エリキュースの特徴、効果、使い方、副作用、飲み合わせ、授乳中・妊娠中の使用、薬価、ジェネリック、市販での購入などについて添付文書等から確認していきます。
Contents
エリキュースの特徴
エリキュースはアピキサバンを成分として含む抗凝固薬であり、脳卒中、塞栓症、血栓症の抑制に効果が認められています1)。
エリキュースの特徴として抗凝固薬の中でも第Xa因子阻害剤に分類され、トロンビン産生を抑制することにより直接的な抗血液凝固作用及び間接的な抗血小板作用を示し、抗血栓作用を発揮するとされています2)。
エリキュースには成分を2.5mg含む錠剤のエリキュース錠2.5mg、成分を5mg含む錠剤のエリキュース錠5mgの2種類が販売されています。
1) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
2) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg インタビューフォーム
エリキュースとワーファリン、ヘパリンの違い
エリキュースと同じ抗凝固薬としてワーファリン(ワルファリンカリウム)、ヘパリンなどがあります。エリキュースとこれらの薬の違いはその作用点の違いにあります。
エリキュースは凝固の過程のうち、第Xa因子を阻害するのに対し、ワーファリンはビタミンK作用に拮抗することにより、プロトロンビン、第Ⅶ因子、第Ⅸ因子、第Ⅹ因子を阻害するとされています。また、ヘパリンはトロンビンの作用を抑制するアンチトロンビンⅢの作用を活性化することで抗凝固作用を発揮します。
エリキュースの効果
エリキュースは脳卒中、塞栓症、血栓症の抑制に効果があります。
エリキュースの効能効果の詳細は以下の通りです。
1.非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
2.静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
エリキュースの作用機序
エリキュースの作用機序は第Xa因子の阻害によるトロンビン生成の阻害によるものです。
血液が凝固するには最終的にフィブリンが作られますが、フィブリノーゲンからフィブリンを生成する際に重要な働きをするのがトロンビンです。
エリキュースは凝固の過程において凝固因子の第Xa因子を阻害することにより、プロトロンビンからトロンビンが生成されることを阻害します。これによりエリキュースは直接的な抗血液凝固作用、間接的な抗血小板作用を示します。
エリキュースの使い方
エリキュースは疾患によって使用する量が異なります。
虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制は5mg錠1錠を1日2回、深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症では最初の7日間に5mg錠2錠(10mg)を1日2回、その後1回5mgを1日2回にする使い方が一般的です。
エリキュースの用法用量の詳細は以下の通りです。
1. 非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
通常、成人にはアピキサバンとして1回5mgを1日2回経口投与する。
なお、年齢、体重、腎機能に応じて、アピキサバンとして1回2.5mg1日2回投与へ減量する。
2. 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
通常、成人にはアピキサバンとして1回10mgを1日2回、7日間経口投与した後、1回5mgを1日2回経口投与する。エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
エリキュースの減量するケース
エリキュースは前述の用法用量の通り、年齢や体重、腎機能の応じて減量するケースがあります。
具体的に設定されている内容の一つは、80歳以上の患者に対して、腎機能低下(血清クレアチニン1.5mg/dL以上)及び体重(60kg以下)に応じて減量することが「高齢者への投与」における注意事項として注意喚起されています1)。
1) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
腎機能に応じて禁忌になるケースも
エリキュースは腎機能に応じて減量の他、禁忌(使用できない)になるケースもあります。
「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」で使用する場合はクレアチニンクリアランス(CLcr)が15mL/min未満の腎不全の患者では使用することができません。
「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制」で使用する場合は重度の腎障害(CLcr 30mL/min未満)の患者で使用することができません。
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制〉
腎不全(クレアチニンクリアランス(CLcr)15mL/min未満)の患者[使用経験がない。]
〈静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制〉
重度の腎障害(CLcr 30mL/min未満)の患者[使用経験が少ない。]エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
エリキュースの手術前の休薬は?
