が阻害され、眠気が出ると考えられています。
ニポラジンは第二世代の抗ヒスタミン薬に分類されるため、ポララミンなどの第一世代の抗ヒスタミン薬よりは眠気が出にくいと考えられていますが、第二世代の中では比較的古い薬であり、近年開発されているアレグラやクラリチンといった抗ヒスタミン薬よりは眠気が出るケースが多いと考えられます。
ニポラジンの授乳中・妊娠中の使用
ニポラジンは授乳中、妊娠中の使用に関してそれぞれ注意喚起されています。
ニポラジンの授乳中の使用
ニポラジンは授乳中に使用する場合は基本的に授乳を中止するよう注意喚起されています。
授乳婦に投与する場合には授乳を中止させること。
[動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。]ニポラジン錠3mg 添付文書
上記内容が注意喚起されている理由は、ラットの動物実験において、ニポラジンの成分がラットの子供に移行したことが認められているためです。ただし、ヒトの乳汁移行に関する報告はないとされており、また、動物実験でもその移行量は0.039%とされています2)。
専門家による見解の中には問題なく使用出来るというものもあり、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、小児にも適応があり、授乳婦にも使用可能という内容です3)。また、大分県「母乳と薬剤」研究会が作成している母乳とくすりハンドブックでも、中枢への移行が少ないため通常量であれば問題ないと内容であり、「限られた授乳婦で研究した結果、乳児へのリスクは最小限と考えられる / 授乳婦で研究されていないが、リスクを証明する根拠が見当たらない」という見解です4)
授乳による乳児への有害事象の報告が見あたらない。
小児にも適応があり、授乳婦に使用可能と考えられる。「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
ヒトでの情報が見当たらない。中枢への移行は少なく通常の治療量であれば問題ない。
母乳とくすりハンドブック
実際に授乳中にニポラジンを使用するかは、処方医の先生の判断となります。ニポラジンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) ニポラジン インタビューフォーム
3) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
4) 大分県「母乳と薬剤」研究会 母乳とくすりハンドブック(2010)
ニポラジンの妊娠中の使用
ニポラジンは妊娠中の使用に関しては、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起さており、使用するかは医師の判断になります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]ニポラジン錠3mg 添付文書
上記のような注意喚起がされている理由は、妊娠中の患者さんに使用した経験が少ないためであり、特別な危険性が確認されているわけではありません。動物実験においても血液-胎盤関門通過性は、投与量の約0.02%で、胎盤関門は殆ど通過しないことが確認されており、生殖発生毒性を確認した試験においても、高用量で体重増加の抑制が認められた以外は異常所見はないとされています2)。
専門家による見解のひとつとして、愛知県薬剤師会が作成している「妊娠・授乳と薬」対応基本手引きでは、催奇形性や毒性を示すデータがなく、妊婦にも使用可能という内容です3)。
催奇形性、胎児毒性を示唆するデータなし。妊婦に使用可能と考えられる。
「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)
実際に妊娠中にニポラジンを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。ニポラジンに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) ニポラジン インタビューフォーム
3) 愛知県薬剤師会 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂 2 版)(2012)
ニポラジンの薬価、ジェネリック
ニポラジン錠3mgの2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価は1錠あたり8.2円となっています。
なお、ニポラジン錠3mgにはジェネリック医薬品が販売されており、ヒスポラン錠、ベナンザール錠、メキタミン錠、メキタジン錠などの製品名で販売されています。薬価は1錠あたり5.6円とされており、ニポラジン錠よりも安価で手にはいるケースがあります。
ニポラジンの市販での購入
ニポラジンの成分であるメキタジンは市販薬としても使用されている成分であり、市販で購入することができます。代表的な市販薬として「ストナリニ・ガード」が挙げられます。
ストナリニ・ガードにはニポラジンと同じ成分であるメキタジンが1錠あたり6mg含まれおり、ニポラジン錠3mgを2錠使用したのと同じ用量になります。
注意点として、メキタジンを含む市販薬には効能効果として気管支喘息や蕁麻疹は含まれません。これらの疾患に対しては、必ず医師の診察を受けた上で処方薬を処方してもらうようにしましょう。
ニポラジンとアレグラの違いや併用
ニポラジンと同じく抗ヒスタミン薬に分類される薬の代表例としてアレグラが挙げられます。
ニポラジンとアレグラ最も大きな違いは眠気の出やすさです。アレグラは抗ヒスタミン薬、こアレルギー薬に分類される薬の中でも最も眠気が出にくい薬の一つです。ニポラジンで眠気が出てしまう場合でもアレグラであればさほど眠くならないというケースもあります。一方で効果の強さにも違いがあり、一般的にはニポラジンの方が効果が強い場合が多いとされています。
その他、効能効果にも違いがあり、ニポラジンには気管支喘息の適応がありますが、アレグラには気管支喘息の適応はありません。また、薬の価格である薬価にも大きな違いがあり、ニポラジン錠3mgの1錠8.2円に対し、アレグラ錠60mgは1錠あたり64.9円となり、ニポラジンの方が経済的と言えます。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
今回紹介した内容はあくまで一例であり、必ずしも当てはまらないケースがあります。予めご承知ください。
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