エリキュースは抗血液凝固作用がある薬であり、血液が固まるのを防ぐ反面、出血のリスクを増加させる面もあるため、手術前などの使用は注意が必要です。
エリキュースの注意喚起として以下の内容が重要な基本的注意として注意喚起されており、必要に応じて休薬などの処置をとるケースがあります。
重要な基本的注意
待機的手術又は侵襲的手技を実施する患者では、患者の出血リスクと血栓リスクに応じて、本剤の投与を一時中止すること。出血に関して低リスク又は出血が限定的でコントロールが可能な手術・侵襲的手技を実施する場合は、前回投与から少なくとも24時間以上の間隔をあけることが望ましい。また、出血に関して中~高リスク又は臨床的に重要な出血を起こすおそれのある手術・侵襲的手技を実施する場合は、前回投与から少なくとも48時間以上の間隔をあけること。なお、必要に応じて代替療法(ヘパリン等)の使用を考慮すること。緊急を要する手術又は侵襲的手技を実施する患者では、緊急性と出血リスクが増大していることを十分に比較考慮すること。エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
なお、実際の休薬期間としては、病院によっては明確に日数が設定されているケースもあり、一例として、鳥取赤十字病院などの病院では手術2日前から休薬に設定されている3)ケースが多いようです。
3) 鳥取赤十字病院 抗凝固薬・抗血小板薬の術前休薬期間(院内統一指針)
エリキュースの粉砕
エリキュースは粉砕することに関して、粉砕後の各種懸濁液中での安定性、液剤あるいは粉砕懸濁液経鼻胃管投与時の相対バイオアベイラビリティ、粉砕した錠剤の経口投与時の相対バイオアベイラビリティ、を確認したデータがあり、粉砕しても一定の安定性が確認されています2)。
上記の結果から、粉砕することも選択肢の一つとして考えられますが、メーカーは推奨はしておらず、あくまで医師の判断となります。
2) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg インタビューフォーム
エリキュースの副作用
エリキュースの主な副作用は、鼻出血(5.0%)、血尿(2.6%)、挫傷(1.7%)、血腫(1.4%)、貧血(1.1%)等であった1)、とされています。
エリキュースは抗凝固薬であるため、その効果を発揮すると今度は出血傾向になる可能性があり、副作用としても出血関連のものが中心となります。特にエリキュースの飲み始めはこれらの副作用に関していつも以上に注意するようにしましょう。
1) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
エリキュースの飲み合わせ
エリキュースは飲み合わせに関する注意として、併用に注意が必要な薬(併用注意薬)があります1)。
エリキュースとの飲み合わせに注意が必要な薬(併用注意薬)は以下の通りです。
成分名等 | 代表的な薬剤 |
アゾール系抗真菌剤 (フルコナゾールを除く) HIVプロテアーゼ阻害剤 |
|
マクロライド系抗菌薬 フルコナゾール ナプロキセン ジルチアゼム |
クラリス、ヘルベッサー |
リファンピシン フェニトイン カルバマゼピン フェノバルビタール セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 |
アレビアチン、フェノバール |
血小板凝集抑制作用を有する薬剤 | バイアスピリン、プラビックス |
抗凝固剤 血栓溶解剤 非ステロイド性消炎鎮痛剤 |
ワーファリン、ボルタレン |
上記の併用注意薬のうち、注意したいのが抗生剤であるクラリスロマイシンであり、クラリス、クラリシッドなどの製品名でよく使用される薬の一つです。また、解熱鎮痛剤であるボルタレンやロキソニン、イブプロフェンなども注意が必要です。特にロキソプロフェンやイブプロフェンを含む薬は風邪や頭痛などの痛みの際に市販薬としても使用するケースがあるため、市販薬に関しても使用する際にはエリキュースを使用している旨を医師や薬剤に相談するようにしましょう。
なお、同じ抗凝固薬であるワーファリン(ワルファリンカリウム)の効果を弱めてしまうことで有名な納豆ですが、エリキュースとの飲み合わせは問題ありません。特に気にせず納豆を食べても問題ないでしょう。
1) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
エリキュースの授乳中の使用
エリキュースは授乳中に使用する場合は基本的に授乳を中止するよう注意喚起されています。
授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。[動物実験(ラット)で乳汁中への移行が認められている。]
エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、動物実験において、乳汁への移行性が認められているためです2)。
実際に授乳中にエリキュースを使用するかは、処方医の先生の判断となります。エリキュースに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は授乳中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg インタビューフォーム
エリキュースの妊娠中の使用
エリキュースの妊娠中の使用に関しては、治療の有益性が危険性を上回る場合のみ使用と注意喚起されており、実際に使用するかは医師の判断となります。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(マウス、ラット、及びウサギ)で胎児への移行が認められている。]
エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg 添付文書
上記の注意喚起がされている理由として、動物実験において薬剤が胎盤を通過することが確認されている点が挙げられますが、生殖発生毒性試験においては、明確な毒性は確認されていません2)。
実際に妊娠中にエリキュースを使用するかは、授乳中と同様に処方医の先生の判断が必要です。エリキュースに限らず、クリニックや病院で薬を処方してもらう場合は妊娠中である旨を必ず伝えるようにし、自己判断で使用するようなことは避けましょう。
2) エリキュース錠2.5mg/ エリキュース錠5mg インタビューフォーム
エリキュースの薬価、ジェネリック
エリキュースの2016年4月改定(2018年3月まで)の薬価はエリキュース錠2.5mgで1錠あたり149.0円、エリキュース錠5mgで1錠あたり272.8円となっています。
なお、エリキュースには現時点でジェネリック医薬品は販売されていません。通常新薬は承認されてから一定の年数がたった後に再度審査を受ける必要があり、この期間を終えるまではジェネリック医薬品は販売されません。エリキュースの再審査期間は2012年12月25日~2020年12月24日とされており、この期間の間はジェネリック医薬品は販売されません。また、特許期間に該当する場合はその期間もジェネリック医薬品は販売できません。
エリキュースの市販での購入
エリキュースの成分を含む薬は市販では購入することができません。また、エリキュースと比較的成分が近いものや、代替となるような薬も市販では買うことはできません。
エリキュースは使い方を誤ったり自己判断で使用するとリスクがある薬でもあり、必ず医師の適切な診察を受けて処方してもらうようにしましょう。
薬を使用する際には必ず薬の説明書や添付文書を確認し、医師や薬剤師から指示された用法・用量で使用してください。また、違和感や副作用と思われる兆候を感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。
コメント